☆結依 VS サイモン (前編)
一度完結しましたが、ブラッシュアップしての1話目、【第零章】から再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
完結してる作品なので、完結は必ずします。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
楽しんでもらえると嬉しいです。
ホテルのロビーは朝の光に満ち、床の反射が金色に輝いていた。
ダイヤの髪は、昨夜の副作用で黒く染まったまま。
サイモンの体色は元に戻り、ほっとしたように体を伸ばしている。
結依とレオは少し距離を取りながら歩いていた。
結依はレオに好意的ではあるものの、どこかぎこちない空気が漂っている。
そのとき、アストラが小さな機械を取り出した。
『サイモンさんは、まだ言語を完全には理解できていません。ルビィさん、装着をお願いします』
ルビィはすぐに頷き、サイモンへ歩み寄る。
逞しい二の腕に手を添え、ベルトを締め直す。
ふわりと髪の香りが漂い、サイモンは思わず息を止めた。
ルビィは至近距離で微笑む。
「これで大丈夫です、サイモンさん」
サイモンは視線を泳がせながら、少し照れたように言った。
「……ああ、サンキュー。わざわざ悪いな」
ほんのりと顔を赤くしながら、言葉を続ける。
「……ありがとう、ルビィちゃん」
アストラはさらに三つのデバイスを取り出し、他のクルーへ手渡した。
『本日の面会で使用します。私の通訳より効率的です』
だが、カイトとの約束の時間にはまだ早かった。
広いロビーには静かな音楽が流れ、窓の外には地下都市ルナストンの街並みが広がっている。
しばらく沈黙。
やがてサイモンが腕を組み、天井を見上げた。
「……暇だな」
レオが横目で見る。
「まだ時間あるからな」
サイモンは首を回し、軽く体をほぐした。
「宇宙船にずっと乗ってたせいで、体が鈍ってる気がする」
ダイヤがくすっと笑う。
「運動不足ってやつだね」
サイモンはロビーの奥を指差した。ガラス越しに広い中庭が見える。
「あそこ、広いだろ」
一歩踏み出しながら、レオに視線を向ける。
「模擬戦でもやらないか?」
レオは間髪入れず答えた。
「やらない」
サイモンは苦笑する。
「即答かよ」
ダイヤが横から顔を出す。
「じゃあ私とやる?」
サイモンは露骨に顔をしかめた。
「ダイヤは嫌だ」
ダイヤが首を傾げる。
「なんで?」
サイモンは真顔で言った。
「攻撃が当たらない」
結依は思わず吹き出しそうになる。
サイモンは続けた。
「全部避けるだろ。つまらん」
ダイヤは楽しそうに笑う。
「それも技術だよ」
「いや、楽しめないんだって」
サイモンは視線を横に移す。
そこには静かに立つアストラ。
「じゃあ、アストラはどうだ?」
間を置かず、アストラが答えた。
『私の関節は外れやすいため、戦闘には向きません』
「だよな」
サイモンは即座に納得した。
そのやり取りを見ていた結依が、小さく手を挙げた。
「……あのさ」
全員の視線が集まる。
結依は少しだけ照れたように笑った。
「私でよければ、相手するよ?」
一瞬の沈黙。
サイモンが目を丸くする。
「いいのか?」
結依は軽く頷いた。
「うん。私も体動かしたいし」
ダイヤが嬉しそうに声を上げる。
「いいじゃん!」
レオもわずかに口元を緩めた。
「ホテル壊すなよ」
サイモンが立ち上がる。
「よし」
結依も続く。
「じゃあ中庭で」
「だな」
六人はロビーを抜け、中庭へ向かった。
中庭は、想像以上に広かった。芝生と石畳が混ざった開けた空間。
中央に立つ、結依とサイモン。
自然と観戦の輪ができる。
結依は軽く足を動かし、距離を測る。
(サイモンさんはパワー型……正面は危ない)
即座に判断。
低い重心。
細かいステップ。
ヒット&アウェイ。
――先に動いたのは結依だった。
地面を蹴る。
一気に距離を詰める。
拳、連打。
フェイントからの蹴り。
止まらないコンビネーション。
当てて、すぐに離れる。
サイモンは軽くいなしながら言った。
「お、速いな」
だが――
結依の速度がさらに上がる。
踏み込み。
膝!
顎を狙う一撃。
ドンッ
サイモンは腕で受けた。
レオが小さく呟く。
「……なるほど」
ダイヤが視線を向ける。
「何が?」
レオは目を離さず答えた。
「避けられたのに、ブロックした」
一拍。
「想定より速いってことだ」
結依の攻撃は止まらない。
低い位置から回転。
蹴りが連続で飛ぶ。
ドンッ
ドンッ
(軽い)
サイモンの余裕はまだ崩れない。
次の瞬間。
――掴まれた。
左足首。
ガシッ
引き寄せられる。
右手首も掴まれる。
結依の動きが止まる。
サイモンが笑う。
「捕まえた」
結依は片足で拘束される。
「俺の勝ちかな?」
その瞬間。
結依の目が変わった。
ギラッ
「……まだですよ」
結依は片足で地面を蹴り、後転する。
掴まれたまま回転。
そして、真上から踵がサイモンの頭を打ち抜く。
「痛っ」
さらにサイモンの頭を踏み台にして、前転する。
顎への痛烈や蹴り上げ。
サイモンの手が緩む。
そのまま結依は左足でサイモンの顎を押す。
サイモンは咄嗟に両手を離した。
結依は空中で体をひねり、着地。
即、突進。拳、蹴り、連撃。
ドンッ
ドンッ
(……重くなってる)
サイモンの表情が変わる。
真剣。
すべてブロック。
結依の回し蹴り。
ドン!!
芝生がえぐれる。
それでもサイモンは動かない。
まるで岩。
ダイヤが楽しそうに声を上げる。
「ゴリにぃ〜!手加減してると負けちゃうよ〜!」
ルビィが冷静に言う。
「結依は感情で出力が上がります」
アストラが即座に補足する。
『現在、清水結依さんの身体能力は通常の二・八倍です』
レオが目を細める。
「面白いな」
激しい攻防。そして――
サイモンの目が変わる。
(読める)
足運び。
呼吸。
重心。
一瞬の隙。
結依が踏み込んだ瞬間。
サイモンが動く。
横へ。そして流れるように背後へ。
ガシッ
今度は羽交い締め。
「よし、また捕まえた」
結依の動きが止まる。
「外れない……」
サイモンの圧倒的な力。
数秒、もがく。
だが――逃げられない。
結依の視界に映るアストラの姿。
その体勢のまま、結依の腕がわずかに動く。
力で劣るなら――。
また結依の目がギラつく。
「結依、何かやろうとしている」
ダイヤが興味深そうに見ている。
――まだ終わっていない。観戦していた全員が、結依の変化に気づいた。次の瞬間、勝敗を分ける一手が放たれる――
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