☆分岐する役割と狂気の研究室
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
◆地下都市・合同研究施設
ダイヤが、研究施設の提供をゼファー大統領に依頼し、ほとんど間を置かずに、正式決定として承認された。
ルナストン市でも最大級の研究施設。天井は高く、視界の奥でエネルギーラインが脈動している。
都市中枢と直結した、国家級プロジェクト専用の空間。
――だが今は。
「国家どころの話ではない」
そう判断したのは、大統領ゼファー自身だった。
同時に、新たな連絡が入る。
惑星側七カ国との正式会合――五日後。
場所は、惑星アークス。
その裏には、単なる会談以上の意味があった。
文明と政治体制、その実態を直接見極める意図。
選出された参加者は、次の通りだった。
ルビィ(ルミナール号船長)
結依
アストラ
レオ
大統領ゼファー
大統領補佐官二名
――そして。
そこに、ダイヤの名前はなかった。
理由は明確だった。
たった一つ。
ワープ理論は、“机上”では完成しない。
壊し、試し、失敗し、また壊す。
その過程を経なければ、決して辿り着けない領域。
地下都市の研究施設には、フェザーが持ち込んだ危険極まりない化学設備と、ダイヤの頭の中にしか存在しない理論を形にするための空間があった。
サイモンも、当然のように研究への同行を申し出た。
理由は――
なんか面白そうだから。
こうしてダイヤは、サイモンとフェザーと共に、ミニチュアによる模擬ワープ実験を開始する。
――準備の合間。
機材の配置を確認していたダイヤが、ふと思い出したように振り返る。
「ルビィ、いくつ?」
あまりにも唐突な質問。
「一九歳」
短く答える。
その瞬間。
ダイヤは、ほんの少し目を丸くして――
くすっと笑った。
「へえ。私一七歳なんだけど。おばあちゃんなのに、年下だね」
冗談とも、本気ともつかない声音。
ルビィは、一瞬だけ言葉を失った。胸の奥に、何かが引っかかる。
その空気を流すように、ダイヤはすぐに続ける。
「ルミナール号の船長なんだから、ちゃんと会合任務、まっとうしてね」
軽い口調。
だが――その一言は、重かった。
ルビィは小さく頷く。
胸の奥が、ざわつく。
それでも、逃げることはできない。
その様子を見ていたゼファー大統領は、静かに口を開いた。
低く、重みのある声。
「……ワシも最初は、迷いがあった」
全員の視線が集まる。
「ダイヤ殿ほどの存在を、会合に出さぬという判断にな」
わずかに目を細める。
「だが――」
視線が、まっすぐルビィへ向けられる。
「ルビィ・デズモンド殿。あなたは、ルミナール号の船長だ」
一歩、ゆっくりと近づく。
「肩書きではない。役割でもない」
「この場において、交渉の場に立つ“責任者”は、あなたしかおらん」
「ワシは、その判断を尊重する」
重い言葉だった。
だが――否定ではない。信頼。
ルビィは、ほんのわずかに息を吸い込む。
「……はい」
その返事は、小さかったが。
確かに、芯があった。
◆研究施設・主実験区画
大型装置の光が、規則的に明滅する。
ダイヤとルビィがデータを確認していると――
無音で、扉が開いた。
フェザーが、いつの間にか入ってきていた。
足音もなく、背後に立つ。
「ねえ」
突然の声に、ルビィの肩がわずかに揺れる。
「ひゃっ!?」
振り返る。
フェザーは、にやりと笑っていた。
「いい反応。実験台向きね」
「向いてません!」
ルビィは苦笑いし、即答する。
ダイヤは、そのやり取りを横目にしながら、じっとフェザーの顔を見ていた。
――数秒。観察するように。
そして、首をかしげる。
「ねえ、フェザーさん」
「なに?」
「その目さ。なんで黒くて、瞳が赤いの?」
ルビィも、はっとする。
確かに――
他の地下都市の人間とは、明らかに違う。
フェザーは一瞬、黙ったあと。
あっさり答えた。
「副作用」
「副作用?」
ダイヤが身を乗り出す。
フェザーは静かな声で話す。
「不老の薬、作ろうとしたの」
「さらっとヤバいこと言ってるな」
サイモンが横から口を挟む。
フェザーは気にせず続ける。
「細胞の劣化を止めるのは無理だった。でもね」
指先で、自分の頬を軽く叩く。
「進行を遅らせることには成功した」
ルビィが、思わず聞き返す。
「どれくらいですか……?」
フェザーはニヤッとする。
「七年で一歳くらい」
「……え?」
ルビィが目を丸くして驚く。
空気が止まる。
「毎日飲まないとダメだけどね。やめたら一気に老化する」
フェザーは軽く言う。
ダイヤの目が、完全に研究者のそれになる。
「いつから?」
「二三歳の時」
「今は?」
「三八」
フェザーは、にやっと笑った。
「見た目は二五くらいでしょ?」
ダイヤ、じっと見つめる。
「……すごいね」
「でしょ?」
フェザーは誇らしげに胸を張る。
ルビィは、少しだけ引いた表情で呟く。
「すごいけど……やり方が怖いです」
「安心して」
フェザーが、くすっと笑う。
「他の人間にはまだ試してないから」
「まだって言った!?」
サイモンが即ツッコミを入れる。
ダイヤは、なぜか楽しそうに笑っていた。
「いいなぁ、その発想。好き」
「でしょ?」
フェザーも笑う。
完全に意気投合している。
ルビィは、その光景を見ながら思う。
(……やっぱり、この二人は危険だ)
けれど――
その危険が。
今は、必要だった。
こうして
交渉に向かう者と、研究に残る者。役割は分かれた。
だが――
目指す未来は、同じだった。
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