☆非常事態
◆星間探索士官学校――実戦訓練区画。
警報が、唐突に鳴り響いた。
けたたましいサイレンが空気を震わせ、訓練場にいた生徒たちが一斉に顔を上げる。
「なに……?」
ざわめきが広がる中、天井のスピーカーから教官の声が流れた。
『全員、落ち着け。これは――』
その言葉は、途中で途切れた。
ノイズ。
そして、別の声。
『……こちら管制。訓練用ドローン群が制御不能。現在、実弾モードに移行しています』
一瞬の静寂。
次の瞬間――
爆発音。
遠くの区画で、閃光が走った。
「嘘でしょ……実弾って……!」
生徒たちの顔から血の気が引く。
訓練用ドローンは、本来スタン弾しか撃てない。だが暴走状態で実弾。
これは訓練ではない。本当に死ぬ。
その現実が、訓練場の空気を一瞬で変えた。
つまり――本物の戦闘。
「全員、退避しろ!」
別の教官が怒鳴る。
だが、その指示よりも早く、ルビィは動いていた。
「結依!」
「うん、分かってる!」
二人は同時に走り出す。
向かった先は、武装ロッカー。
緊急用の実弾装備が格納されている。
「勝手に使ったら怒られるよ?」
結依が軽く言う。
「生きて帰ってから怒られればいい」
ルビィは即答した。
ロッカーを開け、銃を手に取る。
冷たい金属の感触。
だが、迷いはない。
そのとき――
ドローンが一機、通路の奥から飛び出してきた。
赤いセンサーが、こちらを捉える。
「来る!」
結依が一歩前に出る。
構える。
引き金を引く。
――一発。
ドローンのセンサー部を、正確に撃ち抜いた。
爆ぜる火花。
機体がその場で崩れ落ちる。
「……はや」
ルビィが思わず呟く。
結依は銃を下げない。
「まだ来るよ」
その言葉通り、次の瞬間。
三機、同時に現れた。
通常なら、対処不可能な数。
だが――
「右、任せて!」
「了解!」
ルビィが横に滑り、位置を取る。
同時に射撃。
結依は一機ずつ、確実に“急所”を撃ち抜く。
ルビィは動きながら撃つ。
回避と射撃を同時にこなし、弾を無駄にしない。
「残り一機!」
結依の声。
だが、そのドローンは異常だった。
急加速。
一直線に、奥の避難途中の生徒へと突っ込む。
「まずい!」
距離が遠い。
間に合わない。
――その瞬間。
ルビィが走った。
迷う時間はなかった。守らなきゃ――それだけだった。
無理な軌道で滑り込み、銃口を向ける。
「止まれっ!」
引き金。
だが――弾は外れた。
「……っ!」
次の瞬間。
乾いた銃声。
ドローンのコアが、正確に撃ち抜かれる。
崩れ落ちる機体。
撃ったのは――結依だった。
遠距離からの、完璧な一撃。
この距離で急所を撃ち抜ける者は、士官学校でも数えるほどしかいない。
「ナイス」
ルビィが息を整える。
結依は軽く笑った。
「そっちこそ、無茶するね」
だが、その目は鋭いままだった。
「……これ、ただの暴走じゃない」
ルビィも頷く。
「うん。制御系統、完全に乗っ取られてる」
教官の指示が来ない。
管制も混乱している。
なら――
「誰かがやらなきゃいけない。それなら、私たちが行く」
ルビィが言う。
結依は迷わなかった。
「当然!」
二人は、さらに奥へと走り出した。
読んで頂きありがとうございます。
第一章の2話目。
ルビィの身体能力、結依の射撃スキルを書きたくて。
良かったら、次のエピソードも読んでくださいね。




