☆交錯する夜とそれぞれの違和感
ブラッシュアップしての再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。
「」人のセリフ
()心の声
『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。
※私の小説のルールです。
その夜――
ルミナストンの人工の星空は、静かに輝いていた。
◆ルミナール側の部屋
(ルビィ、結依、アストラ)
部屋に入るなり、アストラは無駄のない動きでテーブルに四つの小さな装置を並べた。
『明日の大統領との面会に向けて、通訳デバイスを四つ作成しました』
淡々とした声。
『急造のプロトタイプです。若干の時差が発生しますが、常にカイトさんを通訳するのが不効率的でした』
結依は身を乗り出し、装置を覗き込む。
目を細め、興味を隠さない。
「へえ……それ、私たちだけで会話できるってことね」
アストラは小さく頷く。
ルビィは装置を手に取りながら、素直に言った。
「でも、アストラの通訳、かなり助かってたよ」
その言葉に、アストラはわずかに視線を上げる。
『ありがとうございます』
一拍。
『ですが、もう一つ――共有しておくべき情報があります』
空気が、少しだけ変わる。
アストラは二人を順に見た。
『私の開発者、オリオン博士は――レオ・ミラノさんの息子です』
結依の動きが止まる。
「……え?」
一瞬、理解が追いつかない。
「レオさんの……息子?」
言葉を探しながら、結依はさらに踏み込む。
「ってことは……レオさん、結婚してたの?」
アストラはわずかに間を置き、静かに答える。
『配偶者は存在していました』
『しかし、若くして――ある事件で亡くなっています』
短い沈黙。
結依は小さく息を吐き、視線を落とす。
「……そっか」
ルビィは何も言わない。
ただ、その横顔はどこか固かった。
結依はその様子に気づき、横目で見る。
少しだけ口元に笑みを浮かべるが、何も言わない。
ルビィは窓の方へ歩く。
人工投影された星空。
本物ではないと分かっていても、妙に落ち着く光。
そのまま、ぽつりと呟いた。
「……五〇年のズレ」
誰に向けたわけでもない声。
「いつ話すべきかな……」
結依が振り向く。
だが、何も言わない。
ルビィは続ける。
「長引けば長引くほど、言いづらくなる……」
その声は小さく、けれど確かに重かった。
アストラも何も口を挟まない。
ただ静かに、その会話を記録していた。
◆ルミナス側の部屋
(ダイヤ、レオ、サイモン)
ダイヤはベッドの端に腰掛け、足を軽く揺らしていた。
頭の中は、完全に別のことでいっぱいだ。
「モコル……可愛かったなぁ」
満面の笑み。
サイモンは、自分の腕を見下ろしている。まだうっすらと緑色が残っていた。
「……俺、まだこれ戻らないんだけど」
ぼやくように言う。
レオはそれを横目で見て、小さく息を吐いた。
「気にするな。見慣れれば普通だ」
「いや、普通じゃねぇだろ」
即座に返すサイモン。
だが、その軽口は長く続かなかった。
サイモンは少し真面目な顔になり、ゆっくり口を開く。
「なあ……あの二人」
レオが視線だけ向ける。
「ルビィちゃんと結依ちゃん。かなり優秀だ」
「……あれだけのレベルなら、出航前に名前くらい聞いてるはずだ」
レオは黙って聞く。
サイモンは続ける。
「なのに、記憶にない」
レオは腕を組み、ゆっくりと口を開いた。
「それだけじゃない」
低い声。
「アンドロイドの識別番号」
サイモンが目を向ける。
「通常、改良型は年に一~二機程度だ」
「俺は出航直前までORX-〇八を扱っていた」
一拍。
「それが、いきなりORX-七八だ」
サイモンの眉がわずかに動く。
「……増えすぎだな」
レオは頷く。
「短期間でここまで進むのは不自然だ」
サイモンは腕を組み、少し考える。
「それに……有人探査機だ」
「三〜四か月で次が出るなんて、聞いたことない」
部屋の空気が、ゆっくりと重くなる。
その空気の中で――
ダイヤだけが、まったく違う方向を見ていた。
窓の外。
人工の星空を、じっと見上げている。
そして、ふっと笑った。
「未来に来たのかな」
軽い口調。
だが、言葉の中身は重い。
レオとサイモンが同時に視線を向ける。
ダイヤは続ける。
「まだ確証はないけどね」
「でも……違和感が多すぎる」
ダイヤは少しだけ目を細める。
「あの三人と、私たち」
「何年ズレてるんだろうね」
その言葉に、誰もすぐには答えなかった。ただ、静かに同じ考えに辿り着いていく。
時間のズレ。
――それは、確実に存在している。そしてその事実は、まだ誰も口にしていないだけだった。
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