☆巨大化実験
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
このエピーソードは少し話を増やしてます。
――翌日
◆ルナス地表実験区画
地表は、薄い雲に覆われた灰白色の大地。遠くには巨大な入口が見える。
フェザーは端末を操作しながら言った。
「じゃあ……始めるわよ」
透明ケースの中で、例の黒光りする甲虫がじっとしている。
ダイヤはバイクにまたがり、後部座席にルビィを乗せていた。
ルビィは、軽量ライフルを肩にかけている。
少し離れた岩陰で、サイモンが腕を組んでぼやく。
「……きっと、参加しなくて正解だよな」
アストラはレオと並び、静かに観測していた。
注射器が甲虫に打ち込まれた瞬間――
『数値、来ます』
ズン……地面が揺れた。
ルビィが目を見開く。
「……え?」
次の瞬間、黒い影が、爆発するように膨張した。
フェザーが叫ぶ。
「ちょ、ちょっと!?」
甲虫は異様なほど巨大化していた。外殻がきしみ、脚が地面を削る。
アストラが即座に警告する。
『想定サイズ、超えています!』
フェザーは歯噛みした。
「制御、来てない!」
甲虫が――動いた。
ガシャァァン!!
地表の岩盤を粉砕し、十二本ある脚が無差別に振り下ろされる。
ルビィが叫ぶ。
「来るよ!」
ダイヤがアクセルを踏み込む。
「了解!」
バイクが弾丸のように走り、ルビィが後ろから発砲した。
バン!バン!
外殻に火花が散るが、ほとんど効いていない。
ルビィは歯を食いしばる。
「硬っ!?」
ダイヤが声を張る。
「甲虫だもん!そりゃ硬いって!」
巨大甲虫が、脚を振り上げ――
ドォン!
衝撃波が走る。
バイクが弾き飛ばされそうになる。
ダイヤが体勢を立て直しながら言う。
「くっ……!」
少し離れた高台。
結依は伏せた姿勢で、ガン型注射器を構えていた。
照準は、甲虫の関節と外殻の“隙間”。
結依は小さく息を整え、呟く。
「――当たれ」
シュッ。
小さな音とともに、注射針が放たれる。
それは、巨大甲虫の脚の付け根へ――正確に突き刺さった。
一拍。
ズズズズ……
巨体が、崩れるように縮み始める。
フェザーが声を上げた。
「効いた!」
数秒後。
そこにいたのは、元のサイズに戻った、黒光りの虫だった。
沈黙。
誰も、すぐには言葉を発せなかった。
レオが、ゆっくりと結依を見る。
「今の射撃」
レオは静かに続けた。
「距離、風、振動込みで、完璧だ」
結依はハッとして顔を上げる。
「えっ」
レオははっきりと言った。
「すごい」
結依は頬を赤くする。
「そ、そんな――」
ルビィが苦笑しながら言う。
「ほんと、頼もしいよ」
ダイヤは虫を見下ろしながら言った。
「制御不能は想定内……だけど」
ルビィは小さく笑う。
「うん、これは派手すぎですね」
フェザーが指を鳴らした。
「……あ」
フェザーは思い出したように言う。
「そういえば」
全員が振り向く。
フェザーはさらっと言った。
「生き物を静かにさせる薬あるわ」
フェザーは肩の力を抜いたまま続ける。
「昆虫に効くかは知らないけど」
ダイヤが問い返す。
「効かなかったら?」
その問いにフェザーが答える前に――
ダイヤはニコっと笑った。
「効くようにすればいいじゃん」
岩盤には深い亀裂、焦げ跡、削れた大地。
巨大化実験は――成功しすぎて、失敗した。
正確には、失敗する前に強制的に終わらせた。
フェザーは、小さく戻った甲虫を隔離ケースに収めて、深く息を吐いた。
ルビィは肩の力を抜きながら言う。
「制御不能、だったね」
結依は苦笑して言った。
「“巨大化”って言葉が、軽く感じるレベルだったよ」
少し離れた岩陰。
サイモンは腕を組みながら言う。
「だから言っただろ。俺は“見るだけ”にして正解だったな」
レオは地面に残った爪痕を見下ろし、低く言った。
「あれはもう“生物兵器”だな」
ダイヤはヘルメットを外し、額を押さえる。
「完全に想定外だね」
ダイヤは息を吐きながら続けた。
「巨大化した瞬間の暴走率が高すぎる」
そのとき、ふっと風が吹いた。
ダイヤの髪が、ゆっくりと――黒から金色へ戻っていく。
ルビィが小さく声を漏らす。
「……あ」
結依が首をかしげる。
「……?」
ルビィはダイヤを見て微笑んだ。
「戻ったね」
ダイヤは自分の髪を掴み、目を瞬かせる。
「あ……ほんとだ」
ダイヤは納得したように言う。
「そっか、やっぱり食事の副作用だったんだ」
フェザーが驚いた声を上げる。
「えっ!?黒髪って副作用だったの!?」
ダイヤはあっさり答えた。
「うん。言ってなかった?」
フェザーは即座に返す。
「聞いてないわよ!」
今日は珍しく、ルビィは髪を束ねていない。
金色の髪が肩に流れ、二人が並ぶと、とてもよく似ている。
結依がぽつりと呟く。
「本当に、そっくり」
ルビィは少し誇らしげに言った。
「でしょ。おばあちゃんの孫って言われるの悪くない」
ダイヤは一瞬言い返そうとして――やめた。
そして、苦笑する。
「……もう、好きに言ってなさい」
そのとき。
足音とともに、ゼファー大統領の部下が現れた。
部下は一礼して告げる。
「ダイヤ船長、ルビィ船長。至急、大統領がお呼びです」
ダイヤは驚いた表情でルビィを見る。
「え?今?」
ルビィも同じように視線を返す。
「みたいですね」
――その場の空気が、わずかに引き締まった。
つい先ほどまでの実験の熱気とは別の、静かな緊張。
惑星の命運を左右する計画は、すでに動き出している。
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