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少女の生まれた王国に大好きな姉はもういない  作者: 逸斗


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祝福の中

朝起きると、いつもよりも騒がしい気がした。今日はアリスちゃんの誕生日だ。朝からみんなお祝いムードになっている。アリスちゃんはとても明るく、元気で、人気者だった。ここには他にそんな人はいない。だからこそみんなアリスちゃんと話したがるし、優しい彼女はそれを聞いて、楽しく会話してくれる。フローラの暮らす児童養護施設はそんな雰囲気だった。


「誕生日おめでとう!12歳になるんだよね?」


「そうなの!今日の夜はママがパーティーに連れて行ってくれるって!」


私が話しかけると、彼女は嬉しそうにそう話していた。アリスちゃんは私の1個上の女の子で、施設に入って知り合った大切な友達だ。


「いいなー!私も早く12歳になりたい!」


パーティーなんて連れて行ってもらったことのない私は彼女を羨ましく思った。


「12歳になってもいいことなんか1つもないよー?」


彼女は謙遜するようにそう話していた。しかし、私はなぜなのかそんな彼女の言葉に違和感を感じてしまった。表情はいつもの楽しそうなアリスちゃんだ。だが、気のせいなのか、「私みたいにならない方が良い」というように聞こえた。


私が児童養護施設にいるのは、家族がいなくなってしまったからだ。私が4歳のとき、外出していた母と姉は突然の火災に巻き込まれてしまったらしい。そして、そのとき家にいた父は連絡を受け、助けるためにすぐに家を出て、火災現場に向かったそうだ。父は到着してすぐ、火の中へ飛び込んでいったという。しかし、助けに行ったあと、出てくることはなかったのだ。家に1人取り残された私は、家族3人を失い、状況を飲み込めないまま、見知らぬおばさんに連れられ翌日には児童養護施設に入れられた。この、おばさんというのが、今のママだった。

 私が幼かったこともあり、なぜ家族はいなくなったのか知らなかったが、文字がスラスラ読める年齢になったことで、施設内で見つけた新聞で私はその事故の内容を知った。新聞に記された8月1日というのは、姉の12歳の誕生日だった。


 いつものようにその日の夜はやってきた。みんなは祝いながらも、もうすぐママとパーティーに出かけるアリスちゃんを羨ましく思っていた。アリスちゃんの周りは囲まれているせいで、私は一言言うことすらできなかったから、何か一言言いたくてチャンスを伺っていた。

 そんな気持ちになるのはきっと、友達だからという理由以外にも、朝の言葉の奥に感じた違和感のせいだろう。


結局ちゃんと話せる時間もないまま、家を出てしまった。もう違和感は気のせいだろうと自分の中で処理して、私もみんなと同様にアリスちゃんを温かく見送った。


「楽しんできてねー!」


そして、12歳の少女、アシュリー アリスが再び帰ってくることはなかった。

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