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☆夜の街へ――小さな分岐点

ブラッシュアップしての再投稿です。内容もボリュームアップする予定。1話ずつ、ゆっくり投稿していきます。


「」人のセリフ

()心の声

『』通信などの機械音、ほかの人が言った言葉をそのまま入れるとき。


※私の小説のルールです。



 レストランを出ると、地下都市の夜はすっかり本番を迎えていた。

 通りの光量が一段落ち、街全体が落ち着いた色合いへと変わっている。

 柔らかな光が、行き交う人々の影をゆっくりと伸ばしていた。


 その中で、アストラはいつも通り淡々と通訳を続けている。

 カイトは軽く手を上げ、落ち着いた声で告げた。

『では、ホテルまで送りますよ』

 その合図に応じるように、歩道脇に停まっていた乗り物が静かに近づいてきた。

 円盤というより、半透明のカプセルのような形状だった。


 それを見上げた結依は、目を細めて確認する。

「……これ、浮いてます?」


 カイトはまったく気負いのない口調で答えた。

『ええ。重力制御は化学的にやってます』

 あまりにもさらっとした説明に、結依は一瞬言葉を失う。


 カイトは続けて、少しだけ笑みを含ませる。

『乗り心地は悪くないですよ。酔う人もほとんどいません』


 その言葉に、結依は眉をひそめた。

「“ほとんど”?」

 突っ込もうとした瞬間、カプセルの扉が音もなく開いた。

 

 中に入ると、座席というより、体を預けるための空間が個々に分かれている。

 固定ベルトもない。

 それなのに、不思議と不安定さは感じなかった。


 周囲を見回しながら、ルビィが小さく呟く。

「……変な感じ」


 それを聞いたカイトは、軽く息を混ぜて答えた。

『慣れますよ。たぶん』


 その“たぶん”に、レオは思わず小さく笑みをこぼした。

 

 やがて到着したホテルは、蜂の巣構造の一角に位置していた。

 外観は比較的シンプルだったが――

 中へ入った瞬間、印象が一変する。

 天井は高く、空間は縦にも横にも広がっていた。

 どこか現実感の薄い、不思議な構造だった。

 

 カイトが受付端末に手をかざしながら説明する。

『チェックインはこちらで』


 その手続きを横目に、ダイヤはすでにロビーを歩き回っていた。

 壁をじっと見つめながら、興味深そうに声を上げる。

「ねぇ見て、あの壁、呼吸してるみたい」


 それを聞いたルビィは、即座に釘を刺した。

「触らないでください」


 ダイヤは振り返り、無邪気に言い返す。

「触ってない、見てるだけ」

 

 ――しっかり触っていた。

 

 カイトが手続きを終え、振り向く。

『部屋は二部屋。三名ずつになります』

 端末を閉じる音が、静かに響いた。


 部屋割りは、船と同じ構成だった。

 

 ルビィは軽く周囲を見渡し、落ち着いた声で言う。

「とりあえず、みんな私たちの部屋に集合しましょう」

 

 一方で、サイモンは自分の腕を見下ろし、少し困った表情を浮かべていた。

 緑色のままの皮膚を見つめながら、ぼやく。

「……これ、まだ戻らないの?」


 その問いに、アストラが淡々と応じる。

『緑色は比較的長いとカイトさんが言っていました』

 

 ルビィは自分の耳に触れた。

 まだ、かすかに光を帯びている。

 小さく息を吐きながら呟く。

「……目立つな」

 

 チェックインを終えたカイトは、静かに一礼した。

『明日の朝、迎えに来ます。今夜はご自由に。ただし――』


 そこで一度言葉を切り、ダイヤへ視線を向ける。

『問題は起こさないように』

 

 ダイヤは軽く手を振りながら、あっさり返した。

「はーい」

  ――信用は、されていなかった。

 

 部屋に荷物を置き、ようやく一息ついた頃。


 ダイヤがくるりと振り返る。

 その目は、すでに輝いていた。

「……ねぇ」

「街、行きたいっ」

 

 一瞬の沈黙。

 

 そして――

 ルビィが呆れたように息を吐く。

「……だと思いました」


 レオも苦笑しながら頷く。

「行くだろうな」


 結依も肩を揺らして笑う。

「見え見えですよ、ダイヤさん」

 

 見事に、全員の反応が一致した。

 

 レオは軽く首を振りながら、少しだけ諦めたように言う。

「保護者役は俺だな」

 

 そのやり取りを見ていた結依は、小さく手を挙げた。

「私も行っていいですか?」

 

 その声は軽かったが――

 胸の奥では、別の感情が動いていた。

(伝説の二人に、ちょっと興味がある)

 

 一方で、ルビィは自分の耳を軽く押さえた。

 淡く光るそれを指し示しながら、静かに言う。

「私は……ここで留守番する。これだし」

 

 サイモンも自分の腕を見下ろしながら頷く。

「俺もな」

 少しだけ苦笑を浮かべて続けた。

「……目立つし、満腹になったから眠い……」

 

 珍しく、まともな判断だった。

 

 レオは視線を移し、アストラに問いかける。

「七八はどうする?」

 

 その呼び方に、結依が首をかしげる。

「七八?」

 

 振り向いたアストラは、すでに出発の準備を整えていた。

 扉の方へ体を向けたまま、静かに答える。

『七八は私のことです、結依さん。私は船に戻ります。作業がありますので』

 

 結依は少し意外そうに目を細める。

「寝ないの?」

 

 アストラは一切迷いなく答えた。

『不要です』

 

 それだけ言うと、迷いなく部屋を出ていった。

 

 残された三人が、顔を見合わせる。

 

「じゃ、行こっか!」

 そう言いダイヤが勢いよく扉を開けた。


 その背中を見送りながら、レオは小さく息を吐く。

 わずかに苦笑を混ぜて呟いた。

「……嵐の前触れだな」

 

 その言葉に、結依はほんの少しだけ口元を緩めた。


 ――これから起こるであろう騒動を、どこか楽しむように。


私からのお願い。

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