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☆光が消える前に、掴んだもの

一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。


完結してる作品なので、完結は必ずします。


「」人のセリフ


()心の声


『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。


楽しんでもらえると嬉しいです。

 残された時間は、すでに半分を切っていた。

 誰一人として立ち止まる余裕はない。

 光が揺れ、二人の姿が消える。


 ゲート前に残ったのは、わずかな人数。

 ダイヤ。

 レオ。

 サイモン。

 ルビィ。

 結依。

 アストラ。


 そして、カウントダウンだけが、確実に進んでいた。

《残り時間:四分一〇秒》


 アストラが告げる。

『次、あなたたちです』


  レオが頷く。

「よし、行くぞ」


 サイモンがダイヤの肩に手を置いた。

「時間がねぇ。みんな行こう」


 ――その瞬間。

 ダイヤの視線が、はっと宙を彷徨った。

「……モコル?」

 足元、肩、荷物の影。

 どこにもいない。

「モコルがいない!!」

 声が裏返る。

「さっきまで、近くに――!」


 ダイヤが駆け出そうとした瞬間、ルビィが腕を掴んだ。

「おばあちゃん、待って!」

 

「離して! あの子が――!」

  ダイヤが叫ぶ。


「信じて。私が必ずモコルを連れて行く」

 ルビィが真剣な顔で言う。


 サイモンが即座に動く。

「悪い!」

 ダイヤを担ぎ上げる。

「放してぇぇぇ!! ゴリにぃ〜!!」

 暴れるダイヤの叫びが、施設に響いた。



「ダイヤ、信じろ!」

  レオが大きな声で言う。

「戻る時間はない!」

「清水、行くぞ!」


「はい、行きます」

 結依が言う。

「ルビィ、向こうで待ってるよ」


 レオと結依が霧膜へ向かう。

 霧膜が身体を包み、四人の姿がゲートの中へ消える。


 残ったのは、ルビィとアストラ。

《残り時間:二分二三秒》

「生命反応を探して」

ルビィは息を整えながら、アストラに指示を出す。

「対象指定を、モコル」

 一拍。


『……反応あり。三階区画、小型居住室、奥から二つ目の部屋です』


「行く!」

 ルビィは走る。


『私はここで待機します』

 アストラはゲート前に立ち、霧を浴びる。

『ルビィ船長、必ず戻って』


 ルビィは振り返らなかった。

そして、三階へ。

扉の隙間から、小さな鳴き声。


「……いた!」


 棚の影で、モコルが小さく身を縮めて震えていた。

「ごめんね、遅くなって」

 ルビィはモコルを抱き上げ、走る。三階から二階の踊り場へ。


 アストラが下で叫ぶ。

『残り、五八秒です』


 ルビィは手を伸ばし、モコルを放った。

「アストラ、受け取って!」


 モコルが空中を舞い、アストラがキャッチ。


「先に行って〜!!」

  ルビィが叫ぶ。

「必ず、私も間に合うから」


 アストラは一瞬、逡巡し――

 自身の体とモコルに霧膜の原液をかける。

『了解です、必ずですよ』

 アストラの声がいつもより人間らしかった。


そして、アストラとモコルが、ワープ通路へ走り出す。


《残り時間:二六秒》


 ルビィは二階の踊り場から飛び降りた。

 すごい衝撃……脚に響く。

が、すぐ立ち上がる。


 そして、迷いなく霧膜の原液を頭から被る。 ネバつく感触。


(走れ……!)

 ワープ通路。

 暗闇。


 出口の光。

《残り時間:一〇秒》


 ルビィは走った。


 前方に、アストラとモコルの背中が見える。


 走るルビィの視界に、出口へ到着したアストラの姿が飛び込んできた。

(良かった)


 ホログラムが最後の数字を刻む。

 五……四……三……


 ――そのとき。


 入口側が、白く爆ぜた。

 光が、消える。


 ダイヤは、考えるより先に身体が動いていた。

「ルビィ――!!」

 叫びながら、霧膜に包まれた身体を無理やり前へ投げ出す。


 足元が崩れ、ワープ通路が歪む感覚。

 視界の端で、入口側の光が押し潰されるように消えていく。


 ルビィも必死に手を伸ばす。

 だが――

 距離が、足りない。


「……っ!」


 あと少し。

 あと、ほんの指先分。


(――間に合わない)

 そう思った、その刹那。


 ダイヤの指先に、かすかな温もりが触れた。

「……!!」

 反射的に、指を閉じる。

 掴んだ。


 ルビィの手首を――確かに。


 滑りそうになるのを、全力で握り直す。

「離さない……!!」

 腕に力を込め、全身で引く。


 サイモンとレオが背後からダイヤの身体を押さえる。

「ダイヤ! 引け!」

「今だ!!」


 ワープ通路が悲鳴のように歪む。

 背後の光が、完全に崩れ落ちる。


 その瞬間――

 ダイヤは、ありったけの力で引き寄せた。


 衝撃。


 地面に叩きつけられ、視界が白く弾ける。


 それでも――


 手は、離さなかった。


 次の瞬間。


 静寂。


 全員が、地面に倒れ込んでいた。


 ダイヤは、まだ何かを掴んだまま、荒く息をしている。


「……」


 ゆっくりと視線を落とす。

 そこにあったのは、 確かに、ルビィの手だった。


 その手を――

 掴んだ。


(……間に合った)

 ダイヤは、ぎゅっと握ったまま、 二度と離さないように、その手を胸元へ引き寄せた。


 ルビィはゆっくりと顔を上げてダイヤを見た。

「……セーフ?」

 ルビィが息を整えながら言う。


 ダイヤが、涙と笑顔を混ぜて叫ぶ。

「セーフ!!」


 モコルが「きゅう」と鳴く。

 その場に、安堵の声が広がった。


 フェザーが、静かに説明する。

「ワープ通路は、入口と出口が揃って初めて存在する」


 全員が耳を傾ける。


「どちらかが消えた瞬間、通路は崩壊する。中にいれば……戻れない」

「霧膜が切れれば、人体は耐えられない」


 沈黙。


 ダイヤは、ルビィを強く抱きしめて小さく言った。

「……良かった」


 ルビィは小さく笑った。

「間に合ったから、いいでしょ」


 まだホログラムの残光が揺れている。


 ルビィとダイヤは、その場に崩れるように座り込んでいた。

 ルビィは胸を押さえ、荒い呼吸のまま、空を仰ぐ。

「……アストラ」


 アストラは静かに近づき、ルビィの前に立つ。

 その視線は、いつも通り正確で、冷静で――それでも、ほんのわずかに揺れていた。

『はい。ここにいます』


 ルビィは、震える声で言った。

「……あなたが、待ってくれてなかったら」 言葉が続かない。


 アストラは一瞬、応答を遅らせた。処理時間――〇・八二秒。

『私は、最適解を選択しました』 淡々とした声。

『待機することが、成功確率を最大化すると判断しました』


 ルビィは、ふっと笑って、首を横に振る。

「そういう言い方、今はいらない」


 アストラは小さく首を傾げた。 『訂正します』

 一拍。


『私は、ルビィ船長を信頼しました』

『戻ってくると、判断ではなく――信じました』


 ルビィの目から、ぽろりと涙が落ちる。

「……ずるいよ、そんな言い方」


 アストラは静かに続ける。

『あなたたちは、常に“全員を連れて行く”選択をします』

『それが非効率であっても、危険であっても』


 ルビィは立ち上がり、アストラを強く抱きしめた。少し硬い感触。けれど、冷たくはなかった。

「……ありがとう」

「あなたがいてくれて、本当に良かった」


 アストラは一瞬、腕の位置に迷い―― それから、そっと、ルビィの背に手を置いた。

『こちらこそ』

『あなたを、最後までサポートできました』

 その言葉に、ルビィは小さく息を吐いた。


 恒星は消失した。

 それでも――

 ここにいる全員は、確かに、渡り切った。


 遠くで、もう存在しない惑星の光は、二度と見ることはなかった。


二一億人は、すべてを渡り切ったのだ。



私からのお願い。

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感想などもお待ちしてます。


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