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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を見つけたら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼12万PV達成】【平日朝6時更新】  作者: 彩川準
【第四章】宝石(星)の系譜/移住計画始動

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☆異形素材と捕獲任務

 研究室に入ると同時に、アストラがデータを展開した。

 空中に浮かぶのは、複雑すぎるホログラム。分子構造とも、生体情報とも取れる異様なデータだった。


 アストラは淡々と告げる。

『コーティングの主成分を解析しました』

 そのまま視線も動かさず、さらに続けた。

『植物由来の液体と推定されますが、遺伝子改変が過剰で分類不能です』


 ダイヤは思わず声を上げた。

「なにこれ!?」

 頭を抱えるようにして、ホログラムを睨みつける。

「ぐちゃぐちゃじゃん!設計思想が見えない!」


 フェザーは腕を組み、画面を見据えたまま言う。

「文字、ルナストン語にできる?」


 アストラは即座に応じる。

『可能です』

 一瞬で表示が切り替わった。


 フェザーの表情が、ぴたりと止まる。

「……嘘でしょ」


 その変化を見て、ダイヤも察したように顔を上げる。

「これ、わかるの?」


 アストラは静かに答えた。

「オリオン博士の手法と、高い一致率があります」


 ダイヤは深く息を吐き、額に手を当てた。

「やってくれたな、あいつ…」

 呆れたように続ける。

「また未発表かよ…。しかも、生体素材寄り……」


 フェザーが、しばらくホログラムを見つめてぽつりと呟く。

「九八%くらい似てる素材、知ってる」


 ダイヤは驚いて顔を上げた。

「え?」


 フェザーはそのまま説明を続ける。

「ルナストン市でね」

 少し間を置き、言葉を選ぶ。

「最近、自然発生した虫がいるの」


 ダイヤの顔が引きつる。

「……虫?」


 フェザーは即答した。

「ええ」

 少し眉をひそめて付け加える。

「気持ち悪いやつ……」


 空中に、新しいホログラムが映し出された。

 黒光りする体。

 一〇〜一五センチ。

 足がやたら多い。


 ダイヤは即座に視線を逸らした。

「うわっ」

 両手を振るようにして叫ぶ。

「ムリムリムリ!」


 フェザーは軽く笑う。

「安心して」

 肩を揺らしながら続けた。

「私も虫大嫌い」


 サイモンが後ろから覗き込み、顔をしかめる。

「……これは、確かに無理だな」


 フェザーは説明を続ける。

「その虫、不定期にね、ネバネバの液体で全身を覆って、眠りに入るの」


 ダイヤはすぐに気づいたように言う。

「その液体が――」


 フェザーは頷いた。

「そう」

 淡々と続ける。

「少し柔らかめに固まると、無敵なの。外的干渉、ゼロ」

 指を折るように説明する。

「熱、衝撃、切断、いずれも内部へ影響なし」


 ダイヤは眉をひそめて問いかける。

「それを人工で作ろうとした?」


 フェザーは楽しそうに笑った。

「売れるし、面白いでしょ?」


 ダイヤは嫌な予感を隠さずに言う。

「……で?」


 フェザーはあっさり答えた。

「無理だった」

 軽く手を振る。

「一匹から一〇〇ml程度しか取れないし、再現不可…虫も気持ち悪いしね」


 ダイヤは少し考え込み、低く呟く。

「ねぇ、その虫、今ある?」


 フェザーは端末を操作しながら答える。

「今はない」

 視線を上げ、続ける。

「でも、草木の多い公園なら――一時間で二〜三匹は捕まえられる」


 ダイヤは一瞬だけ迷い、すぐに振り返った。

「ゴリにぃ!」

 入口付近にいたモコルが、ぴくっと反応する。


 ダイヤは勢いよく指示を出す。

「一人で公園行って」

「この虫、捕まえてきて!」


 サイモンは苦笑いを浮かべながら立ち上がる。

「俺、行くよ。虫はグロいけど、爆発よりマシだ」


 フェザーは満足そうに頷いた。

「話が早くて助かるわ」


 ダイヤはホログラムを見ないようにしながら呟く。

「……絶対、触らない」


 そして一人、サイモンは研究室を飛び出していった。


 そして、約一時間後――

 研究室のドアが、音もなく開いた。

 サイモンは力なく言う。

「……ただいま」

 入ってきた彼は、服が半分ボロボロだった。腕には謎の緑色の痕、髪には小枝が絡んでいる。


 サイモンは無言で、透明ケースをテーブルに置いた。中では黒光りする“それ”が、四匹、モゾモゾと動いていた。


 ダイヤは一歩後ずさる。

「……」

 フェザーは少し首を傾げて問いかける。

「……大変だった?」


 サイモンは遠い目をしたまま答えた。

「三回、木から落ちた」

 指を一本立てる。

「二回、追いかけられた」

 そして少し間を置く。

「一回……食われかけた」


 ダイヤは思わず叫ぶ。

「食われかけた!?」

「虫に?」


 サイモンは疲れた顔で言う。

「噛まれたと言うべきか……」


 フェザーは吹き出した。

「想像以上ね」


 アストラが淡々と補足する。

「捕獲対象の防御反応と推測します。極めて危険です」


 ケースの中でモゾモゾと蠢く黒い影と、鼻をつく独特の匂い。

 誰もが「触りたくない」と本能で叫んでいるが、人類救済の鍵は間違いなくこの虫の中にある。

 ダイヤとフェザーの目が、怪しい光を宿した。研究室に、新たな悲鳴と熱狂が響き渡るまで――あと数分。


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