☆ヴェルデ自治共和国へ
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
自然衛星ルナスの地表に、低く重い振動音が響いていた。
移住計画は分岐し、それぞれの役割が動き出す。ここから先は、同時進行の戦いになる。
◆自然衛星の地表
――出発前。
ルナストン市の入口、いつもなら巨大モコルが居るはずの所に、低く重い振動音と共にアーク帝国の宇宙軍艦が、静かに浮かび上がっている。
ルミナール号とは対照的な船だ。曲線よりも直線、装飾よりも装甲。それは、“生き残るために戦う船”だった。
その足元で、人の流れが二つに分かれていた。
惑星アークスから派遣された軍人二名と科学者二名はここで降りる。
代わりに、サイモン、アストラの本体、そしてレオが、軍艦へ向かう。
艦の前には、ゼファーとアーク帝国大統領が並んで立っていた。
アークは軍艦を見上げてから言った。
「ヴェルデ自治共和国は、すでに準備を始めている。科学者、技術者、施設――すべてだ」
ゼファー大統領は頷いた。
「我々の報告では、すでに各国の優秀な人材が集められている。到着次第、ワープゲート建設に着手できるだろう」
レオは一歩前に出て、低く言う。
「現地で、技術水準と運用体制を確認する。使えるなら、すぐに組み込む」
短い言葉だったが、覚悟は十分に伝わった。
アーク大統領は、レオをまっすぐ見て言った。
「頼んだ。我々の未来がそこにかかっている」
レオは、小さく頷いただけだった。
少し離れたところで、サイモンが苦笑しながら言う。
「しかし、大統領同乗の軍艦って、緊張するなぁ」
アーク大統領が低く問い返す。
「不満か?」
サイモンは軽く手を振って答えた。
「いえいえ。ただ、落ちたら歴史に残るなって思っただけです」
一瞬、場が凍りつきかけ――
だが、アーク大統領はわずかに口元を緩めた。
その様子を見て、結依はレオの前に出る。背筋を伸ばし、丁寧に頭を下げた。
「ヴェルデとの共同作業、よろしくお願いします。私たちも、出口側の惑星で与えられた仕事を終わらせてきます」
レオは少しだけ柔らかい表情で言う。
「あぁ、お前たちも気をつけろよ、恐竜は気性が荒い」
サイモンはルビィの側に寄り、少し低い声で呼ぶ。
「……ルビィちゃん」
ルビィは顔を向けて答えた。
「なに? サイモンさん」
サイモンは無言でルビィの肩のライフルのストラップを直しながら言う。
「あんまり無理すんなよ。ルビィちゃん、責任感強すぎて時々顔が引きつってんだわ。……あっちに行ったら、少しは結依ちゃんに甘えろよ。分かった?」
ルビィは小さく頷いた。
「……うん。ありがと」
ルビィは少し意外そうに彼を見上げる。
サイモンは照れ隠しにニヤリと笑い、続けた。
「そういえば、そっちは例の“通信担当”がいるから大丈夫かな?」
その視線の先。
小さなケースの中で、アストラの左手首が、ちょこんと収まっている。
ケースの横にはフェザーとカイトが立っていた。
手首がゆっくりと親指を立てた。
ルビィは思わず笑う。
すると今度はピースサイン。
フェザーはため息混じりに言う。
「本体はヴェルデ、手首はルミナール号。相変わらず、落ち着きのない存在ね」
アストラの本体が静かに答える。
『任務に最適化した結果です』
フェザーは少し眉を上げて言う。
「向こうで体の分解しないでよ?」
アストラは淡々と返した。
『努力します』
ケースの中で、手首がホログラムを出す。
《保証なし》
フェザーは即座に言い返す。
「表示するな」
カイトは苦笑していた。
少し後ろで、ダイヤが腕を組んで見ていた。
やがてレオに向かって口を開く。
「入口と出口のゲート作りよろしくね、ワープ空間研究が終わり次第、私たちもヴェルデ自治共和国へ向かうから」
レオは即答した。
「わかった。任せておけ」
ダイヤは次にサイモンを見る。
「死なないでね」
サイモンは目を見開いて言う。
「軽っ!それだけ?」
ダイヤはあっさりと言った。
「死んだら、研究が止まるでしょ」
サイモンは思わず声を上げる。
「そっちの理由!?」
搭乗の合図が鳴る。
軍艦の影が、ゆっくりと大きくなる。
見送りの列には、ゼファー、フェザー、ルビィ、結依、ダイヤ、カイト、そしてケースに入ったアストラの左手首が並んだ。
結依は艦を見上げて呟く。
「ほんと、大きいね」
カイトは静かに続ける。
「戦艦って感じですね」
ゼファーは低く言った。
「この出発が、移住計画の要になる」
ルビィは拳を握りしめて言う。
「必ず合流しましょう」
ケースの中で、手首がホログラムを出す。
《合流予定:生存前提》
結依は思わずツッコむ。
「だから縁起でもない!」
やがて、エンジン音が高まり――
軍艦は、ヴェルデ自治共和国へ向けて発進した。
残された地表には、ルミナール号一隻のみ。
静けさが戻る。
フェザーは小さく息を吐いて言った。
「分かれたわね」
ダイヤは静かに答える。
「役割が違うだけ」
ルビィは遠ざかる艦影を見つめながら、心の中で呟く。
(次に会う時は――世界が動いてる)
ケースの中の手首が、最後にホログラムで文字を出した。
《忙しくなりそう》
カイトは苦笑した。
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