☆恒星の終焉
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
重苦しい沈黙の中で――
場の空気とはまるで噛み合わない、軽やかな声がそれを断ち切った。
ダイヤは椅子に深く腰掛けたまま、首をかしげる。
「――なんかさ。うちの銀河の“地球歴”に、すごく似てる話だなって思った」
一瞬、空気が止まる。
大統領ゼファーも、側近たちも、思わずダイヤへ視線を向けた。
ダイヤは気にする様子もなく、淡々と話を続ける。
「地球っていう惑星もね、昔――環境破壊とか自然災害で、かなり苦しんでたんだ」
指先で軽く机をなぞりながら、言葉を重ねる。
「地球にも“月”っていう自然衛星があってさ。一時期、本気で移住計画が立てられたことがあった」
「調査した結果、月には微生物とか、宇宙昆虫みたいな生き物しかいなかった」
「で、当時の科学力じゃ―― 月の地表に人が住むのは現実的じゃない、って結論に至った」
結依が思わず口を挟む。
少し前のめりになりながら問いかけた。
「地下は?」
ダイヤは小さく頷く。
「そこも調べた。地球から見て“裏側”に、六つの地下基地が見つかった」
一拍。
「ただし――そこにいた知的生命体は、すでに絶滅してて、かなりの年月が経ってた」
その横で、アストラが静かに補足する。
『現在の月は、地表環境が完全に制御され、地表での恒久的居住が可能となっています。すでに一つの大都市が存在し、二つ目の都市も建設中です』
わずかな沈黙が流れる。
ダイヤ、レオ、サイモンの三人の視線が、一瞬だけ交錯した。
――彼らの知識では、月の地表に都市は存在しない。
だが三人は、それを口にはしなかった。
ダイヤは何事もなかったかのように、話を続ける。
「当時の地球の人口は、約一〇〇億。六つの地下基地じゃ、全然足りなかった」
「だから、移住計画は方向転換したんだ」
指を一本立てる。
「コロニー建設」
さらりと言うが、その内容は異常だった。
「最初は、ほんと小さくてね。ホテルみたいなコロニー一つに、一〇億人」
サイモンが目を丸くし、思わず声を漏らす。
「……ホテルで、一〇億人?」
ダイヤはあっさり頷く。
「うん。無茶だよね。でも、それだけ当時の地球は切羽詰まってたんだと思う」
そして続ける。
「でも宇宙に出てから、科学力は急速に発達した」
「今ではコロニーは大きく作り変えられて――ここのルナストンみたいに、街があって、公園があって、企業や学校もある」
「天気も、季節もある。もう、地球とほとんど変わらない」
少しだけ誇らしげに笑う。
「人が住んでる大きなコロニーは、今一五個。農業用とか含めたら、全部で二五個かな」
そして、迷いなく言い切った。
「だから私は、コロニーを作って移住を進めるのが一番現実的だと思う」
その瞬間、アストラが静かに手を挙げた。
『補足します』
全員の視線が集まる。
『私たちは、まだ隣の惑星アークスには直接行っていません』
『ですが観測データから推測する限り――惑星アークスは、自然衛星に到達できる程度の科学力しか持っていません』
一拍置いて、結論を述べる。
『コロニー建築は、現実的ではありません』
ダイヤが口を尖らせる。
「……当時の地球より、だいぶ遅れてるってこと?」
『はい』
即答だった。
そのやり取りを受け、ルビィが静かに問いかける。
「では、ルナスに地下都市を増やすことはできないのですか?」
ゼファーはゆっくりと首を横に振った。
「難しい」
低く、重い声で続ける。
「地殻構造、エネルギー循環、人口制御……どれか一つ崩れれば、都市全体が崩壊する」
「これ以上の拡張は、自滅を早めるだけだ」
結依が唇を噛み、それでも言葉を絞り出す。
「なら……別の惑星への移住は?」
「私たちが、惑星側の科学力を底上げすれば、可能性は――」
その言葉を、レオが静かに遮った。
「二〇億だぞ」
場が沈黙する。
レオは淡々と続ける。
「運ぶだけでも途方もない」
「我々の科学と、ここの化学力を合わせても、何十年……下手をすれば百年単位の計画になる」
ゼファーが重く問いかける。
「……仮に、それが可能だとして」
「二〇億人が移住できる惑星は、存在するのですか?」
結依は目を伏せる。
「……私たちが探索した惑星は」
言葉が詰まりながらも、続ける。
「海ばかりの惑星と……酸の雨が降る惑星……」
「移住は、無理です」
その時、サイモンが首をかしげる。
「酸の雨?俺たちも行ったぞ」
一同の視線が集まる。
サイモンは思い出すように続ける。
「すぐには雨が降らなかったから、一週間くらい調査で滞在してた」
ダイヤが即座に否定する。
「そこは無理だよ」
「寒暖差が異常だし、酸の雨が降る周期も不安定」
そのときだった。
アストラが、静かに手を挙げた。
『別の惑星移住も、コロニー建築も、時間がかかりすぎます』
全員が息を呑む。
そして――
『私の調査から判断すると、隣の惑星の問題の“本質”は、環境破壊だけではありません』
一拍。
『太陽です』
ざわめきが走る。
ゼファーの表情がわずかに強張る。
アストラは変わらぬ声で続けた。
『この恒星は、地球の太陽とは明らかに性質が異なります』
『お話を総合すると――約五〇〇〇年周期で、恒星活動に異変が起きている』
『ここの恒星から異常感知反応が出ていたため、しばらく観測していました』
そして、静かに告げる。
『ここの太陽は――寿命が近い』
空気が凍りつく。
『今回の五〇〇〇年周期で、太陽が消失する確率は――七五%』
誰も言葉を発せない。
『仮に今回を乗り切っても、次の五〇〇〇年周期には、ほぼ確実に消滅します』
ダイヤですら、言葉を失っていた。
『周期は、もうすぐです』
『約三年後――早ければ一年後には、惑星アークスに深刻な影響が現れ、この自然衛星ルナスも無傷では済みません』
そして、最後に。
アストラは静かに告げた。
『――太陽が爆発した場合』
『このルナスも、隣の惑星アークスも』
『共に消失します』
――面会室には、重たい沈黙だけが残ったまま。
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