☆終わりと始まり
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
◆会合室を出た廊下。
張り詰めていた空気がほどける。
ルビィはその場で立ち止まり、肩の力を抜くように大きく息を吐いた。指先にはまだわずかな震えが残っている。
「終わった……上手く、いったよね?」
ルビィは不安と安堵が混ざった声で呟いた。
レオは壁に軽く背を預け、腕を組みながら静かに頷く。
「とりあえずな」
低く落ち着いた声だった。
結依は天井を見上げ、両手をぐっと伸ばして体をほぐす。
「はぁ〜正直、途中から心臓の音しか聞こえなかった」
そう言って苦笑しながら肩を回した。
ゼファーはその様子を見て、わずかに口元を緩める。
「歴史的会合だ。成功と言っていい」
穏やかだが重みのある声で言った。
その言葉に、ルビィの顔がぱっと明るくなる。
「ダイヤおばあちゃんに、報告しないと」
そう言うと、すぐに通信機を取り出す。
「こちらルミナール号、会合は――」
しかし。
返答がない。
ルビィは一瞬固まり、もう一度送信する。
「……え?」
再送信。
沈黙。
「……あれ? 応答がないというか、無線が……?」
困惑した表情で端末を見つめる。
アストラが静かに歩み寄り、端末を覗き込む。瞳が淡く光り、即座に解析を開始する。
『機器の故障ではありません』
淡々とした声で断言した。
「じゃあ、なに?」
ルビィが顔を上げ、すぐに問い返す。
アストラはゆっくりと視線を上げ、そのまま遠くの恒星へと向ける。
『おそらく、太陽の影響でしょう』
一拍。
『この惑星の恒星は電磁干渉が強く、広域通信が遮断されやすい』
さらに、そのまま恒星を見つめ続ける。
『ここの恒星は、私たちの銀河の恒星とは違います。かなり異質です』
ほんのわずかな沈黙。
『予測してたより時間は少ないかもしれません』
結依がその横顔を見て、少しだけ表情を引き締める。
「それって……かなりマズいってこと?」
慎重に言葉を選びながら問いかけた。
アストラは視線を戻し、静かに答える。
『はい。崩壊プロセスの進行は、想定より早い可能性があります』
レオが目を細め、低く呟く。
「猶予が削られてるってことか……」
場の空気が、わずかに重く沈んだ。
結依は空気を変えるように、ぽんと手を打つ。
「じゃあ、帰って直接報告だね」
明るさを保とうとする声だった。
ルビィは小さく苦笑する。
「うん、その方が早いかも」
結依は視線を逸らし、ばつが悪そうに笑う。
「私さ、会合中ほとんど座ってただけだった気がするんだけど」
ルビィはすぐに首を振る。
「そんなことない」
一歩近づき、まっすぐに言う。
「結依が隣にいるだけで、すごく心強かった」
結依は一瞬きょとんとし、それから照れたように視線を逸らす。
「……そ、そう?」
ゼファーが静かにそのやり取りを見て、わずかに笑みを浮かべる。
「最後のあの説得――
まるで、ダイヤさんが乗り移ったかのようでした」
ルビィは少し困ったように頭を掻く。
「言われました。出発前に……」
そのとき。
背後から穏やかな声がかかる。
「見事だったよ」
全員が振り向く。
ノヴァ連邦大統領が、静かに歩み寄ってきていた。
「恐怖と利害が絡む場で、あれほど明確に“道”を示せる人間は、そう多くない」
その視線がゼファーへ向く。
「ルナストンの判断は、正しかったようだ」
ゼファーは軽く頭を下げる。
「感謝する」
そこへ――
荒い足音が近づく。
アーク帝国大統領が、険しい表情のまま歩み寄ってきた。
一瞬、空気が張り詰める。
だが。
「……謝罪する」
短く、だがはっきりとした声だった。
「我々は、恐怖に飲み込まれていた。地下都市に対する武力行使も、間違いだった」
そう言って、ゼファーに向かって深く頭を下げる。
そして、ルビィへと向き直る。
「あなたの言葉がなければ、この会合は破綻していた。感謝する、船長」
ルビィは驚きつつも、すぐに姿勢を正し、静かに頭を下げた。
「こちらこそ」
そのやり取りを見届けた後、レオが一歩前に出る。
ノヴァ連邦大統領へ視線を向ける。
「一つ聞きたい。この惑星で、科学力が最も進んでいる国は?」
ノヴァ大統領は迷いなく答える。
「ヴェルデ自治共和国だろう」
わずかに顎を引き、続ける。
「自然循環、地下環境、生命工学――
あなたたちが求めている“現実的な科学”は、あそこが一番だ」
「我が連邦の隣国だ。協力体制も取りやすい」
レオは短く頷く。
「では、ワープゲートはヴェルデに作る」
その一言で、空気が変わる。
ノヴァ大統領はすぐに振り返り、側近に目配せする。
「ヴェルデ大統領を呼んで」
数秒後。
穏やかな表情のヴェルデ大統領が、静かに歩み寄ってくる。
「お呼びでしょうか」
落ち着いた声だった。
ノヴァ大統領が軽く頷き、レオを示す。
「彼と話してほしい。今回の計画の中核になる」
ヴェルデ大統領はレオへ視線を向ける。
レオは一歩前に出て、淡々と告げる。
「ワープゲートの建設拠点を、あなたの国に置きます」
わずかに間を置く。
「理由は単純です。環境制御と生命維持技術が必要になります」
一切の迷いがない声。
ノヴァ大統領が言葉を重ねる。
「それを最も高いレベルで扱えるのが、ヴェルデだろ」
ヴェルデ大統領は静かに目を閉じ、一瞬だけ思考する。
そして、ゆっくりと頷いた。
「……わかりました」
目を開き、まっすぐレオを見る。
「国家総力を挙げて、協力しましょう」
ノヴァ大統領も力強く頷く。
レオは最後に問いを投げる。
「この惑星圏の代表は、誰が務める?」
視線は、アーク帝国大統領とノヴァ連邦大統領へ。
二人は一瞬だけ顔を見合わせる。
そして。
ノヴァ大統領が口を開く。
「今後は、共同代表制が妥当だろう」
アーク大統領も静かに頷く。
「同意する。過去の失策を繰り返さないためにも」
レオは淡々と告げる。
「決まりだな」
――こうして。
惑星を救うための、本当の作業が始まった。
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