☆ワープ理論の壁とサイモンの一言 ①
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
◆ルミナール・戦術解析室
立体ホログラムが、静かな空間いっぱいに広がっていた。
宙に浮かぶのは、二つの巨大な円環――
ワープゲートA/ゲートB。
その間には、確かに“何か”が存在しているはずなのに、視認することはできない。
見えない領域が、かえって不気味さを際立たせていた。
ダイヤはその光景を見上げながら、腕を組み、ふと口を開いた。
「ねえ、ルビィ。結依。あんたたち、科学得意なんでしょ?」
あまりにも唐突な問い。
ルビィは一瞬だけ目を瞬かせ、戸惑いながらも答える。
「え……一応」
結依は背筋を伸ばしながら、少しだけ言いにくそうに続けた。
「星間探索士官学校では… 科学はルビィが一位で私が二位でした」
その瞬間、空気がぴたりと止まる。
サイモンが、ゆっくりと振り向いた。
「…上位すぎない?」
ダイヤは口元をわずかに緩め、興味深そうに目を細める。
「ふーん」
そして、どこか楽しげに続けた。
「じゃあ、大丈夫だね。この先、私とレオとサイモンと、それからアンドロイドの会話について来れないと困るから」
軽く言われたその一言に、ルビィと結依の背筋に冷たいものが走る。
(正直、心配……)
(この人たち、思考速度がおかしい……)
言葉には出さず、ただ小さく息を呑んだ。
その空気を切り裂くように、レオが即座に本題へ入る。
「ゲート間の“空間”が問題だ」
ホログラムを指で操作しながら、淡々と続ける。
「単なる距離ゼロの折り畳みじゃない。情報保存領域が発生する」
『はい。現在の想定では、ゲート間は“半位相空間”になります』
アストラの声と同時に、ホログラムがわずかに歪んだ。
結依が、その異様な空間を見つめながら問いかける。
「そこに、人間は存在できるの?」
ダイヤは間髪入れずに答えた。
「たぶん、できない」
即答。
ルビィが思わず眉をひそめる。
「たぶんって……」
ダイヤは軽く視線を上げる。
「“存在”としては無理。でも、“状態”ならいけるかも」
――一時間後
床にどさりと座り込んだサイモンが、頭をかきながら顔を上げる。
「どう俺の案は?」
ダイヤは即座に首を横に振る。
「再構築時に神経信号がズレる」
『補足します。記憶欠損、人格の断絶が起こります』
アストラの冷静な補足が追い打ちをかける。
結依が顔をしかめた。
「……ダメじゃん」
ルビィも小さく頷く。
「うん、ダメだね」
――三時間後
ホログラムには、赤い警告表示が次々と増えていく。
ルビィは解析結果を睨みながら、低く呟いた。
「ゲート間で時間の流れが不均一だと…… 細胞分裂がバラバラになる」
レオが腕を組んだまま、短く答える。
「……肉体年齢がズレるな」
サイモンが半分冗談のように口を挟む。
「赤ちゃんになったり?」
ダイヤはあっさりと返した。
「逆に一気に老化もあるね」
結依の顔色が変わる。
「最悪…」
『失敗確率、九二%』
アストラの無機質な声が、重く響いた。
重い沈黙が落ちる。
――七時間後
誰も喋らない。ホログラムだけが、静かに回転を続けている。
ルビィは額に手を当て、視線を落とした。
「……無理、なのかな」
結依もまた、俯いたまま言葉を失っている。
ダイヤは珍しく口を閉ざし、宙を見つめていた。
(ダメだなぁ……)
(理屈は見えるのに、道がない)
思考だけが、静かに巡る。
そのときだった。
サイモンがぽつりと口を開く。
「あのさ」
全員の視線が、一斉に向いた。
「地下都市の人たちって、化学すごいんでしょ?」
一瞬の間。
そして続ける。
「化学の第一人者とかいるなら、“変な空間”の扱い、得意な人いるんじゃない?」
再び、静寂。
『その可能性は、高いです』
アストラが即座に反応する。
その言葉に、全員の視線が集まった。
『地下都市の化学は、エネルギー変換・空間安定分野において、我々より進んでいる箇所が複数ありました』
レオがゆっくりと問い返す。
「全体の化学力では、こっちが上でも?」
『はい。ですが“局所的天才”の密度は、ルナストン市の方が高い』
その言葉を聞いた瞬間。
ダイヤの目が、ぱっと光を帯びた。
「いるね、絶対」
勢いよく立ち上がる。
「こういうの、世界に数人しか理解できないタイプのやつ」
ルビィが、少し前のめりになりながら問いかける。
「誰か紹介してもらいます?」
自然と、全員の視線がダイヤへ集まる。
ダイヤは、その期待を受け止めるように――
ニッコリと笑った。
「決まってるじゃん」
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