☆加速する準備
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
ルミナール号出航から二日目。
フェザーとクラウドは、甲虫から採取した液体を用いた保護霧膜散布装置の基盤データを完成させていた。
ダイヤが軽く手を叩いた。
「さすが、フェザーとクラウドだね」
フェザーが口元を緩める。
「『ま〜ね〜』」
クラウドが手をひらひらさせた。
「褒めすぎだよぉ〜」
その間、ダイヤはルミナス号の改修に没頭していた。
単なる修理ではない。性能そのものを書き換えるような改造が施されている。
フェザーが機体を見上げる。
「見た目はルミナス号だけど、性能はルミナール号じゃない?」
ダイヤが小さく笑う。
「ま〜ね〜」
どこか楽しげな、その表情だった。
ルミナール号出航三日目。
ルナストン市では市民総出で虫の捕獲が行われ、約二万匹が確保された。
その夜――ゼファーからダイヤへ直接報告が入る。
捕獲した虫はノヴァ連邦へ戦艦で輸送され、その後、巨大化させた個体から大量の液体を採取する段取りだという。
同時に、惑星アークス各国の船が動き出し、ルナストン市民の一部は段階的に移送され始めていた。
ルミナール号出航から四日目。
ダイヤたちはルミナス号でヴェルデ自治共和国へ到着し、レオと合流する。
レオが簡潔に告げた。
「ゲートの入口は完成している」
わずかに間を置く。
「出口は組立式だ。空間の歪みが安定しない。四日……いや、三日で仕上げる」
ダイヤは短く頷いた。
すでにサイモンを中心に、小型ワープドアの量産は始まっており、一〇〇枚・五〇組を超えていた。
ダイヤが目を見開く。
「仕事早っ」
サイモンが照れたように笑う。
「てへへへ」
当初、小型ドアの性能確認はアストラが担当していたが、ダイヤ到着後はクラウドへ引き継がれた。
クラウドが胸を張る。
「任せてくれよぉ〜」
ダイヤがすぐに被せる。
「『頼むよぉ〜』」
霧膜装置の量産はフェザーが取り仕切り、完成した基盤データを元に、ヴェルデの技術者たちが生産を進めていく。
一方でダイヤは、アストラを連れてノヴァ連邦へ向かっていた。
ダイヤが端的に切り出す。
「ノヴァの戦艦に、一回の使い切りでいい。ワープ機能を付けたい」
アストラが静かに応答する。
『大型艦は安定しません』
『使い捨てでも時間がかかりすぎます』
協議の末、中型戦艦で妥協することになった。
――そのとき。
アストラの声がわずかに強まる。
『恒星が活発化しています。予測より大幅に早いです。このままだと、電気機器や艦艇に影響が出ます』
ダイヤは一瞬も迷わなかった。
「影響が出る前に、ゲートとドアを完成させる」
時間は、残されていなかった。
そして――ルミナール号出航から五日目。
◆ノヴァ中型戦艦の中
ダイヤは使い捨てワープの作業データを確認していたが、不意に顔を上げる。
アストラの目が淡く光っていた。
ダイヤが静かに口を開く。
「……そろそろ、ルミナール号はジュラシックアースに着く頃じゃないか?」
アストラが即座に応じる。
『はい』
左手首から送られてくる情報がホログラムに展開される。
『現在の航行状況から判断して、あと一時間ほどで着陸予定です』
ダイヤは短く息を吐いた。
「ルビィ、結依……頼むよ」
それは、祈りに近い独り言だった。
ルミナール号出航から七日目。
中型戦艦には、使い捨てとはいえ確実に作動するワープ機構が組み込まれ、艦体全体には霧膜による保護コーティング作業を残すのみとなっていた。
数日後には、移動に耐える最低限の準備は、ようやく整う。
一方、ヴェルデ自治共和国では――
レオが組立式ワープゲートを完成させ、最終テストに入っていた。
レオが巨大な扉を見上げ、口元を歪める。
そのゲートは、どこかレトロな“扉”の形をしていた。
フェザーが呆れたように視線を向ける。
「ちょっと待って。この扉、昔のお城みたいじゃない?」
どう見ても、レオの趣味だった。
調整は綱渡りのようだったが、それでも出口ゲートはすでに形を成している。
同時に、フェザーとクラウド、そしてサイモンが指揮する霧膜散布装置と小型ワープドアの量産も順調に進んでいた。
生産ラインは安定し、数は日を追うごとに増えていく。
◆ノヴァ連邦・シルヴァニア議事堂
ダイヤとアストラは、アーク帝国大統領とノヴァ連邦大統領との会議を終えた直後だった。
議題は中型戦艦の乗員選定と出航日、そしてワープゲートやワープドア建設の進捗報告。
形式上の会議は終わっても、実務はまだ続く。
その直後――
アストラの左手首から、本体へ新たな情報が流れ込む。
アストラがダイヤへ向き直る。
『二日前に、ルミナール号はジュラシックアースへ到着しています』
ダイヤが少しだけ肩の力を抜く。
「そうだったね。中型戦艦の改造でそれどころじゃ無かったよ。それで、状況は?」
アストラの声がわずかに低くなる。
『ルミナールクルーは、幾度となく恐竜に襲われ、戦闘が続いています』
『疲労は限界に近い。このままでは――生死に関わります』
その言葉に、ダイヤは沈黙した。
準備は進んでいる。確実に、加速している。
それでも――移住先の確保が間に合わなければ意味がない。
ダイヤは眉を寄せ、強く拳を握りしめた。
――時間は少し戻る。
ルミナール号がジュラシックアースの大気圏へ突入する、少し前。
◆ルミナール号船内
船内には低い振動が伝わり始めていた。
結依が計器を確認していると、背後から軽い声が飛ぶ。
「ねえねえ、副長さん」
振り向くと、派手な三色の髪を揺らした女性が立っていた。
SWAT隊員――エアロだ。
エアロが興味深そうに身を乗り出す。
「異銀河の人たちってさ、みんな天才って聞いてるんだけど?そういう種族なの?」
結依は一瞬だけ考え、静かに話し始める。
「種族、ってほど単純じゃないかな」
「うちの銀河はね、ずっと前から“優秀な遺伝子同士を選ぶ”ことをしてきたの」
エアロが目を丸くする。
「え、恋愛とかじゃなくて?」
結依は淡々と続ける。
「そう、科学室でね」
「知能とか、体力とか、見た目とか。目的はいろいろ」
わずかに間を置く。
「その結果、頭のいい人が増えたのは事実」
さらに静かに付け加える。
「だから、自然に産む人のほうが今は少ない」
「もちろん、そういう人もいるけど」
エアロが息を吐く。
「へぇ〜……なんか、世界違うわ」
少し離れた場所で、カイトがその様子を見ていた。
視線が、エアロにだけ向けられる。
表情は変わらない。
そのとき――
船内にルビィの声が響く。
「まもなく大気圏に突入します。全員、着席してください」
空気が一気に引き締まる。
結依がエアロに短く頷く。
「続きは、生き延びてからね」
エアロが軽く手を上げる。
「了解〜」
それぞれが席へ向かう中――
カイトは最後にもう一度だけ、エアロの背中を見送った。
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