☆手を振る距離
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
◆惑星アークス側/ヴェルデ自治共和国・ワープゲート入口前
同じく城門型の巨大ゲート。入口の前には、淡く光る霧が漂っている。
甲虫由来の液体から精製された、ワープ通路専用・保護膜霧。人の輪郭に沿ってまとわりつき、十秒ほどで不可視の層を作る。
フェザーは腕を組み、いつもの調子で言った。
「はいはい、霧は安定。分子結合率も問題なし。途中で二人に分裂する確率?そんなの限りなくゼロに近い」
ダイヤが思わず漏らす。
「“近い”って言葉を使う時点で不安しかない……」
レオが端末を確認し、淡々と告げた。
「物質でのテストはすべて成功している。質量変化、サイズ誤差、同期ズレ――すべて許容範囲内」
「でも、過去には――」
ダイヤが言いかけて、言葉を飲み込む。
サイモンが気楽に続ける。
「色が変わったり?」
フェザーが楽しそうに笑う。
「大きさ変わったり?」
ダイヤはその霧を見つめたまま言う。
「……イジるね〜。二人とも」
少しの間。
「よし、理論上は問題はないよね」
フェザーが軽く言う。
「問題ないどころか、完璧よ。失敗例?あれは“面白い副産物”」
ダイヤが問いかける。
「もし私が二つに分かれたら?」
サイモンがニコニコしながら言う。
「大丈夫大丈夫。もし何かあっても、フェザーが責任取るってさ」
フェザーが即答する。
「取らないわよ?」
ダイヤが小さく息を吐く。
「ですよね……」
ダイヤは苦笑いしつつ前を向く。
アストラの右手首がホログラムで文字を流した。
《両惑星間、同期率九九・九八%。理論上、問題は発生しない》
フェザーが胸を張る。
「ほら、アンドロイドのお墨付きよ」
ダイヤは深く息を吸った。
「……理論は信じてる。私たちの計算も、装置も」
「……開けましょう」
レオとサイモンが同時に、扉制御に手を伸ばした。
そして、ゲートが開放された。
重厚な音とともに、アークス側の扉が開く。
◆ジュラシックアース側
アストラが告げる。
『出口ゲート、開放します。アンデルさん、ガストさん』
アンデルが叫ぶ。
「了解だァァ!!」
ガストが続ける。
「はいはい、壊さないようにね〜」
二人が扉制御レバーを引く。
――ギギ……という低音。
ゲートの内側は、完全な闇。
誰もが息を止めた。
扉の奥、闇の先、およそ一〇〇メートル向こうに、一筋の光が灯る。
ルビィが息を呑む。
「……!」
光は次第に広がり、その向こうに、惑星アークスのゲートと人影が浮かび上がった。
声は聞こえない。
だが、その姿ははっきりと見える。
結依が目を凝らしたまま呟く。
「見えてる。ほんとに……」
クラウドが満足げに言う。
「成功だよぉ〜。空間で完全に繋がったぁ〜」
ゲートの向こうで、ダイヤが一瞬立ち止まる。
そして、ゆっくりと手を振った。
それに気づいたルビィが手を振り返す。
(……おばあちゃん)
その光景に、周囲が静まり返る。
ガストがぽつりと呟く。
「……なんかさ」
アンデルが感情のままに叫ぶ。
「うおおお、感動!」
結依が即座に遮る。
「黙って!今いいとこ!」
◆惑星アークス側
ゲート入口手前では、霧膜がダイヤの足元から立ち上る。ひんやりしているのに、不思議と不快感はない。
扉の奥、光がある。
そして、その光の中にルビィが見える。
ダイヤは大きく手を振った。それに気づいたルビィが手を振り返す。
ダイヤは少し不安げな顔で言う。
「よし」
「移住を持ちかけたのは、私だから。“私が最初に行く”」
アストラの右手首がホログラムを出す。
《ダイヤ脈拍数増加》
ダイヤが即座に言う。
「見なくていいわ!」
サイモンが声をかける。
「成功したら、乾杯だな」
フェザーがニヤニヤしながら言う。
「生きてたら、ね?」
レオが力強く言う。
「行ってこい!ダイヤ!」
その声を受け、ダイヤは吹っ切れたように笑う。
そして、ゲートの正面に立つ。
霧膜はすでに安定し、彼女の輪郭を柔らかく縁取っている。
向こう側には――
ルビィがいる。
ルミナールクルーがいる。
仲間がいる。
ダイヤは、ほんの一瞬だけ目を閉じて言った。
「行ってくるわ」
そう言って、保護膜をまとったダイヤが――一歩を踏み出す。
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