☆その一撃のあとで
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
間に合わない――その現実が、全員の胸に突き刺さっていた。
大型恐竜が迫る。ルミナール号を叩き潰す軌道は、もう変えられない。
ルビィは歯を食いしばり、足を踏み出す。
遅い……分かっている。 間に合わないことを。
「……くそっ……!」
結依も走る。限界まで身体を引き出しても、距離は埋まらない。
アンデルが叫ぶ。
「退避しろ!巻き込まれるぞ!」
誰も動かない。
逃げるという選択肢が、誰の中にもなかった。
そのとき。
静かに――ハッチが開いた。
全員の視線が、弾かれたようにそこへ向く。
現れたのは二つの影。エアロが、誰かを支えている。
「……っ、まさか」
結依が息を呑む。
その人物が、一歩外へ出た。
カイトだ。
先ほどまで眠っていたはずの男。だが、その目は――はっきりと開いていた。
エアロに支えられながら、カイトはそのまま、前に立った。
迫りくる巨体を、真っ直ぐに見据える。
カイトの胸の奥に違和感が走る。
(……何だ?)
力を引き出そうとした、その先。
どこか似た“気配”。それが――エアロから伝わる。微かに、だが確かに重なる波長。
カイトは一瞬だけ迷う。だが、すぐに覚悟を決めた。
そのまま力を解放する。
「はっ!!」
空間が歪んだ。
目には見えない衝撃が、空気ごと叩きつけられる。
カイトの目の前にまで迫っていた大型恐竜の巨体が――弾かれた。
そして、宙を舞い地面を転がる。
轟音が遅れて響く。
「……うそだろ……」
ガストが呆然と呟く。
だが、終わらない。
カイトはもう一度、手をかざす。
大気が震える。
圧縮された何かが解き放たれ――
二撃目。
大型恐竜は視界の外へと吹き飛ばされた。
地平線の向こうへ、消える。
その光景を、誰も言葉にできない。
シロッコが低く言う。
「………空間で、……殴っているのか?」
理解が追いつかない。
だが、現実は目の前で起きている。
そしてカイトは向きを変える。
その視線の先――
船に向かっていたルビィを、追いかけてきていた五匹目の大型恐竜。
「また……!」
結依が声を上げる。
カイトは迷わない。
続けて、力を解放する。
空気が裂ける。
抵抗する間もなく、巨体が弾き飛ばされる。
叩きつけられ、地面を削りながら後退し――
やがて動きを止めた。
――静寂。
戦場に、ようやく訪れる一瞬の静けさ。
誰もが、その場に立ち尽くしていた。
ルビィは荒い呼吸のまま、カイトを見つめる。
(……助かった)
その実感が、遅れて胸に落ちてくる。
だが――
次の瞬間。
カイトの身体から、力が抜けた。
「っ……!」
膝が崩れる。
エアロが慌てて支えようとする。
「おじいちゃん!」
だが、間に合わない。
カイトはそのまま、地面へと倒れ込んだ。
重い音が、やけに大きく響く。
エアロが必死に抱き起こす。
「しっかりして……! 聞こえてる!?」
返事はない。
かすかに呼吸はある。
だが、意識は――落ちている。
アンデルがすぐに駆け寄る。 「無理に力を使いすぎたか……!」
結依も膝をつき、状態を確認する。
「脈はある……そのまま船内へ」
アンデルは頷き、カイトを抱き上げルミナール号へ運ぶ。
ルビィは数歩遅れて近づく。
視線は、カイトから離れない。
(……代償)
あの力。
明らかに、常識の範囲を超えていた。
そして、その反動も。
エアロの手が震えている。
押し殺しきれない不安。
「無理する必要、なかったのに……」
その言葉に、誰も返せない。
全員、分かっている。
あの瞬間。
カイトが出なければ――
ルミナール号は、終わっていた。
ルビィはゆっくりと息を吐く。
戦いは、終わった。
だが――
そこに残ったのは、勝利の実感ではない。
静かに広がる、別の重さ。
そして。
誰もが、気づき始めていた。
あの力が、ただの偶然ではないということに。
そして――
まだ、終わっていない。
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