☆空が、広い
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
◆惑星アークス・ヴェルデ自治共和国・研究エリア
あちこちドアの前には、床に円状のラインが光る霧膜ゾーンが設けられていた。
淡く立ち上る白い霧が、規則正しく静かに流れている。
あちこちドアによる、惑星間移動の初運用である。
レオ、サイモン、フェザーがあちこちドアの前にいる。
その後ろに、三人の大統領が並ぶ。
ゼファー大統領は低く息を吐いた。
「人類初の惑星間ドアか……歴史の一ページだな」
アーク大統領が皮肉混じりに笑う。
「見た目が普通すぎて、ありがたみがないが」
ノヴァ大統領は腕を組み、真顔で言う。
「“普通”のドア……これで惑星間移動とは、たいした科学力だよ、異銀河人は」
そのとき、アストラの右手首のホログラムが起動する。
《あちこちドア、起動状態:正常》
《霧膜制御:通路進入前に自動付着/ドア通過後自動解除》
《警告:走り込み、飛び込みは禁止》
サイモンが即座に反応した。 「走るなって言われると、走りたくなるよな」
レオが即座に同意する。
「なるな」
足元で、モコルが「もきゅ?」と鳴いた。
フェザーが説明する。
「走っても多分問題はない計算だが、霧膜が乱れる可能性は否めない」
「霧膜が乱れれば、生命体はワープ空間での生存は保証できない」
空気が、張りつめる。
その沈黙を、レオが断ち切った。
「最初は、俺が行く」
サイモンが即座に驚いた顔でレオを見る。
「責任者として——」
レオが言いかけたその肩を、フェザーが掴んだ。
「ダメよ」
全員が振り向く。
フェザーはニヤリと笑いながら、珍しく真面目な声を出す。 「今後、ドアを量産する。調整も改良も山ほど出る」
フェザーは指で二人を指す。
「レオとサイモン。君たちは“残る側”だ」
レオは一瞬、言葉に詰まる。
「……しかし」
フェザーが続ける。
「まだドアの量産も終わってない。ここからの量産が全人類の移動の鍵だからな」
サイモンがうんうん頷く。
アストラの右手首ホログラムが淡々と補足する。
《両名は製造・改修工程において不可欠》
《初運用被験者からは除外推奨》
沈黙。
そのとき、ゼファー大統領が一歩前に出た。
「では——我々だな」
アーク大統領が眉を上げる。 「正気か? 大統領自ら?」
ノヴァ大統領は腕を組み、低く笑った。
「民間人に“安全だ”と言う以上、誰かが先に行くべきだ」
ゼファー大統領はドアを見つめ、静かに言う。
「なら、代表が行くのが筋だろう」
「ダイヤさんもゲート初運用の時に、身をもって示した」
サイモンが感心したように言う。
「かっけぇ」
そして、サイモンは急にドアを見て首を傾げる。
「ノックいる?」
レオとフェザーが同時に言う。 「いらない」
サイモンは懲りずにドアの横を探す。
「チャイムとかないの?」
アストラのホログラムが即答した。
《存在しません》
ゼファー大統領は霧膜ゾーンに立つ。霧がゆっくりと身体を包み、淡く光る。
《霧膜付着中》
《残り:七秒》
ゼファー大統領が呟く。
「……思ったより、普通だな」
《五秒》
「これで別の惑星とは」
《三秒》
サイモンが小声で言う。
「大統領、走らないでくださいよ?」
《一秒》
霧が消える。
アストラのホログラムが淡々と追撃する。
《被験者:大統領ゼファー》
《精神状態:平常》
《成功率:九九・八七%》
サイモンが呟く。
「その〇・一三%が気になるな」
ゼファー大統領はドアノブに手をかけ、振り返った。
「では——行ってくる」
カチャリ。
ドアの向こうから、乾いた温かい空気を感じる。
一歩、踏み出す。そして歩みを進めた。
右手首がホログラムを出した。 《ジュラシック側のドアも開放》
◆ジュラシックアース側
――初運用のあちこちドアの出口。
ただの“一般的なドア”だったはずのそれが、今は妙に特別な存在に見えていた。
アストラが告げる。
『ドアを開けてください』
『惑星アークス側から、被験者が来ます』
クラウドが静かにドアを開きながら言う。
「“あちこちドア”での初の通過者だねぇ〜。歴史に名が残るよぉ〜」
そして間もなくして、出口ドアから見えるワープ空間から、人影が見えた。
ルビィが弾む声で言う。
「来ます」
中から現れたのは――
地下都市ルナストンの大統領、ゼファーだった。
一歩、そして二歩目で、しっかりと地面を踏みしめるゼファー。
「……」
ゼファーは周囲を見渡し、短く息を吐いた。
「……成功、だな」
ルビィが思わず声を上げる。 「成功です!」
ダイヤは目を輝かせて、半歩前に出た。
「わあ…本当に、ドアから出てきた!」
結依は静かに頷いた。
「国家元首が最初に通る判断。覚悟がないと出来ませんね」
ゼファーは少しほっとした顔で話した。
「覚悟というより、責任だ。行けると示す必要があった」
そのとき、ゼファーは少し離れた位置にいたカイトと視線が交わる。
カイトが短く言う。
「……お久しぶりです」
ゼファーは、懐かしむように微笑んだ。
「相変わらずだな、カイト。お前のここでの活躍は聞いている、たいしたものだよ」
カイトが答える。
「守るべき場所が、変わっただけです」
ほんの一瞬の沈黙。
ゼファーは、ゆっくりと頷いた。
「いい顔をしている」
その空気を、アストラの無機質な声が切った。
『ワープ通過時間、平均値内。身体異常、検出されません』
クラウドが鼻を鳴らす。
「ふふ……これでまた“理論”が“現実”になったよぉ〜」
ゼファーは、もう一度ドアを振り返った。
「あちこちドア、か」
ダイヤが元気よく答える。
「はい! あっちとこっち、つなぐドアです!」
ルビィが笑う。
「名前、合ってますよね」
ゼファーは小さく笑いながら、前を向いた。
「なら、次は“みんな”の番だな」
そして、空を見上げた。
「……なるほど。空が、広いな」
その一言に、場の空気が一気にほどけた。
ドアは、次の誰かを待つように、静かにそこに立っていた。
◆惑星アークス側
右手首のホログラムに文字が流れた。
《生体反応:確認》
《対象:ゼファー大統領》
《位置:ジュラシックアース》
《状態:良好》
次の瞬間、研究エリアで科学者たちの歓声が響く。
アーク大統領が言う。
「成功だな」
ノヴァ大統領が続ける。
「歴史的だ」
サイモンはガッツポーズを作った。
「よっしゃ!」
また右手首のホログラムが、無機質に締める。
《惑星間量産型あちこちドア》
《初運用:成功》
《霧膜機構:正常》
あちこちドアの初運用も、何事もなく成功した。
ジュラシックアースに無事に到着したゼファーの姿を合図に、人々の最後の躊躇は、胸の奥でほどけるように、静かに消えていく。
ゼファー大統領が告げる。
「あちこちドアは安全だ!皆、私に続け!」
――こうして、固定式ワープゲートと、量産型あちこちドアを併用した惑星間移住計画が、本格的に動き始めた。
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