☆断絶の歴史
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
面会室の深紅の椅子に座る大統領は、静かに六人を見渡した。
重厚な空気の中、やがて口を開く。
大統領は低く、威厳のある声で語り出した。
「ワシは地下都市ルナストンの大統領、ゼファーだ。異銀河から来られたその科学力――そのお力を借りたく、今日は来てもらいました」
わずかに身を乗り出し、続ける。
「まずは、我が都市の歴史と、この自然衛星ルナスに住むワシらの立場を説明しよう」
ゼファー大統領は一度、全員の顔を順に見渡した。
そして、ゆっくりと語り始める。
「ワシらの民は――もともと、この自然衛星の“隣にある惑星”アークスの出身だった」
静かな声だが、その一言には重みがある。
「およそ五〇〇〇年前。惑星アークスは急激な環境破壊に直面した」
ゼファーは指先で卓をなぞりながら、淡々と続ける。
「大気汚染、地殻変動、異常気象……自然災害は連鎖的に発生し、このままでは文明そのものが滅びると判断されたのだ」
ルビィがわずかに息を呑む。
ゼファーの声は揺るがない。
「そこで当時の指導者たちは、苦渋の決断を下した。人口のおよそ半分を、この自然衛星ルナスへ移住させる計画をしました」
一度言葉を切り、指を止める。
「しかし――移住計画は、決して順調ではなかった」
わずかに眉をひそめる。
「思想の対立、利権、技術不足……」
「結果として、一〇分の一の民のみが自然衛星ルナスへ。残りは、惑星アークスに残ることになった」
結依は思わずレオの方へ視線を向ける。
レオは無言のまま、話を聞いていた。
「それが、すべての始まりでした」
ゼファーの声が、わずかに低くなる。
「その後、アークス側は――大規模な自然災害に襲われた」
「文明は崩壊し、“完全に滅びた”と、ワシらルナス側では長らく信じられてきた」
場の空気が、わずかに張り詰める。
だが、次の言葉がそれを覆す。
「しかし、真実は違った」
ゼファーは静かに言い切った。
「アークス側には――ほんのわずかな生存者が存在していた」
ダイヤが小さく目を見開く。
「彼らは壊滅的な環境の中で文明を一から築き直した」
「そして科学を発達させ、惑星を再び開拓し、ワシらとは異なる進化の道を歩み始めたのだ」
ゼファーはゆっくりと背もたれに身を預ける。
「ここで、決定的な断絶が起きる」
一拍。
「アークス側には――五〇〇〇年前にルナスへ移住した記録が、完全に失われていた」
結依が小さく呟く。
「……そんなことって」
ルビィが小さく首を振り、静かに補足する。
「長い時間が経てば、あり得ることよ……」
ゼファーは頷く。
「そのため彼らは、ワシらを“同じ惑星の出身者”だと理解できなかった」
「最初の接触時、アークス側はワシらを――異星人だと判断したのだ」
静寂が落ちる。
「記録にない。歴史に存在しない。文化も、生態も違う」
「そう思われても、無理はない」
深く、ゆっくりと息を吐く。
「そして近年――アークスは再び環境破壊の限界に直面している」
ゼファーの声が、さらに重くなる。
「惑星側の人口は二〇億人」
「もはや、脱出は避けられない選択となった」
レオが腕を組み、静かに聞いている。
「そこで彼らは、ルナスにある地下都市ルナストンに目を向けた」
「しかし――ここには、すでにワシらがいる」
「人口は約一億。ルナストンは限界だ」
ダイヤがモコルを抱えたまま、真剣な表情になる。
「アークス側は、ワシらを異星人と認識したまま――」
「自らの方が科学力で優位にあると判断した」
一瞬の間。
「その結果、交渉ではなく――武力を背景とした接触が選ばれた」
空気が一気に冷える。
サイモンがわずかに眉をひそめる。
「それが、地下都市の入口に門番を置き、臨戦態勢に入った理由です」
ゼファーは六人をまっすぐに見据えた。
「ワシらは争いを望んでいない」
「だが、滅びるわけにもいかない」
その言葉には、確かな覚悟があった。
「同じ起源を持ちながら――五〇〇〇年の断絶によって、互いを“異星人”と認識するに至った」
「それが、今の状況だ」
短い沈黙。
そして――
「そこで、ルナストンの技術者たちにお主らの持つ科学力を学ばせたい、と」
その言葉に、レオが静かに口を開く。
少し前に出るように姿勢を正し、問いかけた。
「大統領。私たちから科学を学び――何をするつもりですか?」
一拍置き、レオは言葉を選ぶ。
「戦争ですか。それとも――共存ですか」
視線が交差する。
ゼファーはゆっくりと目を細めた。
そして、迷いなく答える。
「今の現状は――」
低く、はっきりと。
「両方に備えます」
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