☆ダイヤの賭け、ルビィの祈り
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
◆ルミナール船の船内
――少し前。
船は静かに惑星圏を離脱した。
窓の向こう、ノヴァ連邦の星が遠ざかっていく。
沈黙を破ったのは、レオだった。
操縦席の後ろから、淡々と口を開く。
「……で」
「“ゲート完成八〇%”ってのは、嘘だよな」
結依が即座に口を開いた。
「やっぱり?」
ゼファーも腕を組み、静かに頷く。
「私も、そう感じていた」
全員の視線が、ルビィに集まる。
一瞬、空気が止まる。
ルビィは観念したように小さく息を吐いた。
「……はい」
そして、少しだけ視線を落とす。
ルビィは静かに続けた。
「出発前にダイヤさんに、言われました」
――回想。
薄暗い回廊。
ルミナール号の出発直前。
ダイヤは、いつもの軽い調子でルビィに話しかける。
「会合ではね」
「ワープゲートは八〇%完成してるって、言って」
そして、軽く笑みを浮かべた。
ルビィは目を見開いて固まった。
「えっ?」
ダイヤは気にせず笑う。
「大丈夫、大丈夫」
「完成はさ、必ずさせるから」
「でも、“今から作ります”じゃ、誰も賭けてくれない」
明るく言い切った。
そこには、アストラもいた。
ダイヤは、ちらりとアストラを見る。
ダイヤは少しだけ目を細めて言った。
「で、アストラくん」
「君は……嘘、バラしそうだからさ」
アストラは感情のない声で答える。
『……理解しました』
ダイヤは、ニッと笑った。
「要するに、これは覚悟の嘘だよ」
――回想、終わり。
ルビィは、ゆっくり顔を上げる。
「――そういう、ことでした」
レオは呆れたように短く息を吐いた。
「やっぱりダイヤの仕業か。……やれやれ、俺まで移住先の恐竜について、話を合わせる羽目になったぞ」
ゼファーも静かに、だが重みのある声で応じる。
「ワシも同じです。あの場では、嘘も方便でしたからな。……ですが、恐竜の調査と対処は、一刻の猶予も許されませんぞ」
結依が、少し気まずそうに苦笑いを浮かべた。
「でも、あの『ハッタリ』がなかったら、会合はまとまらなかったよね?」
「その通りです」
ゼファーが落ち着いた声で肯定する。
「結果として、全国家が同じ方向を向いた。判断は間違っていなかったはずです。あとは、吐いた嘘を真実に変える努力をするだけですな」
そこでルビィが、思い出したように顔を上げた。
「恐竜への対処なら、少し希望があります。船に乗る直前、アーク大統領が『我が国の優秀な軍人を派遣する用意がある』と約束してくれたんです」
ゼファーの表情に、微かな安堵が広がった。
「あのアーク大統領が、自ら。……あそこの軍事力は世界屈指。それは心強い」
レオが腕を組み、ゼファーに向き直る。
「それから、ヴェルデ大統領から聞いたんだが……。カイロス王国には、極めて優秀な生物学者の兄弟がいるらしい。恐竜の調査チームに加わるよう、打診できませんか?」
ゼファーは即座に頷いた。
「もちろんです。ワシの方から、正式な協力要請を送っておきましょう」
「更にルナストンからも、優秀な学者とSWAT隊員を派遣します」
船内には、少し遅れて安堵の空気が広がる。
それでも――
ルビィの胸は、落ち着かなかった。
通信機に目をやる。
(早く…直接、伝えたい。会合は成功したって。移住計画が正式に動き出したって)
やがて、自然衛星ルナスが見えてきた。
巨大な岩盤に穿たれた、ルナストン市の入口の前には巨大モコル。
ルビィは、反射的に通信を入れる。
「こちら、ルミナール号――」
……沈黙。
ルビィは小さく呟いた。
「やっぱり、使えない」
結依は眉をひそめる。
「この距離でも? さすがに、それは……」
アストラが冷静に答える。
『恒星活動の影響範囲が、予測以上に広がっている可能性があります』
ルビィの胸が、キュッと締まる。
(間に合って……)
そのとき。地下都市入口の向こうに、人影が見えた。
黒髪。見慣れた、飄々とした立ち姿。
ルビィは目を凝らして呟いた。
「……おばあちゃん?」
その隣に、フェザー。
少し遅れて、サイモンの姿もある。
ゼファーが、ホッと息を吐いた。
「結果を知りたくて、出迎えに来たのだろう」
ルビィは自然と微笑む。
「だよね」
だが――
レオだけは、わずかに苦笑した。
(……ダイヤって、“出迎える”タイプだったか?)
間もなくして、地表では入口の扉の内側で、フェザーが壁際に手を伸ばした。
そこに設置されているのは緊急用注射器。
フェザーは短く息を整えながら言った。
「……よし」
フェザーは迷いなくそれを手に取り、ほどなくして――
入口を塞いでいた、巨大な影が、急速に縮み始めた。
もふ、と音を立てるように。
巨大だったモコルが、いつものサイズへ。
レオは呆れたように言った。
「やっぱり、あいつはモコル目当てか?」
地表が、完全に開く。
アストラが告げる。
『着陸、可能です』
ルミナール号は、静かに降下し無事着陸した。
ルビィは、胸の奥で小さく呟く。
(直接、伝えられる、全部……)
そして、扉の向こうで待つ、あの無邪気な黒髪の天才の顔を思い浮かべた。
船体が地表に触れ、かすかな振動が足の裏に伝わる。
――こうして「覚悟の嘘」は、静かに歴史へと刻まれた。
移住計画が、本格的に動き出した。
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