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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章伍】ゼロとの交渉と奪われた光/宝石の系譜

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215/218

✮海に消えた二人

◆海岸港・夜

 港は半壊していた。

 砕けたコンクリート。潰れたコンテナ。飛び散った瓦礫。

 激戦の跡がそこかしこに残っている。


 A班も満身創痍だった。

 アリスベルとサイモンは吹き飛ばされ。ケイトとテストも地面を転がった。

 レオのバトルスーツはショートし、胸部から黒煙を上げている。


 それでも。

 誰一人として戦意は失っていなかった。


 だが相手が悪すぎる。

 一五メートル級アビスモウ。

 小型とは比較にならない圧倒的な怪物。


 銃弾は効かない。

 レーザーガンも通らない。


 アリスベルとサイモンの攻撃ですら決定打にならない。


 港に重苦しい空気が流れていた。

 そんな中。

 テストが叫ぶ。

「アシュリー!! 早く撃て!!」

「奴の顔面だ!!」

 全員の視線が集まる。


 アシュリーが震える手で発光弾ランチャーを構えた。

 狙う先は単眼の大型アビスモウ。

 アシュリーは深く息を吐く。

「外したら文句言わないでくださいね」

 そして。

 引き金を引いた。

 ――パンッ!!

 発光弾がアビスモウの顔に直撃。

 次の瞬間。

 ――バァァァァァァァッ!!

 港一帯が白く染まった。


 まるで昼。

 一瞬だけ夜が消える。

 強烈な光が海を照らし、コンテナを照らし、アビスモウの巨体を照らした。


 すると。

 超大型アビスモウが大きく身を震わせた。


 ――ギュオォォォォォォォッ!!

 不快そうな咆哮。

 巨大な単眼が細くなる。


 そして。

 ゆっくりと後退を始めた。

「下がってる!」

 アシュリーが叫ぶ。


 全員が海を見る。

 超大型アビスモウは触手を引きずりながら海へ戻っていく。


 さらに。

 残っていた小型アビスモウも後退を始めた。

 ――ザバァァァァァン!!

 海面が大きく揺れる。

 二体とも闇の海へ姿を消した。


 静寂。


 波の音だけが残る。

 誰もすぐには喋らなかった。

 激戦だった。

 全員が息を切らしている。


 やがて。

 ケイトが腰へ手を当てた。

「……助かったのか?」


 サンチェスがライフルを下ろす。

「らしいな」


 テストも海を見つめたまま言った。

「効果はあったみたいだ」


 レオが壊れかけたバトルスーツを見下ろす。胸部装甲から煙が上がっていた。

「発光弾で撤退したのか」


 アシュリーが頷く。

「みたいですね」


 サイモンは海を見る。

「光が苦手なのか?」


 アリスベルが腕を組む。

「分からない」

 一拍。


「だが偶然ではないだろう」


 テストも頷いた。

「アイダの話と一致する」


 サンチェスが苦笑する。

「まさか発光弾が切り札とはな」


 ケイトが笑った。

「だから備品も馬鹿にできねぇんだよ」

 その言葉に少しだけ空気が緩む。


 アシュリーが近付く。

「お姉ちゃん」


「ん?」


「肩、怪我してる」


 ケイトが見る。

 服が裂け、肩から血が流れていた。

「大したことないよ」


「大したことあります」

 アシュリーは小さくため息を吐いた。

「本当に無茶するんですから」


 ケイトが笑う。

「誰かさんを守るためにな」


「もう……」

 アシュリーも少しだけ笑った。


 その時だった。

 海。

 港の端。

 誰も見ていなかった場所。


 そこから。

 一本の触手が音もなく伸びていた。

 次の瞬間。

 ――ガシィィッ!!

「え?」

 アシュリーの身体が浮いた。

 腰へ触手が巻き付いている。

 一瞬だった。


「アシュリー!!」

 ケイトの顔色が変わった。


 触手はそのままアシュリーを海へ引きずり込もうとする。


 ケイトは迷わない。

 即座に飛び出した。

「離せぇぇぇぇっ!!」

 アシュリーの腕を掴む。


 だが。

 次の瞬間。

 別の触手が海から飛び出した。

 ――ガシィィッ!!

「なっ!?」

 今度はケイトの身体へ巻き付く。


 そのまま。

 二人まとめて引きずられた。


「ケイト!!」

「アシュリー!!」

 サンチェスが叫ぶ。


 アリスベルが駆け出す。

 だが。

 触手が速い。

 あまりにも速い。

 二人の身体が港の端へ引きずられる。

 海面が迫る。

 そして。

 ――ザバァァァァァァン!!

 二人は海の中へ消えた。

 誰も間に合わない。

 一瞬の出来事だった。


「くそっ!!」

 サイモンが駆け出す。


 その横を。

 アリスベルが追い越した。

 躊躇などない。

 そのまま海へ飛び込む。

 ――ザバァァァァァン!!

 白い飛沫が上がった。


 テストの表情が険しくなる。

「まずい」


 レオが振り返る。

「何がだ?」


「アビスモウは海の中の方が強い」

 テストが言った。

「陸で戦うのとは話が違う」


 サイモンが拳を握る。

「俺も行く!」


「待て」

 レオだった。

 レオはポケットへ手を入れた。

 小さなケース。

 ルビィから渡されたものだった。


 サイモンが振り返る。

「レオ?」


 レオはケースを開く。

 中には薬が入っている。

 超身体能力解放薬。


「おい!」

 サイモンが目を見開く。

「まさか、それを使うのか?」


「ああ」

 レオは即答した。

「水中戦なら分が悪い」

 一拍。


「少しでも勝率を上げる」

 レオは迷わなかった。

 薬を取り出す。

 そして。

 そのまま口へ放り込んだ。

 薬のケースを閉じる。


 そして。

 サイモンへ放り投げた。


 サイモンが受け取る。

「レオ……」


 数秒。

 何も起きない。


 だが。

 五秒後。

 レオの身体が熱を帯び始めた。

 血液が沸騰するような感覚。

 筋肉が軋む。

 感覚が鋭くなる。


 レオはゆっくりと両手を見る。

 握る。

 開く。

 力が満ちていく。

 レオは海を見る。

 夜の海。

 その下に。

 アリスベル。

 ケイト。

 アシュリー。

 そしてアビスモウ。


 レオは静かに言った。

「助けに行ってくる」

 そして。

 躊躇なく海へ飛び込んだ。

 ――ザバァァァァァァン!!

 大きな飛沫。


 夜の海がその姿を飲み込む。

 その先にいるのはアリスベル。

 そして――海に消えた二人だった。

 夜の海は静かだった。

まるで何事もなかったかのように――。


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