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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章肆】宝石(星)の系譜/停戦の誘いと銀の牙

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212/218

✮孤島

更新日を変更のおしらせ。

【毎週平日の月曜と金曜の朝6時】


今後ともよろしくお願いします。

 ――B班。

◆荒野地帯

 赤いレヴロストの残骸が静かに沈んでいた。戦闘の熱はすでに引き、風だけがその場を通り抜けていく。


 その空気の中で、アイダがダイヤを見る。

「婆さま、戦闘中前に出なかったな」


 ダイヤは落ち着いた声で答えた。

「みんな強いのはすぐ分かったしね」

 一拍。


「私は攻撃力が高いタイプじゃないから」

「前に出ても邪魔になると思ったの」

 視線はアストラとフェザーに向く。

「だから応援に回ってた」


 フェザーが小さく「きゅっ」と鳴いた。


 アイダは少しだけ眉を動かす。

「射撃できるだろ」


 ダイヤはすぐに返す。

「できるよ」

「でもね、メリーさんや結依、それにルビィの方が上手いと思う」

「無理に前に出る必要はないでしょ」


 その言葉に、メリーがダイヤを見る。

「判断としては間違ってないわね」


 テリオスが軽く笑う。

「潔いな」


 ディックが短くうなずく。

「無理しないのは悪くない」


 そのときロックが一歩前に出る。

「第一部隊隊長、ロック」

 短く名乗る。

「副隊長ヘルムズ、テリオス、ディック、メリー」

 それだけで完結するような、無駄のない言い方だった。


 ヘルムズが片手を軽く上げる。

「よっ」


 ディックは軽く会釈する。

「よろしく」


 テリオスはにやりと笑う。

「よろしくな」


 メリーが笑顔で手を振る。

「どうも」


 空気が少しだけ和らぐ。


 そこへルビィが前に出た。

「私はルビィ」

「私たちは異銀河からこの星に来ました」

「船長をしています」

 視線が集まる。

 静かだがはっきりした声だった。

「ダイヤ、結依、アストラ、フェザー。私の仲間です」

 フェザーが誇らしげに胸を張る。

「きゅっ!」


 ディックが小さく笑う。

「こいつは元気だな」


 テリオスも口元を緩める。

「異星人って言われても、今さら驚く気にもならねぇな」


 ヘルムズがぼそりと言う。

「昨日なら驚いたかもしれねぇが、今日は無理だな」


 その横で、アイダがダイヤに視線を戻す。

「ああ、こいつはルビィの祖母だ」


 ルビィがすぐに振り向く。

「その説明の仕方は雑すぎる!」


 ダイヤは平然としている。

「事実だから否定はしないけどね」


 ヘルムズが笑いをこらえきれずに息を漏らす。

「関係性が一気に複雑だな」


 ロックは短く頷く。

「了解した」

 それ以上は掘らない。


 メリーがアイダへ声をかけた。

「クレアから帰還コードを受信したんだけど」

 一拍。


「アイダ、何か知ってる?」


 アイダは小さく頷く。

「ああ」


 その返答に、メリーの表情が少し真剣になる。

「何かあったの?」


 アイダは前を向いたまま答えた。

「アイオーンとの停戦交渉が開かれることになった」


 一瞬。

 空気が変わる。


 ロックが眉をひそめた。

「……いつだ?」


 アイダは首を振る。

「まだ分からねぇ」


 ヘルムズが低く呟く。

「どうせ、一筋縄じゃいかねぇ話だろ」


 テリオスも苦笑した。

「停戦交渉なんて言葉が出た時点で、面倒事の匂いしかしないな」


 ディックが腕を組む。

「最悪、大規模な戦闘の前触れかもしれん」


 誰も否定しなかった。

 アイダは仲間たちを見回し、短く言う。

「詳しい話は基地に戻れば分かる」


 そのときだった。

 ――ウゥゥゥゥゥゥゥゥン。

 サイレンが響く。

 全員が反射的に空を見上げた。

 さっきまで明るかった空が、急速に光を失っていく。


 ロックが空を睨みながら呟く。

「今回は早いな……」


 ヘルムズが小さく息を吐いた。

「嫌な予感しかしねぇ」


 テリオスは苦笑を浮かべる。

「昼勤務終了、夜勤開始ってやつか」

 だが、その声にも余裕はない。


 ルビィは静かに呼吸を整えた。


 光が消える。

 荒野を包む闇が広がっていく。

 そして――夜が始まった。


 ――A班。

◆海岸地帯・港

 ――ブォォォォォォン。

 五台のセグダが海沿いの道を駆け抜ける。


 やがて。

 朽ちた建物群が見えてきた。

 崩れた倉庫。

 錆び付いたクレーン。

 放置されたコンテナ。

 そして――海。


 テストが前方を指差す。

「港だ」

 セグダが次々と減速する。

 ――キィィィッ。

 全員が停車した。


 レオはセグダを降りる。

 潮風が吹いた。

 目の前には広い海。

 そして。

 遥か沖合に黒い島影が見えていた。


 サイモンが目を細める。

「おお」

「本当にあったな」


 ケイトも海を見る。

「孤島か」

 一拍。


「思ったより遠いな」


 サンチェスが周囲を見回した。

「で」

「船は?」


 全員が港を見る。

 沈没船。

 壊れた桟橋。

 錆びたクレーン。

 以上。


 テストが鼻を鳴らした。

「ねぇな」


 サイモンが言う。

「泳ぐ?」


「お前だけ泳げ」

 ケイトが即答した。


 レオが苦笑する。


 アシュリーも呆れたように肩を落とした。

「さすがに無理でしょう」


 そのとき。

 アリスベルが双眼鏡を取り出した。

 孤島へ向ける。

 数秒。

 静かに観察する。

 そして。

「いるな」


 全員が反応した。


 レオが聞く。

「何が見える?」


 アリスベルは答える。

「赤いレヴロスト」

 一拍。


「少なくとも三体」


 空気が変わる。


 テストが腕を組んだ。

「やっぱり当たりか」


 ケイトも顔をしかめる。

「ネメシス基地説が濃厚だな」


 そのときだった。

 海を見ていたサンチェスが眉をひそめる。

「……おい」

 低い声だった。


 全員が振り向く。


「どうした?」

 テストが聞く。


 サンチェスは海を指差した。

「あそこ」


 全員が視線を向ける。

 深い海。

 その奥。

 ゆっくりと動く巨大な黒い影。


 サイモンが目を細めた。

「あれって……」


 テストが即答する。

「アビスモウだ」


 その名前にレオの表情が変わった。

「あいつか」


 サイモンも思い出したように頷く。

「港で戦った奴だな」


 アシュリーが驚く。

「遭遇したことあるんですか?」


 レオが海を見たまま答える。

「ああ」


 テストが腕を組む。

「港で嬢ちゃんが目を撃った個体だな」

「あれは一五メートル級だった」


 サンチェスが目を見開く。

「そんなに大きかったのか」


 テストが頷く。

「おそらくな」

「小型でも八メートル前後ある」

 一拍。


「一五メートルなら十分大型だ」


 サイモンは苦い顔になる。

「俺は二度と戦いたくねぇな」


 アシュリーが聞く。

「そんなに危険なんですか?」


 ケイトが即答した。

「危険なんてもんじゃねぇ」

 一拍。


「防御力が高い」

「力も強い」

「触手も多い」

「しかもデカい」


 サイモンが顔をしかめる。

「最悪じゃん」


「最悪だよ」

 ケイトも頷いた。


 アリスベルが双眼鏡を下ろす。

「二五メートル級の発見報告もある」


 その場が静かになった。


 レオが聞き返す。

「二五メートル……?」


「そうだ」

 アリスベルは海を見る。

「私は遭遇していない」

「だが報告は受けている」


 テストが続けた。

「大型化するほど知能が高くなるとも言われてる」


 サイモンが眉を上げる。

「知能が?」


 サンチェスが頷く。

「らしいな」

「証拠は少ねぇが」

 一拍。


「そういう報告がある」


 レオが考え込む。

「俺たちが会った奴は」

「そこまで賢そうには見えなかった」


 ケイトが答えた。

「ネメシス製サイボーグは基本そんなもんだった」

「攻撃力重視だ」

 一拍。


「だが最近は違う」


 テストも頷く。

「ハウンドも群れで連携するようになった」

「銀狼なんてその典型だ」


 サンチェスが嫌そうな顔になる。

「あんなのが増えたら最悪だな」


 アリスベルは静かに海を見つめる。

「この惑星で最強の生物はアビスモウだと思っている」


 全員が彼女を見る。


 アリスベルは続けた。

「特に超大型は」

 一拍。


「私でも勝てないかもしれない」


 誰も軽口を言わなかった。

 アリスベルがそこまで言う相手だった。


 海の向こう。

 巨大な影は静かに泳いでいる。


 そのときだった。

 ――ウゥゥゥゥゥゥゥゥン。

 サイレンが鳴る。

 全員が空を見上げた。


 空が変わる。

 光が薄れる。

 昼が終わる。

 孤島の輪郭が暗闇に溶け始める。


 テストが舌打ちした。

「最悪だな」


 ケイトも眉をひそめる。

「船も見つかってねぇぞ」


 レオは孤島を見る。

 ネメシス基地。

 赤いレヴロスト。

 そして海のアビスモウ。

 夜は始まったばかりだった。



 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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