★救難信号と空から来た手
このEpisodeは、【第一章】 継がれる名、選ばれし者のEp17.☆月影の救難信号(前編)とリンクしています。読み比べてもらえると嬉しいです。
今回でエピーソード オブ ルミナスは終わりです……が、酸性雨の惑星と、自然衛星ルナスの間に、もう一つ惑星に行ってる予定で、物語を作ってました。
後日に【断章①】にて、執筆します。
ルミナス号のレーダーに映る、一つの光点。
ゆっくりと――確実に、こちらへ近づいてくる。
ダイヤが息を呑む。
「……来てる」
サイモンが顔をしかめる。
「救難信号、ちゃんと届いたな」
レオはすぐに外を確認する。
「だが、あの高度はまずい」
ダイヤが振り向く。
「え?」
レオは短く言う。
「あれ以上降りれば、“やつ”の縄張りに入る」
サイモンも頷く。
「あのモジャモジャ、確実に落とすな」
ダイヤがすぐに言う。
「無線で知らせる!」
レオが即座に止める。
「……あ、ダメだ」
ダイヤが固まる。
「え?」
レオは淡々と言う。
「救難信号の修理に、無線の部品を使った」
サイモンが顔をしかめる。
「詰んでるじゃねぇか」
一瞬の沈黙。
ダイヤはすぐに走り出した。
サイモンが叫ぶ。
「ちょっ――ダイヤ!?」
ハッチを開ける。
ダイヤは外へ飛び出す。
そして、両手を大きく振りながら、全力で叫んだ。
「近づくな、ここから離れて!」
サイモンが呆れる。
「いや無理だろ、聞こえるわけ――」
そのとき。
光点が、止まった。
三人の動きが止まる。
サイモンがぽつりと呟く。
「……え?」
ダイヤも目を見開く。
「止まった……?」
レオが静かに言う。
「偶然か……?」
ダイヤの視線が、船体に向く。
小さく書かれた文字。
ダイヤが読み取る。
「Luminal……ルミナール」
サイモンが振り向く。
「なんだって?」
ダイヤがはっきり言う。
「リトス銀河の文字……同じ銀河の船だよ」
レオの目が鋭くなる。
「……味方の可能性が高いな」
しばらくして。
その船から、一つの影が切り離される。
背部に推進ユニット。
女性が単独でこちらへ向かってくる。
サイモンが感心したように言う。
「……あの怪物いるのに、よく来るな」
レオはすぐに言う。
「重力と酸素の情報、伝えないと――」
だが手段はない。
女性は迷いなく接近し、そのまま――静かに、降り立った。
レオはすぐに声をかける。
「この自然衛星……空気があるんだ」
女性は軽く頷き、ハッチから入ってきた。
一拍。
女性が言う。
「救助に来た。動ける?」
ダイヤは首を振る。
「この高度まで船を下ろすと……“あれ”が来るの」
その瞬間。
地面が、わずかに揺れた。
サイモンが振り向く。
「……来たぞ」
白い巨体が、ゆっくりと動き出す。
女性はすぐに反応する。
無線で何か話している。
次の瞬間。
上空から、別の影が飛び出した。
バイク型のマシーン。
高速で突っ込み、そのまま怪物の周囲を旋回する。
女性が叫ぶ。
「おい、無茶ーー!」
バイクは怪物の目前をかすめる。
挑発するように。
怪物の視線が、そちらへ向く。
ダイヤが息を呑む。
「……引きつけてる」
その隙に――
もう一機。
別のバイクが一直線に接近する。
男性がルミナス号まで来て、指示を出す。
『助けに来ました、男性二人は私のバイクに乗ってください、三人でも構造上は大丈夫です』
間髪入れず続く。
『ルビィさんは、女性を抱えオービタル・ムーバーで向かってください』
女性が頷いた。
そして、話し始める。
「私たちの仲間が怪物の気をそらしてる間に私たちの船に行きます」
距離を測る。
怪物は、まだバイクに気を取られてる。
女性が叫ぶ。
「今!」
レオが即座に動く。
「サイモン、行くぞ!」
サイモンが飛び乗る。
「おう!」
レオも続く。
後部座席に乗り込み、男性の体に触れる。
(……ん?硬いな)
一瞬の違和感。
だが、考える暇はない。
バイクが急加速する。
背後で、怪物が動く。
しかし――遅い。
女性がダイヤを抱え、別ルートへ離脱する。
交差する軌道。
寸分の狂いもない連携。
サイモンが思わず言う。
「……すげぇな」
レオは短く返す。
「ああ」
そして――
三人は、無事に回収された。
救助に来た船の格納ハッチが閉じる。
静寂。
ダイヤが息を吐く。
「……助かった」
サイモンが笑う。
「ほんとにな」
レオは静かに前を見た。
「……あの連携、ただ者じゃない」
クレーターの影。
壊れたルミナス号。
そして――
白い番人を残して。
彼らは、新たな船へと移った。
格納庫の中には、低く唸る機械音だけが満ちていた。
天井の照明はところどころで強く光り、金属の床を明るくくっきりと照らしている。
女性が振り返り、短く告げる。
「ブリッジはこちらです。ついてきてください」
三人は無言のまま、先導する男女の後ろを歩き出す。
足音だけが、やけに大きく響いた。
やがて重い扉が開き、三人はブリッジへと足を踏み入れる。
少し離れた場所では、助けに来た女性が背を向けたまま無線を続けていた。
抑えた声の奥に、緊張だけがにじんでいる。
その声を背に、三人は小さく息をついた。
サイモンが声を潜めて言う。
「……なぁ」
ダイヤが小さく返す。
「うん?」
サイモンはちらっと外を見てから言う。
「あの三人、動きやばくなかったか?」
レオも小さく頷く。
「ああ。判断も速い」
サイモンが続ける。
「連携も完璧だしな。あの短時間で、あの動きは普通じゃねぇ」
ダイヤは別の方向を見ていた。
船内の装置。
見慣れない機構が、いくつも並んでいる。
ダイヤは小さく呟く。
「……すごい」
二人が視線を向ける。
ダイヤは装置を見たまま言う。
「ルミナス号って、最先端の塊みたいな船でしょ?」
サイモンが頷く。
「まぁな」
ダイヤは少し楽しそうに続ける。
「でも、この船……私の知らないものがいくつもある」
レオが目を細める。
「……技術体系が違うな」
ダイヤは静かに頷く。
「うん。全然違う」
サイモンが苦笑する。
「助けられた側だけど、ちょっと悔しいな」
ダイヤがくすっと笑う。
その空気の中で――
レオが低く言う。
「……もう一つ」
二人が見る。
レオは声をさらに落とす。
「さっきの男だが」
サイモンが首を傾げる。
「バイクの?」
レオは頷く。
「ああ。触れたとき……違和感があった」
ダイヤが真剣な顔になる。
「違和感?」
レオは短く言う。
「人間じゃない」
一瞬、空気が止まる。
サイモンが小さく笑う。
「いやいや、さすがに――」
レオは首を振る。
「筋肉の硬さじゃない。構造が違う」
ダイヤが静かに言う。
「……アンドロイド?」
レオは続ける。
「あるいは、サイボーグ」
サイモンが口を閉じる。
軽い冗談の空気が、消える。
ダイヤはもう一度、船内を見渡す。
「……納得」
小さく呟いた。
「――了解、戻ってきて」
女性の無線が終わる。
しばらくの静寂。
ほんの一瞬、張り詰めた空気が残る。
そのとき――
ハッチが開く。
勢いよく入ってきた影。
息を整えながら、その女性が言った。
「ただいま――って、何この空気」
一瞬の間。
そして――
張り詰めていた緊張が、ふっと緩んだ。
―――――
続きは、【第一章】 継がれる名、選ばれし者のEp18.☆月影の救難信号(後編)へ。
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零章はこれで完結です。




