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☆半世紀分の科学(後編)

一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。

完結してる作品なので、完結は必ずします。


「」人のセリフ

()心の声

『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。


楽しんでもらえると嬉しいです。


 ――二時間後

◆ルミナール中央解析室


 データの光が静かに流れる中、ダイヤは端末を操作していた。

 ふと手を止める。

「ねぇ、ルビィ」


 軽い口調だが、その目は完全に研究者だった。

「このルミナール号、誰が作ったの?」

 端末をくるりと回しながら続ける。

「正直ね、五〇年も経ってる割には、基本構造はそこまで変わってないんだよね」


 空間に回路図をなぞる。


「部品がちっちゃくなったとか、素材が洗練されたとか、そのへんは“まあ進歩したね”って感じなんだけどさ」

 一瞬、言葉を切る。


「でもね」

 一瞬、言葉を切って、ニヤッと笑う。

「このワープ理論、ぜんっぜん違う」


 レオが顔を上げ、サイモンも興味を示す。


「発想がさ、“一回常識壊してから組み直してる”感じ」

「これ、絶対一発成功じゃない」

 クスっと笑い、どこか嬉しそう。

「何回も失敗して、何回も事故って、あ、これダメだ」って言いながら、それでも諦めなかった人の考え方」

 そして、素直な感嘆を込めて。

「……いやぁ、すごいよ。よくこんなの続けたなぁって、本気で思う」


 その言葉を受けて、ルビィは一瞬だけ視線を伏せ、そして静かにはっきりと答えた。


「ルミナール号の総責任者は――」

「私の母……そして、あなたの娘」

「サファイア・デズモンドです」

 

 間の抜けた、でも納得したような声を出した。

「あ〜」「あ、やっぱり?」ポン、と手を叩く。

「うん、そうだと思った! この考え方、私みたいだもん」


その一言に、空気が一瞬ふわっと緩む――が。


「待て待て待て待て」

 全員が同時に振り向く。明らかに、スイッチが入ったレオの声だった。

「今の一言、流したらダメだ。 重要な前提が、いくつも隠れてる」


 アストラが続ける。

『ルミナールのワープ理論の基盤には、ダイヤ・デズモンドさんが一〇歳の時に提出した論文が使用されています』


 沈黙。


「……え? あの落書きみたいなやつ?」


『はい。その論文をサファイア博士が読み、理論を再構築し、実験を繰り返しました』


 レオが呟く。

「一〇歳……だと……」


 アストラは続ける。

『更に補足します。ダイヤ・デズモンドさんが当時提出した論文は、ワープ理論に限らず、多方面の分野に及んでいます』


『しかし、当時の博士たちには理解されず、 “子供の突飛な発想”として笑われていました』


 ダイヤ少し口を尖らせた。

「ひどいよね。ちゃんと考えたんだけどな〜」


 再び沈黙。


『現在、五〇年が経過した時点での再検証結果では、その論文群の八四%が理論的に正しいと確認されています』


 結依が息をのむ。


『残りの一六%については、“現代科学ではまだ理解不能”とされていますが――』

 わずかに、声のトーンが上がる。

『より未来の科学であれば、理解に至る可能性が高いと推測されています』


 沈黙。


 レオが低く言う。

「つまり……サファイアは未来で正解になる前提を信じて、実験を続けたってことか」


 ルビィは誇りと葛藤を滲ませながら答えた。

「はい。“動いた者が未来を作る”と、母は言っていました」


 サイモンが呟く。

「……天才一家、怖ぇな」

 どこか他人事。


 ダイヤは楽しそうに笑う。

「ふーん…… 私の落書き、ちゃんと育ててくれたんだ」

 そして、くるっと振り返る。

「ねぇレオ。面白いでしょ?」


「……ああ」

 レオは完全に研究者の顔。

「五〇年分の科学の進歩どころじゃない。これは、“同じ未来を見ていた人間が、時代を越えて繋がってる”」


 結依は、その横顔を見て、思わず胸の奥がきゅっとなる。

(……なに、この人、普段クールなのに、今めちゃくちゃ楽しそう)


 ダイヤは無邪気に笑う。

「じゃあさ」

「この続き、全部見ようよ。未来がどこまで行ったのか」


「そうだな」

 レオは即答した。


◆深夜/ルミナール研究区画

 時刻はすでに深夜。


 ホログラムとスクリーンが乱立し、二人は完全に没頭していた。

「おい七八、この素材合成、五〇年前は理論止まりだったはずだぞ…… なぜ安定している?」


「ここ、計算式が時間軸でねじれてる」


 アストラが、二人の間を忙しく行き来する。

『補足します。この技術はオリオン博士が主導で――』


ダイヤがポツリと言った。

「オリオンの名前、さっきから出るよね」


一瞬、アストラの動きが止まる。

『オリオン博士には、特記事項があります』


 レオが嫌な顔をする。

「……やめろ」


 ダイヤ目を大きくする。

「え、なに? まさか……」


アストラは、感情を挟まない声で告げる。

『オリオン博士は、 過去に三度の拘束歴があります』


一瞬の静寂。


 サイモンは思わず声が出る。

「……え?」


 結依が確認する。

「拘束……って、逮捕?」


アストラは淡々と続ける。

『正確には、

・未認可実験による宇宙条約違反

・軍事転用禁止技術の個人研究

・自作アンドロイドによる公共施設侵入です』


 静寂。


「フルコースじゃん」

 サイモンが呟く。


 ダイヤは懐かしそうに笑った。

「やっぱりね」

「首チョンパ人形で遊んでた子だよ?」

 そのワードに、空気が緩む。

「頭と胴体が外れる人形。 “分離したまま動かせたら面白くない?”って 出航の時ずっとイジってた」


 サイモンは口の端を少し上げながら、興味深そうにアストラを見た。

「今それが、銀河最先端のアンドロイド技術になってるんだろ?」


 アストラは微動だにせず、淡々と応じる。

『はい。私の“分離遠隔制御システム”は、オリオン博士の独自理論です』

 レオは眉間に皺を寄せ、片手で額を押さえた。

「独自……未発表? 論文にも、申請にもない?」


 アストラは即座に答える。

『はい。博士は“理解されないから出さない”と』


 ダイヤは呆れたように息を漏らし、軽く首を振った。

「うわ〜、完全にやばい方向に育ったね」

 そのままアストラをじっと見つめ、数秒考え込む。

 そして、くすっと笑った。

「……これ設計したやつ、やっぱり大バカだよ」


 レオは顔をしかめ、低く返す。

「何度目だ、それ」


 ダイヤはニコッと無邪気に微笑んだ。

「何度でも言うよ。褒め言葉だし、オリオンは完全に“大バカ天才”」

 ほんの少しだけ目を細める。

「でも、嫌いじゃない」


 サイモンは口角を上げ、楽しそうに言った。

「むしろ好きだろ、それ」


 結依はそのやり取りを見ながら、内心で小さく息をつく。

(……この人たち、レベルが違いすぎる)


 ルビィは視線を落とし、わずかに表情を曇らせる。

 やがて静かに顔を上げた。

「母も……“オリオンは危険だけど、未来を一番早く見てる”って」


 レオは短く息を吐き、呆れたように呟く。

「……まったく」

 だが、その視線は設計図から一切離れていない。

「五〇年分の科学、一晩じゃ足りないな」


 間髪入れず、ダイヤが口を挟む。

「でしょ?」


 ――翌朝


 仮眠室のドアが開く。

 サイモンと結依が出てきた。


 サイモンはいつもの調子で声をかけようとした。

「おは――」

 だが、その言葉は途中で止まる。


 視線の先にいたのは――

 目の下に濃いクマを作り、今にも倒れそうな足取りで歩く二人の姿だった。


 サイモンは目を瞬かせる。

「……徹夜?」

 ダイヤはあくびをかみ殺しながら、ぼんやりと答える。

「うん……楽しかった」


 レオも同じように疲れた顔のまま、しかしどこか満足げに言う。

「……五〇年分、だいたい把握した」


 結依は呆れたように眉をひそめた。

「把握したってレベルじゃないでしょ」


 アストラが静かに告げる。

『記録によると、お二人は一睡もしていません』


 ダイヤは、だるそうに息を吐き軽く首を回した。

「さて……今日は忙しくなるね」


私からのお願いです。

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