✮深海の悪魔
◆海岸港・夜
巨大な単眼が港を見下ろしていた。
海面から現れた一五メートル級アビスモウ。
その圧倒的な存在感に、その場の全員が言葉を失う。
だが。
テストが真っ先に叫んだ。
「大型は後ろだ!」
「まずは残ってる小型を退かせる!」
全員が我に返る。
確かにそうだ。
二体同時は無理だ。
まず一体。
小型アビスモウを排除するしかない。
アリスベルが前へ出た。
「サイモン!」
「もう一度やるぞ」
サイモンが笑う。
「任せろ!」
二人が同時に駆け出した。
――ドンッ!!
港の地面が砕ける。
小型アビスモウが触手を振るう。
だが。
アリスベルが蹴りで弾く。
――ガァァン!!
その隙へ。
サイモンが潜り込んだ。
「らぁぁぁぁっ!!」
拳が炸裂する。
――バギィィィッ!!
電流。
青白い火花。
アビスモウの巨体が大きく痙攣した。
「よし、効いてる!」
サイモンが叫ぶ。
レオも飛び込む。
回転。
そして。
渾身の蹴り。
――ドゴォッ!!
電流が走る。
アビスモウが後退した。
テストが叫ぶ。
「やっぱりだ!」
「電流が効いてる!」
ケイトも飛び出した。
鋭い蹴りが連続で炸裂する。
――ドガッ!
――バキィッ!
迫る触手を次々と弾き飛ばした。
その隙を逃さない。
テストが一気に間合いを詰める。
低く踏み込み――拳を叩き込んだ。
――ドゴォッ!!
さらに追撃。
重い打撃が連続でアビスモウの体を揺らした。
サンチェスとアシュリーの援護射撃も続く。
――パンッ!!
――パンッ!!
――パンッ!!
小型アビスモウは明らかに押され始めていた。
あと少し。
あと一押し。
誰もがそう思った。
その瞬間。
海から伸びた巨大な影。
――ブォォォォォン!!
「なっ!?」
アリスベルの表情が変わる。
大型の触手だった。
アリスベルとサイモンへ直撃。
――ドゴォォォォォン!!
二人が吹き飛ぶ。
コンテナが粉砕された。
「サイモン!」
レオが叫ぶ。
だが。
大型アビスモウは止まらない。
海からさらに身体を現す。
巨大。
圧倒的。
まるで動く要塞だった。
サンチェスが即座に射撃する。
――パンッ!!
――パンッ!!
――パンッ!!
だが。
弾丸は弾かれた。
「効かねぇ!?」
アシュリーもレーザーガンを撃つ。
――ズガァァン!!
光が命中する。
それでも。
傷一つ付かない。
「嘘でしょ……」
アシュリーが青ざめた。
次の瞬間。
巨大な触手が振るわれる。
――バゴォォォォン!!
ケイトが吹き飛ぶ。
「ぐっ!」
続いて。
テストも巻き込まれた。
――ドガァァァァン!!
「がはっ!」
二人とも地面を転がる。
そして。
レオが前へ出た瞬間だった。
巨大な触手が伸びる。
――ガシィィッ!!
「しまっ――」
――遅かった。
身体を触手で掴まれた。
レオの全身が締め上げられる。
骨が軋む。
――ギュュュゥゥゥ!!
さらに力が強まる。
バトルスーツが悲鳴を上げた。
――バチバチッ!!
火花。
煙。
ショート。
黒煙が上がる。
「レオ!!」
サンチェスが叫ぶ。
誰も助けられない。
距離が遠い。
間に合わない。
だが。
飛び出した者がいた。
サイモンだ。
「離せぇぇぇぇぇっ!!」
拳が炸裂する。
――ドゴォォォン!!
電流が流れる。
超大型がわずかに揺れる。
だが。
触手は離れない。
そのとき。
アリスベルが腰へ手を伸ばした。
銀色の柄。
次の瞬間。
光が伸びる。
レーザー剣。
――ブォン!!
青白い刃が夜を裂いた。
アリスベルが跳ぶ。
一閃。
――ズバァァァァァッ!!
レオを掴んでいた触手が切断された。
レオの身体が落下する。
「レオ!」
サイモンが受け止めた。
「大丈夫か!?」
レオは咳き込みながら頷く。
「なんとか……」
だが。
安心する暇はなかった。
超大型が動く。
切断された触手の根元が蠢く。
まるで再生しようとしているかのように。
全員の顔色が変わった。
「冗談だろ……」
ケイトが呟く。
その瞬間。
再び触手が振るわれる。
――ドゴォォォォォォン!!
――アリスベルが!
さらにもう一つの触手。
――バゴォォォォォォン!!
――サイモンが!
二人が吹き飛ばされた。
港の地面が砕け散る。
誰も言葉を失う。
強い。
あまりにも強い。
これまで戦ってきたどの敵とも違う。
テストが歯を食いしばった。
そして。
ふと思い出す。
「待て……」
全員が振り向く。
「誰か」
一拍。
「発光弾は持ってるか?」
サンチェスが眉をひそめた。
「発光弾?」
「そんなもん効くのかよ?」
テストは答える。
「分からん」
「だが前にアイダが言っていた」
全員が聞く。
「アイダが前に、アビスモウに襲われた時」
「武器も弾も尽きて」
「最後に発光弾を撃ったら撤退したらしい」
ケイトが目を見開く。
「それって、たまたまじゃないのか?」
テストは即答する。
「ああ、偶然かもしれん」
「だが」
一拍。
「試す価値はある」
沈黙。
そして。
アシュリーが手を上げた。
「私」
全員が見る。
「発光弾なら一発だけあります」
テストが叫んだ。
「アシュリー!!撃て!!」
「奴の顔面だ!!」
アシュリーが頷く。
震える手で発光弾ランチャーを構える。
狙う先は――。
深海の悪魔。
一五メートル級アビスモウ。
巨大な単眼だった――。




