☆ルビィの輝き、会合―終幕へ
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
やがて――
張り詰めていた空気の中、小国側の一人がぽつりと声を漏らす。指先を震わせながら、ゆっくりと顔を上げた。
「太陽が消えるなら」
別の代表が、かすかに頷きながら続ける。
「住める場所があるだけで……」
その言葉をきっかけに、賛同の声が、静かに、しかし確実に増えていく。
だが、ノヴァ連邦の大統領だけは、沈黙を守っていた。顎に手を当て、視線を落としたまま、深く思考に沈んでいる。
その空気を壊すように、アーク帝国大統領が苛立ちを隠さず吐き捨てる。
「話がうますぎる」
椅子に体重を預けながら、鋭く睨む。
「すべてハッタリだ。脅して従わせるつもりだろう」
その言葉が、重く会合室に落ちた。
空気が止まる。
誰も動かない。誰も口を開かない。
重たい沈黙の中――
ノヴァ連邦大統領が、ゆっくりと顔を上げた。
「……実は、我が国の科学班からも報告が上がっている」
静かな声だったが、その一言で全員の視線が集まる。
彼女は、順に一人ひとりを見渡す。
「太陽活動の変調により、この惑星が受けるダメージは、これまでの想定を大きく上回る可能性がある、と」
小国側がざわめく。
その中の二つの国の代表が、互いに顔を見合わせ、小さく頷き合う。
「我々も…同様の警告を受けています」
会合室の空気が、はっきりと変わった。
ノヴァ連邦大統領は、ゆっくりと息を吐く。
「……腹を割って話そう」
一瞬の間。
「我がノヴァ連邦と――そこの二つの小国は」
そして、静かにゼファーへと視線を向ける。
「ゼファー、あなたに直接連絡を取り、三カ国、総勢四〇〇〇万人のみを移住させる計画を、すでに水面下で進めていた」
小国側から、動揺が一気に広がる。
「人選も……進めていたのか?」
誰かの声が震える。
完全な沈黙。
次の瞬間――
机を叩く音が響いた。
「そんな取引をしていたのか!」
アーク帝国大統領が立ち上がり、怒りを露わにする。
「選ばれる命と、切り捨てられる命を、勝手に決めていたと!?」
ゼファーは微動だにせず、その視線を真正面から受け止める。
「では、聞こう」
低く、重い声。
「なぜ、あなた方は、我々の地下都市を武力で奪おうとした?」
アーク大統領は言葉に詰まる。
視線を逸らし、歯を食いしばる。
やがて、押し出すように言葉を吐いた。
「……奪い取り、我が帝国民を移住させるためだ」
会合室が、凍りつく。
「我々は……この惑星が、早くて五年以内に大規模な自然災害に見舞われる可能性があると、学者達から報告を受けていた」
そして、さらに低い声。
「だから…手段を選ばなかった」
ノヴァ連邦大統領が、小さく呟く。
「……自然災害や異常気象どころではない」
ゆっくりと視線が動き、ルビィたちへ向く。
「太陽消滅が事実なら――」
一拍。
「我々は、異銀河人に従わざるを得ない、ということだな」
その瞬間だった。
椅子が音を立てて引かれる。
ルビィが、立ち上がった。
緊張で固かったはずの表情は、いつの間にか――ダイヤそっくりの鋭さを帯びていた。
「従う、じゃない」
静かだが、よく通る声。
全員の視線を受けながら、一歩踏み出す。
「生き延びるために、選択するんです」
その場の空気を、まっすぐに切り裂く。
「確かに、我々は異銀河から来た。でも、あなた方を支配しに来たわけじゃない」
さらに一歩、前へ。
「見捨てる計画も、選別も、武力による強奪も―― どれも“恐怖”が生んだ案です」
胸に手を当てる。
「私たちは、全員で移る道を提示した」
「困難だろうが、時間がなかろうが、それでも―― “やる”と決めた」
一瞬だけ、ゼファーへ視線が向く。
そして、再び全体へ。
「ルナストンも、私たちも、そしてあなた方も、生きたいなら、背中を押し合うしかない」
沈黙。
やがて――
小国の大統領たちが、ゆっくりと頷き始める。
ノヴァ連邦大統領が、静かに口を開く。
「移住計画を、全国家共同事業として進めましょう」
会合室の全員を、ゆっくりと見渡す。
「これを最終判断とします」
わずかな間。
「異論がある国はいますか?」
重い沈黙が、再び会合室を包む。
その中で――
アーク帝国大統領は、歯を噛みしめたまま俯いている。
だが、何も言わない。
誰も、口を開かなかった。
ノヴァ大統領は、静かに頷く。
「……異論は無いようですね」
そして、静かに告げる。
「それでは、この会合をここで終了します」
椅子がわずかに動く音だけが、室内に響いた。
こうして――
惑星史上最大の決断は、
一人の船長の言葉によって、動き出した。
会合は、成功という形で幕を閉じた。
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