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☆ワープ理論の壁とサイモンの一言 ②

一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。

完結してる作品なので、完結は必ずします。


「」人のセリフ

()心の声

『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。

 ――そのころ三人は。

◆地下都市・研究室

 テーブルが二つ、距離を空けて向かい合っている。それぞれの中央には、掌ほどの円形フレームのミニチュア・ワープゲートが設置されていた。


 片方が入口、もう片方が出口。

 ダイヤは腕を組み、フェザーは額に手を当て、二人ともテーブルの上を鋭く睨んでいる。


 ダイヤはわずかに顎を引き、実験開始の合図を出すように言った。

「……じゃあ、いくよ。赤い球、投入」

 フェザーは視線を動かさず、細かい調整を確認する。

「角度は? さっきより〇・ニ度内側?」


 ダイヤは軽く頷く。

「うん、それでいい」

 赤いボールが、入口側のゲートへとコロンと転がり入る。


 一瞬。


 ゲートの縁が淡く光り――

 出口側。


 ポンっと転がり出てきたのは、赤い球……ではあるが。


 フェザーは目を細め、違和感に気づいて口を開いた。

「……でかくない?」


 ダイヤは冷静に観察しながら答える。

「でかいね」

 元の三倍ほどのサイズ。

 しかも、表面が微妙にゼリー状に揺れている。


 フェザーは眉を寄せ、過去の結果を思い出す。

「前回は青くなったし、その前は分裂したし……」


 ダイヤは肩の力を抜きながら言う。

「最初よりはマシ。爆発しなくなった」


 二人は同時に息を吐く。


 ダイヤはゲートを見つめたまま、分析を口にする。

「空間の接続が、まだ安定してない」


 フェザーは腕を組み直し、即座に反論する。

「数値は合ってる。理論上は通るはずなのに」


 ダイヤは少しだけ口元を上げる。

「“通る”のと、“無事に通る”は別だからね」


 フェザーは苦笑を浮かべる。

「それを言われると弱い」

 フェザーは長い髪をかき上げ、ゆっくりと椅子に腰を落とした。

 少し天井を見上げてから、ぽつりと呟く。

「……ねえ、ダイヤ。やっぱりさ、ワープ理論が違うんでしょ?」


 ダイヤは即座に頷く。

「うん。はっきり言うと」

 端末を操作し、二つの理論図を空中に投影する。


 ダイヤは片方を指差しながら説明する。

「ルミナスのワープ理論は旧式。これは“通過”させる発想」


 フェザーは図を見ながら補足する。

「空間を押し広げて、引っ張るタイプね」


 ダイヤはそのまま続ける。

「そう。でも、この理論は空間を広げる為、たまに時間にズレが生まれるみたい――」

 指先が、もう一方の図をなぞる。


 ダイヤは少しだけ声を落として言った。

「ルミナールの理論。空間そのものを“同一化”する」

「だから、空間を通る物体に影響がでる」


 フェザーは目を細める。

「……つまり?」


 ダイヤは即答する。

「ルミナス式は不安定、ゲートは作れない」

「でも、ルミナール式の方が、安定しててゲート向き。あとは物体が変形する原因がわかればね」


 フェザーは軽く頷く。

「だよねぇ」

 そのまま天井を仰ぎ、小さく呟く。

「ルミナール専用技術か……」


 そのとき。

 少し離れた作業台から、サイモンの声が飛んでくる。

 サイモンは工具をいじりながら、何気ない調子で言った。

「なあ、前から思ってたんだけどさ」


 ダイヤは顔だけ向ける。

「なに?」


 サイモンは振り返りもせず続ける。

「なんでルミナール号の船体って、ワープ通っても歪まないんだ?」


 フェザーの動きが止まる。

 ダイヤも一瞬、言葉を失う。

 フェザーはゆっくりと顔を上げる。

「……!」

 ダイヤは小さく呟く。

「……確かに」


 フェザーは真剣な表情で言う。

「普通は“削れる”のよ、空間通過って」

 サイモンは肩越しに軽く言う。

「だろ? でもルミナールは、何回通っても平気らしいし」


 フェザーは目を細める。

「……船体に、何か秘密があるんじゃない?」

 その視線がダイヤへ向く。

 ダイヤは即座に答える。

「設計図は全部見た……」

 フェザーは確認するように言う。

「全部?」


 ダイヤは淡々と答える。

「全部。 構造、素材、エネルギー循環…… 特に変なところはなかった」


 サイモンは顎に手を当て、少し考えてから口を開く。

「でもさ」

 一拍置いて続ける。


「ルミナールの外側のコーティング、覚えてる?」


 ダイヤは首を傾げる。

「ん?コーティング?」


 サイモンは思い出すように言う。

「こないだ、たまたま触れちゃってさ」


 フェザーは目を見開く。

「触った!?」


 サイモンはあっさり頷く。

「うん。なんか妙にザラザラしてた」


 ダイヤは眉をひそめる。

「ザラザラ?」


 サイモンは手の感触を思い出しながら言う。

「でも硬い金属じゃない。少し柔らかい感じもあった」


 フェザーとダイヤ。

 二人の思考が同時に止まる。

 そして。

 視線がぶつかる。


 フェザーが低く呟く。

「……設計図に」


 ダイヤも同時に言う。

「……コーティングの記載は、無かった」


 沈黙。


 次の瞬間。

 ダイヤが一歩踏み出す。

「それだ!」

 フェザーも同時に立ち上がる。

「それかも!」

 二人はほぼ同時に叫ぶ。


 フェザーは勢いよく言う。

「船体そのものじゃない! 外側が、空間と干渉してる!」


 ダイヤは続ける。

「空間を“滑らせてる”……だから歪まない!」

 フェザーは拳を握る。

「ゲートも同じ処理ができれば――」

 ダイヤは即答する。

「安定する!」

 二人は顔を見合わせる。


 フェザーが息を整えながら言う。

「ルミナール号は今は隣の惑星……会合の結果より?」

 ダイヤは迷いなく答える。

「正直?」

 フェザーは即座に頷く。

「うん」

 ダイヤは即答する。

「コーティングの方が気になる」

 フェザーは笑う。

「同感」


 後ろで、サイモンが苦笑する。

 サイモンは呆れたように言った。

「会合は失敗しないって信じてるんだよな?」

 ダイヤは迷いなく答える。

「うん。だからこそ」

 フェザーは続ける。

「早く帰ってきてほしい」


 そのとき。

 研究室にアナウンスが響く。

『宇宙船を目視しました。おそらく、ルミナール号です』


 フェザーの目が見開かれる。

「……!」

 ダイヤは一気に表情を輝かせる。

「来た!」

 二人の顔が一瞬で明るくなる。

 フェザーは身を乗り出す。

「ねえ、走っていい?」


 ダイヤは即答する。

「もちろん!」

 二人は同時に研究室を飛び出す。

 少し遅れて、サイモン。

 サイモンは苦笑しながら後を追う。

「結局、会合よりコーティングかよ」


◆地下都市・ゲートエリア

 巨大なモコルが、いつものように入口を陣取っている。


 フェザーは速度を落とさず叫ぶ。

「ごめん、通る!」

 ダイヤも続ける。

「後で撫でるから!」

 巨大モコルの横をすり抜け、

 三人はルミナール号を迎える地表へと、全力で走っていった。


 ――見上げる空の向こう、銀色の船体が陽炎に揺れながらゆっくりと高度を下げてくる。

 会合の結果よりも、二人の天才を虜にしているのは”未知の外壁”だった。


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