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☆三つの太陽と恐竜の惑星

一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。

完結してる作品なので、完結は必ずします。


「」人のセリフ

()心の声

『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。

◆ルミナール・合同研究施設

 会合までの五日間。

 その幕開けは、実にこのメンバーらしい形で始まった。


 実験初日――

 研究施設の中央。巨大な空間のど真ん中に、ミニチュアサイズのワープゲート試作機が設置されている。

 その周囲には、配線、エネルギー制御装置、そして明らかに安全性を度外視した実験機材が無造作に並んでいた。


 フェザーは装置を覗き込み、赤い瞳を細めながら、ぽつりと呟いた。

「これ、たぶん不安定かも」

 その言葉の直後だった。

 ミニチュアゲートが淡く光り


 ――次の瞬間。

 爆発。


 空気が弾け飛び、衝撃波が研究室全体を叩きつける。

 壁が歪み、床の固定ボルトが外れ、実験台が宙を舞う。


 サイモンの巨体が軽々と吹き飛ばされ、天井に叩きつけられた。

 鈍い音と共に、しばらく張り付いたまま静止する。


 一方でアストラは――

 腕が片方、壁に突き刺さり。

 脚は実験槽の中に沈み。

 胴体だけが床に転がっていた。


 煙が立ち込める中。

 その中心から、ゆっくりと人影が現れる。

 フェザーだった。

 煤一つ付いていない。

 むしろ楽しそうに、満面の笑みを浮かべている。

「ほら見て。やっぱり不安定だったでしょ?」


 瓦礫の中から、サイモンが顔を出す。髪に粉塵をかぶりながら、目を見開いた。

「なら、やるなよ!!」

 その叫びをよそに。

 アストラは無言で自分の腕を拾い上げ、関節部を確認しながら接続を始めていた。


「失敗じゃないわ。反応が起きた。それだけで前進よ」

 フェザーは当然のように言い切る。


 そのすぐ横。

 爆心地のすぐ隣で――ダイヤがしゃがみ込んでいた。

 ダイヤは立ち上がり、目を輝かせて笑顔で言う。

「うん。今の爆発、すごくヒント多い」

 楽しそうに、まるで宝物でも見つけたかのように。


 その様子を見て、フェザーは確信した。

 ――同類だ。


 初日から実験は止まらなかった。ミニチュアゲートは何度も壊れ、何度も作り直された。


 アストラは何度か分解され、サイモンは何度か壁に埋まった。

それでも、理論は少しずつ形になっていく。



 実験二日目――

 爆発の痕が残る研究室で、再び調整作業が続いている。


 ふと、フェザーが手を止めた。

「向こうの会合、ルビィって子がリーダーなんでしょ?」

 軽い調子だったが、その視線は鋭い。

 賢さも理解力も十分。

それはフェザーにも分かっていた。

「でも、あの子で大丈夫?」


 ダイヤは迷いなく答えた。

「大丈夫。私の孫だし」

 フェザーの動きが止まる。

「……孫?」

 ゆっくりと、ダイヤの顔を見る。

 そしてルビィの方へ視線を移し、年齢差を頭の中で計算する。

 数秒。

 沈黙のあと、口元が歪んだ。

「ダイヤ、あなたも老化遅らせる薬か何かしてるの?」


 ダイヤは手を横に振りながら笑って答える。

「いやいや、私は何もしてない。私は一七歳。ルビィは一九歳だよ」


 フェザーは不思議そうな顔をし笑った。

「祖母が歳下って……変わった種族ね」


 ダイヤは肩の力を抜いて笑った。

「ま〜ね〜」

 軽い返事だった。


 実験三日目――

 仮設の机。浮かぶホログラム。床に転がる工具。

 その雑然とした空間の中央で、ダイヤは床に座り込み、小さな惑星モデルを指先でくるくると回していた。


 フェザーは少し離れた位置で腕を組み、赤い瞳でその様子をじっと見下ろしている。

 やがて口元を歪め、面白そうに声をかけた。

「ねぇ、ちょっといい?」

 ニヤッと笑いながら、視線を外さず続ける。

「ニ一億人、引っ越すって言ってたけどさ…… “どこに”行くの?」


 一瞬、空気が止まる。

 レオがわずかに顔を上げ、思い出したように小さく漏らす。

「……あ」


 結依もハッとしたように瞬きをする。

「……そういえば」


 サイモンが頭をかきながら呆れた声を出す。

「聞いてねぇな、それ」


 ルビィは戸惑いを隠せないまま、小さく手を上げるようにして言った。

「え、目的地……聞いてません……」


 ゆっくりと、全員の視線が一人に集まる。ダイヤはその中心で、きょとんとした顔のまま瞬きを一つ。

「え? 言ってなかったっけ?」


 間髪入れず、全員の声が重なる。

「「「言ってない」」」


 フェザーが堪えきれず吹き出した。

「あははは! さすが救世主候補、説明省略が大胆すぎるわ」


 ダイヤはまったく悪びれる様子もなく、ひょいと立ち上がる。

「じゃ、今から話すね」

 軽く手を振ると、空間にホログラムが展開される。


 そこに現れたのは――巨大な惑星。

 ダイヤはその映像を指差しながら、楽しそうに語り始めた。

「この惑星、実はルミナス号が最初に行った探索惑星なんだ」


 ルビィが目を丸くし、思わず聞き返す。

「最初、ですか?」


 ダイヤはニヤッと笑い、少しだけ身を乗り出した。

「うん。この惑星に着いた瞬間、思ったよ」


 一拍置いて、楽しげに言い切る。

「――あ、ここ、地球の“ジュラ紀”だって」

「探索した時の映像がある」


 そして、ホログラムが展開する。 そこに映し出されたのは――巨大な惑星。


 そして、巨大な恐竜の影。


 結依の声が、わずかに引きつる。

「……恐竜?」


 サイモンが懐かしむように腕を組む。

「あの惑星か。恐竜……大量にいたな」


 レオも淡々と補足する。

「しかも、総じて気性が荒い」


 ダイヤは楽しそうに指を三本立てた。

「ちなみに私は三回、食べられかけた」


 フェザーの表情が止まる。

「……は?」


 サイモンが即座にうなずく。

「マジで飲み込まれる寸前だった」


 レオが肩越しに言葉を重ねる。

「毎回、引きずり戻した」


 結依が呆れたように息を吐く。

「……それ普通に死にかけてるよね?」


 フェザーは腹を抱えて笑い出した。

「最高ね、あんた!」


 ダイヤはそのままホログラムを拡大する。

「惑星サイズは惑星アークスの約一・五倍。海が六割。季節はほぼ無いけど、天候はある」


 ルビィが真面目な表情で問いかける。

「気温は?」

 ダイヤはさらりと答える。

「だいたい三〇℃前後。ずーっと夏」


 結依がさらに続ける。

「夜は?」

 ダイヤは満面の笑みを浮かべた。

「無い」

 フェザーが眉をひそめる。

「……無い?」


 ダイヤは楽しそうに指で空をなぞる。

「恒星が一つ、大きい衛星が二つ薄く熱や光を放つから、太陽が三つあるように見える」


 三つの太陽がホログラムに浮かび上がる。


 レオが短く言い切る。

「常に昼だ」

 結依が苦笑する。

「それ、睡眠どうするの?」

 サイモンはあっさりと答えた。

「俺は余裕だったな」

 ルビィは少し困ったように微笑む。

「私は、遮光必須ですね」


 フェザーの表情がふっと変わる。

 楽しげな空気を一瞬で切り替え、核心を突く。

「で? その惑星に――」

 一拍。


「“人類”は、住めるの?」


 ダイヤは迷いなく答えた。

「住める」

 レオが即座に補足する。

「大気組成、重力、放射線、全部問題なし」

 結依が少しだけ声を落とす。

「問題は……」

 サイモンが肩を回しながら言う。

「恐竜だな」

 ダイヤが元気よく頷く。

「うん。超いるっ」

 フェザーが口元を歪める。

「つまり?」


 ダイヤはあっさりと言い切った。

「人が住む前に、生態系を“調整”する必要がある」


 一瞬、沈黙。


 ルビィが静かに呟く。

「それって」

 フェザーが楽しそうに笑う。

「えげつないわね」


 ダイヤも同じ温度で笑った。

「でしょ?」

 しかし、その目は本気だった。

「惑星は少し遠いから、ワープゲートが必要だし、一気にじゃなく、段階的に移住させる」


 レオが頷く。

「都市ごと、生活圏ごと運ぶ前提だな」

 結依が息を呑む。

「ニ一億人分」

 サイモンが苦笑する。

「気が遠くなるな」


 フェザーはダイヤをじっと見つめたあと、ゆっくりと笑った。

「恐竜惑星に人類移住。太陽が三つで夜無し」

 一拍置いて。


「正気じゃない」

 短い沈黙のあと――

「最高じゃない」


 ダイヤは満足げに笑った。

「でしょ?」


 レオが視線をホログラムに戻しながら呟く。

「やっと本題に入れそうだな」


 アストラの声が静かに響く。

『ワープゲート理論の修正案を提示します』


 サイモンはその場に腰を下ろしながら手を振った。

「よし、俺は後で聞く」


 ルビィは圧倒されながらも、前を見据える。

「でも」

 一呼吸置いて。

「行き先が“ある”のは、希望ですね」


 ダイヤの目が一瞬だけ真剣になる。

「うん。だから助ける」

 そして、すぐにいつもの調子に戻る。

「さぁ、フェザー。恐竜より危険な実験、始めよっか」


 フェザーは口角を吊り上げた。

「望むところよ!」


 ――研究室に、笑いと不穏な未来が同時に満ちていった。


 実験四日目――

 研究室の扉が静かに開く。

 アストラが、小さなリング状の装置をいくつも持って入ってきた。

 手を軽く動かすと、それらがふわりと宙に浮かび上がる。

『七カ国との会合に向けて、新しい翻訳デバイスを三つ構築しました』


 ルビィが目を輝かせて身を乗り出す。

「ほぼ、って?」


 アストラは淡々と続ける。

『思考の切り替え速度と同等です。会話のストレスは発生しません』


 結依が少し驚いたように言う。

「……つまり、向こうが話し終わる前に理解できるってこと?」


『はい』


 フェザーが感心したように口笛を吹いた。

「はぁ……相変わらず気軽に狂ったこと言うわね」


 アストラは気にする様子もなく説明を続ける。

『このデバイスは、私と常時リンクしています。なので私が習得した言語は、即座に反映されます』


 ルビィが納得したように頷く。

「アストラが言語解析すれば、みんな使えるってことだね」


 レオが小さく息を吐く。

「便利すぎだろ」


 結依はリングを三つ受け取り、その一つをルビィに差し出す。

「ルビィ、これ首にかけて」


 ルビィは素直に受け取り、首にかけた。

 次の瞬間、ルビィは少し驚いた表情になる。


 フェザーとダイヤのルナス語の会話が自分たちの言語で聞こえてきた。


 結依が嬉しそうに続ける。

「うわぁ凄い、相手の言葉を“音”じゃなくて、意味のまま受け取る感じになるみたい」


 ルビィはゆっくりと頷いた。

「……なんだか、もう理解できる前提で聞いてる感じ」


 結依も同意する。

「でしょ。思考が先に来る」


 ルビィは小さく息を吐いた。

「……会合、少し怖くなってきたよ」


 結依は優しく笑った。

 残った一つを手に取り、レオへ差し出す。

「はい、レオさんも」


 レオは一瞬だけ視線を外す。

「……いや、いい」

 全員の視線が集まる。


 レオは淡々と続けた。

「日常会話程度なら、もう直接理解できる」


 ダイヤが楽しそうに笑う。

「さすが」


 サイモンが茶化す。

「天才発言出たな」


 短い沈黙のあと。

 レオは小さく息を吐いた。

「……ただ」

 一拍。


「大事な会合だ。誤解が一つでも出るのはまずい」

 結依の手からリングを取り、そのまま首にかける。

「つけとく」


 ダイヤが満足そうに笑う。

「素直でよろしい」


 レオは静かに返す。

「合理的なだけだ」


 その様子を見ていたフェザーが、腕を組んだまま口を開く。

「ねぇ」

 全員が視線を向ける。


「このアンドロイド、“作られた思考”のくせに、仕事の切り出し方が完全に自律型」


 アストラが首を傾げる。

『問題がありますか?』


 フェザーは楽しそうに笑った。

「問題? 最高よ」

 そのままレオへ視線を移す。

「で、あんたは… 自分の能力を過信しつつ、ちゃんと安全策も取る」


 一拍置いて、軽く笑う。

「嫌いじゃないわ」


 レオはわずかに目を細める。

「光栄だな」


 サイモンがニヤニヤしながら言う。

「珍しくレオが素直だな」


 ダイヤがすかさず乗る。

「レオくん素直記念日だね」


 フェザーはくすっと笑った。


 アストラは最後に言った。

『これで、言葉の壁は存在しません』


 ルビィはゆっくりと頷く。

「うん。あとは人類を、どうやって無事に移住させるかだね」


 ――静かに、危険な歯車は、確実に噛み合い始めていた。

 こうして、会合へ向かう者と、研究室で未来を壊し続ける者に分かれ――

 運命の会合の日が、明日と迫っていた。


私からのお願いです。

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