初めて話した人
ドアも窓も閉められた小さな部屋で2人は会話をした。
空はまだ明るいのにこの部屋は暗く、どこか寂しい雰囲気だった。
「要するに俺が言いたいのは、小さな子が様々な理由で突然いなくなるという事件がこの国では起こっているから、お前は早く逃げた方がいいんじゃねえのかってことだ」
「いなくなるって…。だってアリスは養子に入ったから失踪したわけでもないし、幸せに暮らしてるんでしょ?」
「あいつが幸せなんてここにいる誰が確認できるんだ。もしかしたらもうこの世にいないかもしれない」
否定したい気持ちでいっぱいだったが、否定するための理由が思い浮かばなかった。ママにどこに引っ越したか聞いたときも細かいことは教えてくれなかった。唯一教えてくれたのは、デファン王国というところにいったらしいということだ。
「でもそれって、たまたま事件が重なってるってこともあるよね?事件なんていつ起こるかわかんないんだから」
「じゃあ聞くがお前の姉は12歳じゃなかったか?事故の日が誕生日だったはずだ」
「え…正解」
正直こんな男に姉の死について話されたことはむかついた。正体もよくわからないこの男はなんなんだとますます思った。でも、興味も湧いてきた。大好きな姉のことを知ってくれている気がした。
「でも…なんで分かったの?」
「小さい子の事件が多いだけなら別に俺もなんとも思わないが、それぞれの子供に共通点がある」
私は思い返した。アリスのこと、姉のこと…そして、この男から言われた言葉を。共通点を探した。
もしかして……
「12歳の誕生日?」
冗談混じりで聞いた言葉は合っているようだった。
そんな理由を納得しきれないフローラを擁護するように彼は話し始めた。
「それが本当かは知らん。ただ、俺が今まで生きてきて居なくなったやつはそうだったし、それがなんのために起こっているのかもわからない。全部偶然だって可能性もある」
どうやら彼も確信があるわけではなく、可能性があるとして、疑いながら話しているのだと理解した。バカにされていないことに安心した。
ただ、その話を聞いてフローラは気になることがあった。彼が15歳ということだ。12歳の誕生日を経験しなければ15歳にはなれないはずだが、そんな疑問は全然簡単なものだった。
「この国に12歳の子供が何人いると思ってんだ。人口9000人、多くはないが少なくもない。その中の12歳全員を失踪させたら怪しいに決まってる」
「これは俺のただの考えだが、頭がいいとか社交的とか、優秀なやつが選ばれるんじゃないか?」
彼の意見に納得した。たしかにアリスは明るく優秀と言われる人間だった。そして…親のいない彼女なら、失踪させることに抗おうとする人間も少ない。
失踪する人間は選ばれる。それが、誰から選ばれてどこへ行ってしまうのかーーー。
男の言いたいことはこれで終わりらしいと思い、特に何の決断もしないまま部屋を出た。最初、出てけ言われたが、そんな気は特に湧いていない。男の話一つでこの国を出ていくほど私はこの国が嫌いではなかった。そもそも話の全てに納得がいっていないし、偶然なのではないかとも思う。
だが、私はこの男の話を聞いて良かったと思う。この男といれば、いないと思っていた姉について詳しく知れる気がした。もう会えないけど、知るだけでいい。それだけでも、私は嬉しい。




