☆遅れた五〇年と教育係
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
◆ヴェルデ自治共和国の中枢施設。
白を基調とした広いホールに、レオ、サイモン、アストラが足を踏み入れると、すでに一人の男が待っていた。
ヴェルデ大統領は、柔らかい笑みを浮かべて歩み寄る。 「久しぶりですね、レオ殿、アストラ殿」
レオは軽く片手を挙げながら言う。 「変わってないですね」
少しだけ目を細める。
「相変わらず、仕事が顔に出ない方ですね」
ヴェルデ大統領は穏やかに返した。
「それは褒め言葉と受け取っておきます」
短い握手が交わされる。
形式ばらないが、互いの立場を理解した者同士の挨拶だった。
ヴェルデ大統領はそのまま言葉を続ける。
「君たちが来ると聞いてね」
ゆっくりと視線を巡らせた。 「各国から、今出せる最高の技術者と科学者を集めた。準備は整っている」
レオは小さく頷く。
「それは助かります」
アストラとサイモンに視線を送り、短く告げる。
「では、早速」
一行は別室へと移動する。
ミーティングルームには、所狭しと人が集まっていた。
各国から招集された科学者、技術者、理論屋、現場屋―― 分野も立場も違うが、全員が“ワープゲート”という言葉に引き寄せられている。
説明は淡々と進んだ。
現在想定されているゲート理論。エネルギー供給の問題。安全係数。失敗例と、その回避策。
議論は活発で、質問も鋭い。
一時間ほどが過ぎた頃。
レオは内心で静かに評価を下していた。
(思ってたより、使える)
少なくとも、基礎理解は高い。応用力もある。指示を出せば、形にはなる。
ミーティングが終わり、人がはけていく。
廊下に出たところで、レオとサイモンはチーム分けの話になった。
レオは足を止めて言う。
「我々は三つに分かれた」
そのまま振り返る。
「そしてうちのチームは、俺とサイモン、それから……七八だ」
サイモンは眉をひそめる。
「なぜ、アストラを俺たちに?」
その問いを待っていたかのように、レオは小さく笑った。
「ダイヤからの伝言だ」サイモンを見る。
「『いい? よく聞いてね〜』って前置き付きだった」
サイモンは顔をしかめる。
「……嫌な予感しかしないな」
レオは構わず続ける。 「俺たち三人は、ルミナールクルーより――」
一拍置く。
「五〇年、遅れてる」
サイモンは何も言わず、その言葉を受け止める。
レオは淡々と並べた。 「技術も、医療も、政治も、歴史も」
「その五〇年分のデータを、全部七八が持ってる」
アストラがわずかに首を傾ける。
レオはそのまま続けた。
「ゲートを作りながら、空いた時間で勉強しなさい、だとさ」
少しだけ口元が緩む。
「『追いつけとは言わないけど、せめて同じ地平には立ちなさい』」
「『じゃないと、話にならないでしょ?』って」
ダイヤの声が、そのまま響いているようだった。
サイモンは小さく息を吐く。 「つまり、教育係か」
レオは即答する。
「そう」
視線をアストラへ向ける。
「しかも、五〇年分まとめて」
アストラは静かに告げる。
『必要であれば、優先順位を整理します』
サイモンは苦笑する。
「逃げ場はないな」
レオは前を向いたまま言う。 「最初からない」
短く言い切る。
「だから俺たちは、このチームだ」
その言葉に、わずかな重みが宿る。
そして、三人は歩き出した。
――ヴェルデ自治共和国の巨大な研究施設。
そこでは、ワープゲート計画という、厄介で、しかし誰も逃げられない仕事が待っていた。
そして同時に――
彼ら自身が、“追いつくための戦い”も始まろうとしていた。
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