☆カ・イ・ト
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
〜回想〜
◆ルミナール船内
出航前。
薄暗い船内で、フェザーは小さなケースを取り出し、ルビィの手のひらへ静かに置いた。
中には、無色透明の錠剤が三つ並んでいる。
「――本当に、ここぞって時だけよ」
フェザーが低く釘を刺す。
ルビィはケースの中を覗き込み、わずかに眉を寄せた。
「効き目は?」
フェザーは一拍置き、視線を逸らす。
「超身体能力の解放。でも、時間も副作用も……正直、試作段階で読めない」
ルビィはすぐに結論を出した。
「じゃあ、使わない方がいい薬ですね」
フェザーの口元に、ほんの一瞬だけ笑みが浮かぶ。
「だから“ここぞ”なの」
ケースがカチリと閉じられる。
その音を最後に、記憶は途切れた。
〜回想終わり〜
◆現在・ジュラシックアース地表
灼熱の太陽と湿った空気が、肺に重くまとわりつく。
わずかな静寂。
その不自然さに、ルビィが小さく息を吐いた。
「……静かすぎない?」
近くにいたアンデルが脚を気にしながら応じる。
「こういう時ほど、一気に来るんだよ、ドカッと」
少し離れた大柄なSWAT隊員が、引きつった笑みを浮かべる。
「冗談きついっすよ。もう心臓に悪いっす」
グリムが冷ややかに視線を向けた。
「情けないな、ガスト。まだ何も起きてないだろ」
その瞬間だった。
シロッコが銃を構え、低く告げる。
「…………やつらが来る」
言葉の終わりと同時に、地面が揺れた。
森の奥から、重なる咆哮。
「数、多っ……!」
誰かの叫びが空気を裂く。
中型恐竜が、波のように押し寄せてきた。
一〇、二〇――いや、それ以上。
「撃て!」
光線銃が閃き、数体が倒れる。
だが、空いた隙間はすぐに埋まる。
「減らねぇぞ!?」
「弾幕維持! 下がるな!」
ガストが後退し、足を取られかける。
「うわっ、やばっ……!」
その腕を、エアロが強く引き戻した。
「バカ! 死にたいの!?」
バトルスーツを着たルビィの蹴りが恐竜の側頭部を打ち抜き、甲高い悲鳴が響く。
しかし――
空が、急に暗くなった。
「上!?」
結依が顔を上げる。
翼竜の影が旋回し、一斉に急降下してくる。
「ヤバい……!」
ルビィが振り向いた、その瞬間。
足元で何かが弾けた。
(え? 恐竜の尾……?)
衝撃。
身体が宙に浮き、地面を転がる。
(あっ……)
ポケットに手を突っ込む。
薬のケース――
掴みかけて、指先から滑り落ちた。
透明なケースが、地面を転がる。
迫る影。
「ルビィ!!」
結依の声が遠く響く。
カイトの声が重なった。
「――間に合わない」
ルビィの呼吸が止まる。
(くっ……殺られる……)
その瞬間――
風が、“ねじれた”。
音もなく。
恐竜の巨体が、見えない力に持ち上げられる。
そして――叩きつけられた。
もう一体。
さらにもう一体。
ありえない角度で、次々と吹き飛ぶ。
誰も動けない。
恐竜たちは怯え、後退し、やがて森へと消えていった。
静寂。
ルビィが顔を上げる。
少し離れた場所に、カイトが立っていた。
呼吸を整え、視線を落としたまま。
「……すまない」
それだけを残し、背を向けて歩き出す。
説明はない。
理由もない。
ガストが、ぽつりと漏らした。
「……なに? 今の?」
誰も答えない。
ただ一人、エアロだけがカイトの背中を見つめ続けていた。
――恐竜の襲撃後。
完全に気配が消えても、ルビィは動けずにいた。
視線の先には、転がる小さなケース。
震える指で拾い上げる。
「今の……」
本来なら使うはずだった“切り札”。
それを使う前に、戦況は覆った。
心臓が遅れて強く打つ。
「ルビィ」
結依が静かに声をかける。
顔を上げると、すぐそばに立っていた。
「怪我は?」
ルビィは首を振る。
「ない。でも……」
言葉が続かない。
結依は一瞬だけ森の奥へ視線を送り、すぐに戻した。
「今はいい。生きてる。それで十分」
そう告げて、そっと肩に手を置く。
それ以上は踏み込まなかった。
少し離れた場所。
エアロが地面を見渡している。
倒れた恐竜。荒れた地面。
(撃った痕跡じゃない……)
(爆薬でもない)
(“投げ飛ばされた”……?)
視線が、一人の男に向く。
カイト。
背中。
(……やっぱり)
エアロは唇を噛み、視線を外した。
「……あ、あのさ」
場違いな声が空気を揺らす。
ガストだった。
「今の一連のやつ……夢じゃないよね?」
誰も返さない。
「ねぇ? 手首さん?」
振り向いた先。
アストラの左手首が、静かにガストの方を向いていた。
――ピッ。
小さなホログラムが浮かぶ。
《記録:異常現象/解析不能》
「解析不能って何!? そこ、“気のせい”とか出してくれよ!!」
ガストが頭を抱える。
手首は、ゆっくりと横に振れた。
否定。
「そこは即答なんだ!?」
息を呑む音が広がる。
そのとき――
「シロッコ、動くな」
結依の声が鋭く響いた。
「…………かすり傷です。大丈夫」
言い終わる前に、肩を押さえ込まれる。
「“大丈夫”は私が決める」
医療キットを開き、手際よく処置を進める。
焼けた装甲の隙間から、血が滲んでいた。
「すまない、援護できなかった……」
低い声が落ちる。
シロッコは一瞬驚き、それから小さく笑った。
「……自分の責任です。……結果が全てです」
結依は何も返さず、包帯を締め終えた。
「次は、無茶しないで」
「……了解です」
ルビィは立ち上がる。
手の中には、薬のケース。
視線の先には森。
そして――カイトの背中。
(あの現象がなければ、確実にやられていた)
胸の奥がざわつく。
(今のは……何?)
深く息を吸った、その時。
カイトの膝が崩れた。
力尽きるように倒れ込む。
「カイトさんっ!!」
ルビィの叫びが響く。
この惑星は――
想像以上に危険で、
そして、人の中にある“何か”を、容赦なく引きずり出す場所だった。
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