☆時間のズレ
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
厳重な扉が開き、長い通路に出る。張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ緩んだ――その瞬間だった。
ダイヤは、モコルを抱き上げていた。腕の中で、満足そうに丸まっている。
「ねえ、結依」
唐突に呼ばれ、結依は顔を向ける。
「なに?」
途方もない難題を背負わされた困惑を隠せず、少し棘のある声で返す。
ダイヤはモコルの耳を撫でながら、軽く首をかしげた。
「アンタさ……何年生まれ?」
一瞬、結依の足が止まる。
言葉が喉に引っかかったまま、出てこない。
沈黙。
その反応を見て、ダイヤは小さく笑った。
「やっぱりね〜」
「……なに、それ」
結依は鋭く睨み返す。
「同じ銀河出身なのは、わかってた」
ダイヤは軽い口調のまま続ける。
「でもさ……年代が違う」
低く息を吐いたのはレオだった。
「……気づいてはいた」
隣でサイモンも頷く。
「俺もだ。言わなかっただけで」
結依は苛立ちを隠さず問い返す。
「最初から、わかってたってこと?」
「うん」
ダイヤは迷いなく頷いた。
「ルミナール号に乗り込んだ時点で、ほぼ確信してた」
指折り数えるように言葉を並べる。
「船の科学技術。アンドロイドの性能。みんなが当たり前だと思ってる前提」
そして、さらりと結論を口にした。
「間違いなく――私たちより未来の人」
結依の眉が強く寄る。
「それが何?」
一歩踏み出す。
「未来だろうが過去だろうが、今は同じ船にいる」
ダイヤは楽しそうに笑った。
「そうそう。その反応、嫌いじゃない」
ふっと視線を外し、今度はルビィとアストラを見る。
「で、次」
声のトーンが一段落ちる。
「あなた達の科学も……全部、開示して」
ルビィの肩がわずかに揺れた。
「……全部、ですか」
声が、ほんの少し震えている。
ダイヤは頷いた。
「隠し事したまま、二一億人は救えない」
ルビィは唇を噛む。
船長としての責任と、突きつけられた現実。その両方が表情に出ていた。
『合理的判断です』
静かにそう告げたのはアストラだった。
「でしょ?」
ダイヤはニコっとする。
「ルビィ船長」
一瞬、ルビィは視線を落とす。
だが、すぐに顔を上げた。
「……わかりました」
はっきりと言い切る。
「ルミナール号の全データ、開示します」
通路に、静かな重みが広がった。誰も、すぐには口を開かない。足音だけが、やけに大きく響く。
六人はそのまま歩き出したが――空気は明らかに変わっていた。軽口もなく、視線も交わらない。決断の重さが、それぞれの胸に沈んでいる。
ルビィは、少しだけ俯きながら歩いていた。
船長としての判断。
正しいと分かっていても、簡単に割り切れるものではない。
その空気を――
不意に、崩す声があった。
「なあ、ルビィちゃん」
サイモンだった。
いつもの調子で、少し前に出て振り返る。
「……未来人だとかさ、正直、俺にはよく分かんねぇけど」
軽く頭をかきながら、照れくさそうに笑う。
「ルビィちゃんが“船長”なのは、変わんねぇだろ?」
ルビィが顔を上げる。
サイモンはそのまま、ニカッと笑った。
「困った時はいつでも言えよ」
「俺の力は、そのためにあるんだからさ」
一瞬の間。
それだけの言葉だったのに――
張り詰めていた空気が、ふっと緩む。
ルビィの表情も、わずかに柔らいだ。
「……サイモンさんは、本当に調子がいいんだから」
ルビィは小さく笑う。
それは、この日初めて見せた、年相応の自然な笑顔だった。
通路の先に、外の光が見えてくる。
出口には、カイトが待っていた。
いつもの、飄々とした表情で。
「話は終わったみたいですね」
「うん」
ダイヤが軽く答える。
「一旦、ルミナール号に戻ろ」
モコルを抱え直し、何でもないことのように言った。
「これから、惑星間の引っ越し計画、始めるから」
――誰も、笑えなかった。
だが。
誰一人、否定もしなかった。
カイトが静かに歩き出す。
それに続いて、六人も歩き出す。
こうして――
本当に後戻りできない計画が、動き始めた。
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