☆ルビィの葛藤とダイヤの閃き
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
◆ルミナール・居住区ラウンジ
レオはソファに深く沈み込んでいた。腕を組んだまま、規則正しい寝息を立てている。昨夜の代償だ。
その少し離れた場所で――
ルビィは、マグカップを両手で包み込み、視線を落としたまま動かなかった。
結依とサイモンが、自然とそちらに目を向ける。
やがて、ぽつりと声が落ちる。
「……ねえ」
その声は、これまで聞いたことがないほど弱かった。
「私、船長なんだよね。この船の……リーダー」
サイモンは一瞬だけ眉を上げるが、すぐに普段通りの調子で返す。
「そうだけど?」
ルビィは、わずかに口元を歪めた。笑っているのに、どこか苦い。
「でもさ。ダイヤさんが前に出ると……何も言えなくなる」
結依は何も言わず、ただ真っ直ぐにルビィを見ている。
ルビィの指先に、少しずつ力がこもる。
「判断も、決断も、全部正しい。迷いがない。しかも……楽しそうにやる」
カップを握る指に、白さが滲む。
「私は“役割”として船長をやってるだけで……あの人は、“存在”で場を支配する」
サイモンの表情が、少しだけ引き締まる。
「比較する相手が悪い」
ルビィは、小さく息を吐いた。
「わかってるよ。祖母だもん。血の繋がりも、歴史も……全部」
サイモンは視線を少し外し、ゆっくりと言葉を続ける。
「……船長とか関係なくさ」
「普通に、ルビィちゃんもすごいと思うけど」
結依が、静かに口を開いた。
「でも、ルビィがいなきゃ、この船はここまで来てない」
ルビィの目が、はっとして結依に向く。
結依は続ける。
「ダイヤさんは“答え”を出す人。あなたは“守る”人」
一拍の間。
「役割が違うだけ」
ルビィはしばらく黙ったまま、やがて小さく息を吐いた。胸の奥に溜まっていたものが、ほんの少しだけほどける。
そのときだった。
ワープシステム区画の方から、軽やかな足音が近づいてくる。
モコルを抱えたダイヤとアストラが、ラウンジに姿を現した。
空気などお構いなしに、ダイヤの明るい声が響く。
「ねえねえ」
その一言で、場の温度が一気に変わる。
「ニ一億人、どうやって運ぶと思う?」
サイモンが思わず顔をしかめる。
「急だな!」
ダイヤはモコルの体勢を直しながら、あっさりと返す。
「急じゃないよ。考えなきゃ、もう時間ない」
くるくると指を回しながら、楽しそうに続ける。
「ルビィの時代でも、物資とか船のワープは安定してるでしょ?」
ルビィは一瞬だけ考え、ゆっくりと頷く。
「……うん。非生体なら成功率は高い」
ダイヤの視線が、鋭くなる。
「生身は?」
ルビィは言葉を選ぶように、わずかに間を置いた。
「母……サファイアが、何度か成功させてる。でも――」
そして、はっきりと告げる。
「一度に大量は、無理。危険すぎる」
結依が一歩だけ身を乗り出す。
「何が起きるの?」
ルビィは視線を落とし、静かに答えた。
「生体のワープは、“情報”として分解して再構築する」
サイモンが目を細める。
「……要するに、一回バラす?」
ルビィは、苦い顔で答える。
「そう。人数が増えれば増えるほど――個体情報が干渉する」
ダイヤが小さく呟く。
「上書き、混線、欠損……」
ルビィが続ける。
「最悪、人格崩壊。肉体は無事でも、中身が壊れる」
重たい沈黙が落ちる。
サイモンがぽつりと漏らした。
「……それは、ちょっと嫌だな」
ダイヤは顎に指を当て、少しだけ考え込む。そして、ふっと顔を上げた。
「じゃあさ、“多数での分解”がダメなら、個々の分解を個別にすればいい?」
ルビィが顔を上げる。
「……個別に?」
「それだけじゃない」
ダイヤの目が、楽しげに輝く。
「ワープってさ、宇宙座標だけ指定して飛ばしてるでしょ?」
『はい。現在の主流理論です』
アストラが即座に答える。
「それがダメなんだと思う」
全員の視線が、ダイヤに集まる。
「“どこへ行くか”だけじゃ足りない」
サイモンが腕を組み直す。
「……何がいる?」
ダイヤは迷いなく言い切った。
「“行く場所”そのもの」
『着地点の固定化?』
アストラが即応する。
「そう!」
ダイヤはパチンと指を鳴らす。
「スタート地点と、着地点の両方に“ワープ専用構造体”を作る」
結依が目を細める。
「ゲート?」
「うん、ほぼそれ」
ダイヤは、何もない空間に指で図を描くように動かしながら続ける。
「生体情報を、一回分解にするんじゃなくて、道を作ってそこを個別情報のままで歩かせる感じ」
アストラが即座に反応する。
『理論上は、可能です』
全員が息を呑む。
『ただし』
その視線がダイヤに向く。
『大規模実験が必要です。前例は、存在しません』
ダイヤは一切迷わなかった。
「前例は、今から作るんでしょ?」
アストラはわずかに間を置き、慎重に答えた。
『……成功すれば、一度に数千万単位の移送も、視野に入ります』
サイモンが低く呟く。
「ニ一億……現実味出てきたな」
そのときだった。
ソファの方から、低い声が響く。
「待て……」
全員が振り向く。
レオが目元を押さえながら、ゆっくりと体を起こしていた。
「今の話……夢の中でも聞こえてた」
まだ眠気を残したまま、それでも口元にはわずかな笑み。
「……面白すぎるだろ」
ダイヤが楽しそうに笑う。
「起きた?」
「寝てられるか」
レオのその一言で――
再び、空気が動き始めた。
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