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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を見つけたら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼11万PV達成】【平日朝6時更新】  作者: 彩川準
【第六章】宝石(星)の系譜/光が追いつく前に

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☆理論より、覚悟

 霧の膜が、ダイヤの足元から静かに立ち上る。

(理論は完璧、何度も確認した)

 ダイヤは一歩、踏み出した。


 城門のようなワープゲートの内側は、音のない闇だった。

 足音も、風も、重力の感覚さえ薄れていく。

(大丈夫かな…)

(大丈夫、大丈夫だよね……)

 自分に言い聞かせるように、ダイヤは拳を軽く握り、一歩一歩進んだ。


(霧膜は安定してる)

(……私は、間違ってない)

 闇の奥――

 あと約四〇メートル先に、淡い光が見えている。

(……もう少し)


 光は次第に輪郭を持ち、城門型の出口と、その向こうに広がる景色が浮かび上がる。


 緑、空、巨大な地形。

 ルビィは思わず一歩前に出た。


 ほのかに暗い闇の向こうに、ダイヤの姿が見えた瞬間だった。

「おばあちゃん!」

 ルビィが叫ぶより先に、体が動いていた。

 ルビィはワープゲートの縁へ身を乗り出し、右手を強く伸ばす。


 ゲートの中から、ダイヤが一歩踏み出す。

 ルビィの手が、空中で止まる。

「こっち!」

 ルビィが叫ぶ。


 ダイヤは一瞬だけ驚いた顔をした。

 そして次の瞬間――

 その手を、しっかりと掴んだ。

 パシッ、と乾いた音が小さく響く。


 ルビィの手に伝わる温かさ。

 確かな重み。

 そして、強く引き寄せる。


 そして――

 ジュラシックアース側に、

 ダイヤは立っていた。


 確かに、ジュラシックアースの大地の上に。


「……成功」

 ダイヤが小さく息を吐く。


 その瞬間――

「成功だァァァァ!!」

 アンデルが大声を張り上げた。


「うるさい!」

 結依が即座に突っ込みながら、しかし笑っている。


 ルビィは、ダイヤに抱きついた。

「……おばあちゃん」

 ルビィが声を震わせる。


「あぁ」

 ダイヤが穏やかに返す。


「ちゃんと来た!ちゃんと来たね!!」

 ルビィが強く抱きしめる。


「あぁ、ちゃんと来た」

 ダイヤが微笑み、ルビィの頭に手を置いた。


「心配してたんだからね!」

 ルビィが言う。


「ふふ、ごめんね」

 ダイヤが静かに答える。


 そこへ、結依が近づく。

「もう、心配かけすぎ。ダイヤさんの顔、ちょっと強張ってたよ?」

 結依が指摘する。


「……バレてた?」

 ダイヤが少しだけ苦笑する。


「バレバレ」

 結依が即答する。


 アストラが無機質に告げる。

『歴史的瞬間です。固定式惑星間ワープ、初の有人成功例』


「人類!いや銀河の勝利だぁ!!」

 アンデルが叫ぶ。


「いや本当にすごい、準備段階から見てきたけど、霧膜の発想がさ――」

 結依が語り始める。


「ダイヤさん、すごいです……!ちゃんと、ちゃんと来ましたね」

 エアロが感動した声で言う。


「理論が、現実に追いつきましたね」

 バルンが静かに呟く。


 その横で、シロッコは感動して泣いている。


 クラウドが大げさに両手を広げる。

「これはもう宴だねぇ〜!」

「化学屋として言わせてもらうけどさぁ〜、“爆発しなかった”ってだけでぇ〜一〇〇点満点だよぉ〜」

「正直さぁ〜、途中で変な音したらどうしようかと思ってたんだよねぇ〜」


「ドキドキしてたよ、二人に増えたらどうしようって…」

 ガストが言う。


 そのとき。

 ガストが、じっとダイヤとルビィを見比べた。

「……あれ?」

 ガストが呟く。


 全員の視線が集まる。

 ガストは顎に手を当て、首を傾げる。

「おかしいな……」


「なにが?」

 結依が警戒する。


「いやさ」

 ガストが真顔のまま言った。

「ワープで“二人に増えた”かと思った」


 一瞬の沈黙。

「誰がだ!!」

 結依のツッコミが炸裂する。


 ルビィがきょとんとしてダイヤを見る。

「似てるかな?」


 ダイヤは一拍置いて、ふっと笑った。

「そうだね。否定はしない」


「ほら、雰囲気とか、立ち方とか」

 ガストが続ける。


「考えてる顔とかそっくりだな」

 グリムが淡々と追撃する。


「目も似てますよ」

 エアロが小さく笑う。


「待って待ってぇ〜」

 クラウドが割り込む。

「つまりさぁ〜、天才がワープしたら天才が増えたってことぉ〜?」


「やめろ!」

 カイトが即座に止める。


「……血縁、恐るべしだな」

 シロッコが苦笑する。


 ダイヤは、ルビィの横で笑顔で言った。

「私は、次の世代にちゃんと引き継いだだけだよ」


 ルビィは少し照れて、でも胸を張る。


「ルビィ、そこノーコメントなの?それが一番怖いわ」

 結依が呟く。

 笑いが、自然と広がる。


 緊張がほどけ、成功が“実感”に変わっていく。


 ダイヤは、皆を見回したあと、空を仰いだ。

(成功した)

(怖かった)

(でも……)


 ダイヤは、もう一度だけゲートの方を振り返り、静かに呟いた。

「ちゃんと、来れた」


◆惑星アークス側

 こちらでも、レオとサイモンの声が遅れて響いていた。

「……見た感じ、成功か?」

「あれは成功だろ」


 アストラの右手首に展開したホログラムが、文字点灯する。

《生体反応:確認》

《対象:ダイヤ・デズモンド》

《位置:ジュラシックアース》

《状態:良好》


 次の瞬間。


「「「うおおおおお!!!」」」

 こちらも歓声が一斉に上がった。


 フェザーは、口元だけで微笑んだ。…してやったり、という顔で。


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