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☆ネバネバ実験と新たな発想

一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。

完結してる作品なので、完結は必ずします。


「」人のセリフ

()心の声

『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。


楽しんでもらえると嬉しいです。

このエピーソードは少し話を増やしてます。

◆地下都市研究室 

 ケースに入った虫から、慎重に抽出された液体。少し黒みがかった、鈍く光るネバネバだった。


 ダイヤは赤いミニボールを見つめながら言う。

「これをボールに――」

 視線をゲートへ向け、続けた。

「そして、ゲートに」


 フェザーが静かに頷く。

「ええ」


 ネバネバをまとった赤いボールが、ゆっくりとミニゲートへ吸い込まれていく。


 次の瞬間だった。

 ポンッ――

 もう一方のゲートから、同じネバネバをまとったままの赤いボールが、完全な形で転がり出た。


「……」「……」「……」


 ダイヤが、静かに口を開く。

「成功、だね」


 フェザーは深く息を吐いた。

「ええ。ゲートを無事に通過」


 サイモンは小さく拳を握る。

「よし」


 だが、その空気を切るように、アストラが数値を表示した。

『一匹あたりの抽出量、約一〇〇ml』

『人体一人分に必要な最低量、約一〇〇〇ml』

『二一億人分――単純計算で、約二一〇億匹が必要です』


 その瞬間、全員の動きが止まる。

「……」


 ダイヤはあっさりと言った。

「無理だね」


 ルビィは、少し間を置いてから静かに口を開く。

「薄めることは?」


 フェザーは即答した。

「試す価値はある」


 すぐに実験が始まる。

 ネバネバ:水

 九:一 → 成功

 八:二 → 成功

 七:三 → 成功

 六:四――

 赤いボールが、途中で歪んだ。

 フェザーが短く告げる。

「アウト」


 そのときだった――

 ケースの中で、モゾ……と一匹が動いた。


 フェザーが気づく。

「……あれ?」


 次の瞬間。

 カチッ――

 わずかに開いていた蓋が弾けた。黒い影が、勢いよく飛び出す。


「え!」

 ルビィが目を見開く。


 ブンッ――!!

 虫は一直線に天井へ向かい、そこから反射するように研究室内を高速で飛び回り始めた。


「ぎゃああああああ!!」

 ダイヤが即座に後ずさりする。


「ちょ、待って無理無理無理!!」

 フェザーが机にしがみつく。


「ちょっと!どこ行った!?」

 ルビィが慌てて周囲を見回す。


「落ち着けって言っても無理だなこれ!」

 サイモンが思わず身を引く。


「こっち来た!!」

 結依が反射的にしゃがみ込む。


「右だ!」

 レオが鋭く指示を飛ばす。


 だが。

 ブンッ! ブンッ!!

 虫は予測不能な軌道で、天井、壁、照明を跳ね返りながら暴れ回る。


「いやいや速すぎるって!!」

 ダイヤはモコルを盾にするように抱きしめる。


「こっち来ないで!!」

 フェザーは顔を覆った。


「嫌だぁ〜!もうぉー!」

 ルビィが半泣きで叫ぶ。

 次の瞬間。

 虫がルビィの顔の前をかすめた。

「ひゃあっ!?」

 ルビィは思わずその場にしゃがみ込む。


「下がれ!」

 レオが一歩前に出る。


 だが、その視線の上を――

 虫は、天井のかなり高い位置へと張り付いた。

 ピタリ、と動きを止める。


「……止まった?」

 サイモンが恐る恐る見上げる。


「……あそこか」

 レオも視線を固定する。


 誰も動けない。

 高すぎる位置。手は届かない。


 そのときだった。

 アストラが一歩、前に出る。

『捕獲します』

 淡々とした声。


 カチン――

 アストラの手首が、機械的な音とともに外れた。


「え?」

 ダイヤが固まる。


 外れた手首が、そのまま壁を登り、一直線に虫に近づく。

 まるで意思を持つかのように。


 そして静かに、虫の背後へ回り込み――

 パシッ。

 一瞬で掴んだ。


 ブンブンと暴れる虫。

 だが、逃げられない。

 手首はそのままゆっくりと降下し、アストラの腕へと戻る。


 カチッ。

 何事もなかったかのように接続される。

『捕獲完了です』


 静寂。

「……」「……」「……」


 ダイヤがぽつりと言う。

「……すごっ」


 フェザーが息を吐いた。

「便利すぎるでしょ……」


 ルビィはへたり込んだまま呟く。

「心臓止まるかと思いました……」


 サイモンは苦笑する。

「アストラ、俺より捕まるの上手いじゃん……」


 結依は立ち上がりながら言う。

「銀河探索で、一番の恐怖体験だったわ……?」


 レオは短く息を吐いた。

「……先が思いやられるな」


 しばらく、誰も動かなかった。

 さっきまでの騒ぎが嘘のように、研究室に静けさが戻る。


 ダイヤは、アストラの手元にあるケースをじっと見つめる。

「……で」

 ゆっくりと顔を上げた。

「この子たち、あと何匹必要なんだっけ?」


 その問いに、空気が一瞬だけ凍る。


 サイモンが顔を引きつらせる。

「聞くなって……」


 フェザーは小さく息を吐いた。

「現実、見ないとね」


 そのタイミングで、アストラが淡々と告げる。

『実験の安全域、七:三までです』

 数値が、容赦なくホログラムに表示される。


 ルビィはまだ少し半泣きのまま、呼吸を整え呟いた。

「それでも、数が足りない」


 アストラが補足する。

『地下都市に存在する個体数は、推定ですが一五〇〇〇〜二〇〇〇〇程度です』


 研究室に、重い沈黙が落ちた。

 完全な行き詰まり。


 ダイヤはモコルを抱き上げると、現実から逃げるように、その柔らかな体にもふ、と顔をうずめる。


 フェザーは頭を抱えた。

「人工生成は無理」

「自然個体も足りない」


 サイモンが小さく呟く。

「詰み?」


 そのときだった。

 レオが低く声を出す。

「待て……」

 全員の視線が向く中、レオはダイヤの腕の中を見つめていた。

「そのモコル」


 ダイヤは顔を上げる。

「ん?」


 レオは淡々と言った。

「大きくする薬、あるだろ」


 一瞬、空気が静止する。


 フェザーが首を傾げた。

「あれはモコル専用よ?」

 少し眉をひそめて続ける。

「他の生命体には――」


 その言葉を遮るように、ダイヤが笑い、目を細めて言う。

「ネバネバを人工で作るよりさ」

 少し前に身を乗り出す。

「その大きくする薬を、虫に効くように調整する方が――簡単じゃない?」


 フェザーは、ゆっくりと顔を上げた。

「……あ」


 二人の思考が、同時に一致する。

 巨大化した黒光りの虫。

「……」「……」

 ダイヤとフェザーは同時に言った。

「「やだ」」


 サイモンは一歩後ろに下がる。

「……俺、その実験、参加しなくていい?」


 ――研究室に、笑いと嫌な予感が同時に広がった。


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