☆未知なる大地
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
ルミナール号が大気圏を抜けると、眼下にジュラシックアースの広大な大地が広がった。
青空と緑の草原。その中で、恐竜の群れが蠢いている。
ルビィが小さく息を漏らす。
「……想像以上だね」
草原を踏みしめる巨体、空を舞う翼竜。その数は常識を超えていた。
結依は目を細める。
「多すぎる……陸も空も、全部」
計器を確認しながら、カイトが低く呟いた。
「聞いてた話より、ずっと多いですね」
操縦桿を握るルビィの指に、わずかに力がこもる。
「安全な場所が見つかるまで、降下は待います」
その直後――
結依が鋭く前を見据えた。
「翼竜、来るよっ!」
アストラの左手首が、かすかに光を揺らす。危険の兆しだった。
次の瞬間、翼竜が頭上から急降下する。風切り音が機体を震わせた。
ルビィは即座に高度を下げ、距離を取る。
――数分御。
恐竜の密度が低い草原を見つけた。
「……ここなら、着陸できる」
機体が地面に触れ、鈍い振動が床を伝う。
周囲の恐竜たちは距離を取り、散っていった。
結依が小さく息を吐く。
「ひとまず、安全ね」
ルビィは振り返り、クルーの顔を一人ずつ確かめた。張りつめていた空気が、ゆっくりと緩んでいく。
アストラの左手首は、静かに光を保っているだけだった。
――こうしてルミナール号は、未知なる大地へ降り立った。
程なくして、ハッチが開く。
地表の空気が船内に流れ込んだ。
数歩進んだところで、全員の足が止まる。
少し離れた草原一帯に、無数の恐竜が蠢いていた。
二足歩行の中型恐竜が地面を踏みしめ、空には翼竜の群れが旋回している。
SWATの一人が呆然と漏らす。
「……マジかよ」
エアロは目を丸くした。
「聞いてた話の百倍いるんだけど」
ルビィは静かに全員を見渡す。
「獰猛な個体は多い。でも――絶対に殺さないで」
その一言が、場の空気を変えた。
誰も返事はしない。
ただ、遠くで蠢く群れを見つめるしかなかった。
――その時だった。
群れの一角がこちらを睨む。
地面が、唸るように震え始めた。
結依が叫ぶ。
「来る!」
光線銃と特殊マシンガンが火を吹く。閃光が走る。
「多すぎる!」
結依の声が張り裂ける。
ルビィは瞬時に判断を下した。
「鎮静注射ライフルを使う。結依、任せた」
「……俺もやります」
SWATの男が一歩前へ出る。
結依が鋭く制止する。
「待って、薬は有限よ。名前は?」
男は一瞬だけ言葉を詰まらせた。
「……シロッコです」
ルビィが短く頷く。
「結依とシロッコ、二人で撃って」
注射弾が次々と命中する。
恐竜の動きが鈍り、連携した射撃で群れを押し返していく。
やがて――
結依が小さく息を整えながら口を開いた。
「射撃、上手いじゃない。止めて悪かった」
シロッコがわずかに笑みを浮かべる。
「……いえ」
張りつめた空気が、わずかに緩んだ。
それから三〇分後。
船内は、不気味なほど静まり返っていた。
ルナストンの化学者バルンがルビィへ歩み寄る。
「出航前に、フェザーさんから指示を受けています」
ホログラムが展開され、簡易設備が現れる。
「注射ライフル用の薬剤は、現地で合成可能です。ただし……」
バルンは眉を寄せる。
「あの数を相手にすると、どうしても足りなくなります」
ルビィが静かに応じる。
「多用はできないわね」
そのまま、バルンと二人の学者での製造が始まった。
ルビィは補給コンテナへ向かう。
「フェザーさん、これも用意してくれてます」
結依とSWAT三名、軍人二名に視線を送る。
コンテナの中には、格闘用バトルスーツが収められていた。
軽量、高耐久。打撃に電撃を乗せる設計。
全員が装着し、動作確認を行う。
黒と銀のラインが、静かに光を反射した。
――その時。
カイトの声が響く。
「来るぞ! 今度は小型の群れです!」
ルビィが即座に問い返す。
「数は?」
「……約四〇!」
結依が続ける。
「大きさは?」
「人間の一・五倍ほどです」
一瞬の静寂。
結依が前に出る。
「それなら――いける。スーツで行くよ」
ルビィ、結依、SWAT三名、軍人二名。
七人が一斉に外へ飛び出した。
ルビィの視線が戦場を走る。
「SWATチームと軍人チームは左右に展開し、援護」
「正面は私と結依で押す」
「目的は後退、絶対に殺さない」
戦闘は激烈だった。
電撃を伴う打撃が次々と決まり、恐竜たちが悲鳴を上げる。
だが――
大柄な軍人が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「くっ……!」
結依が即座に駆け寄る。
「名前は?」
「……アンデルだ」
その瞬間。
女性の悲鳴が響いた。
結依の表情が変わる。
「エアロ――!」
空気が凍る。
結依の身体が、一瞬で加速する。
常識の三倍の速度。
宙を裂くような跳躍。
飛び蹴りが恐竜の顎を正確に打ち抜いた。
エアロは、間一髪で救われる。
結依がすぐに視線を落とす。
「大丈夫?」
その瞳には、守る意思だけが残っていた。
一方――
もう一人の軍人が、舞うように戦っていた。
回し蹴りと連続の脚技で、敵を次々と制していく。
ルビィが思わず息を漏らす。
「……すごい」
男は短く名乗った。
「グリムです」
約二〇分後。
恐竜の群れは、ついに退いた。
荒れた地面に、静寂が戻る。
結依がアンデルへ応急処置を施す。
「負傷者一名、軽傷」
エアロが息を整えながら頭を下げる。
「ありがとう、結依さん……助かった」
結依は柔らかく微笑んだ。
「大したことないって。でも、無事でよかった」
アンデルが驚いたまま口を開く。
「さっきの動き……人間じゃなかったですよ」
結依は少しだけ視線を逸らした。
「普段は普通だよ」
少し間を置く。
「ただ……感情が動くと、体が勝手に反応するみたいで」
エアロが首を傾ける。
「感情で強くなるの?」
結依は頷く。
「昔、調べてもらったことがあってね」
「使ってない力が、解放されやすい体質らしい」
そして、少し遠くを見る。
「……私の母親も、同じだったみたい」
アンデルはゆっくり頷いた。
「なるほどな……敵じゃなくて良かったです」
結依は軽く拳を握る。
「頼っていいよ」
だが――
まだ終わりではない。
ここは、ジュラシックアース。
彼らは、ようやくスタート地点に立ったばかりだった。
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