☆告白
◆星間探索士官学校
訓練が終わった後の休憩室。
人の気配がまばらになった頃、ルビィは窓際に立っていた。
宇宙港の光が、遠くに滲んで見える。
「さっきの、すごかったね」
背後から声。
振り向くと、結依がいた。
「やっぱり、ルビィと組むとやりやすい」
「……こっちも」
短く返す。
少しの沈黙。
外の光だけが、静かに揺れている。
結依は、ふっと笑った。
「ねえ、前から思ってたんだけどさ」
ルビィを見る。
「なんでそこまで、ダイヤにこだわるの?」
その言葉に、ルビィの視線がわずかに揺れる。
結依は続ける。
「記録を超えたいっていうより……」
「もっと、別の何かに見える」
図星だった。
ルビィは目を伏せる。
迷いは、一瞬だけ。
「……言ったら、引く?」
「引かない」
間を置かない、即答。
ルビィは小さく息を吐いた。
逃げ場はない。
でも――逃げるつもりもなかった。
そして、ゆっくりと口を開く。
「私の本名、ルビィ・デズモンド」
結依の目が見開かれる。
「え……?」
「デービスは、偽名」
静かに、はっきりと告げる。
空気が、変わる。
「ダイヤ・デズモンド……」
結依が、言葉を探すように繋ぐ。
「伝説の……?」
ルビィは頷いた。
「私の祖母」
結依は言葉を失う。
だが、ルビィは止まらない。
「正確には――少し違うけど」
窓の外へ視線を向ける。
遠くの光が、ぼやける。
「ダイヤさんが残した遺伝子から作られた人工子宮で、私の母が生まれた」
結依は息を呑む。
「母の名前はサファイア。でも、身体が弱くて……宇宙には出られなかった」
静かな声。
「だから私は――」
ルビィはゆっくり振り返る。
真っ直ぐに、結依を見る。
「全部、背負ってる」
強い目だった。
「祖母の遺志も、母の夢も」
ルビィは拳を握る。
指先に力がこもる。
「だから――絶対に超える」
一瞬、言葉が途切れる。
それでも続ける。
「超えて、終わらせるんじゃない」
小さく、だが確かに言った。
「その先に行く」
結依は、しばらく黙っていた。
ルビィを見つめたまま。
やがて――
ふっと笑う。
「なるほどね」
一歩、近づく。
「いいじゃん、それ」
ルビィが少し驚く。
「重いけど、嫌いじゃない」
ニヤリと笑う。
そして――
「でもさ」
拳を突き出す。
「それでも負けないよ、ルビィ」
一瞬の間。
ルビィも、ゆっくりと拳を合わせた。
「……うん」
小さく笑う。
「望むところ」
二人の拳が、軽くぶつかる。
乾いた音。
それは、約束の音だった。
その奥で。
誰にも見えない場所で。
止まっていたはずの“伝説”が――
静かに、再び動き出していた。
読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
ルビィが孫娘。ダイヤが祖母。
第一章の後半から、祖母と孫娘のダブル主演で物語が進んでいきます。




