✮第一部隊
更新日のお知らせ。
【毎週平日の月曜と金曜の朝6時】
次は今週の月曜です。
今後ともよろしくお願いします。
――B班。
◆荒野地帯・昼
昼の荒野を、B班は前線基地へ向かって進んでいた。
最後尾を走るアストラが言った。
『クレアさんへの情報伝達が完了しました』
アイダが聞く。
「全部伝えたのか?」
『はい』
『アイオーン・ゼロ』
『停戦提案』
『アリスベル停止コード』
『赤いレヴロスト』
『ネメシスの進化』
『確認した情報は全て送信済みです』
アイダは小さく息を吐いた。 「そうか」
「これで少しは肩の荷が下りたな」
アストラは続ける。
『なお』
『クレアさんから伝言を預かっています』
ルビィが反応した。
「伝言?」
『はい』
『全員、無事に帰ってこい』
『以上です』
結依が思わず笑った。
「クレアさんらしい」
ルビィも微笑む。
「本当にそうですね」
ダイヤが後ろで頷く。
「短いけど、気持ちは伝わるね」
アイダは前を見たまま鼻を鳴らした。
「言われなくても帰る」
一拍。
「B班全員でな」
結依が笑う。
「はいはい」
ルビィも頷いた。
「もちろんです」
ダイヤがくすりと笑う。
「みんな元気だね」
荒野を走るバイクの速度は落ちない。
クレアの言葉は、不思議と全員の心を少しだけ軽くしていた。
そのときだった。
『反応を探知しました』
アストラが告げる。
『人間反応が五』
『レヴロスト反応が四』
『距離約一・三キロ』
アイダが眉をひそめた。
「五人か」
一拍。
「第一部隊だな」
ルビィが聞く。
「知り合いなんですか?」
「ああ」
アイダは頷いた。
「ラストライト最強の部隊だ」
結依が目を丸くする。
「五人だけで?」
「今はな」
アイダは少し笑った。
「昔は一〇人いた」
「私もいたし、アリスベルもいた」
「ケイト、テスト、サンチェスもな」
ルビィが驚く。
「えっ?」
「みんな同じ部隊だったんですか?」
「ああ」
一拍。
「その頃の隊長も今と同じ」
「ロックだ」
ダイヤが聞く。
「どんな人?」
「元軍人」
アイダは即答した。
「真面目すぎる男だ」
「冗談が通じねぇ」
結依が苦笑する。
「大変そうですね」
「実際大変だ」
アイダは頷いた。
「副隊長はヘルムズだ」
一拍。
「前職は知らねぇ」
結依が目を丸くする。
「知らないんですか?」
アイダはニヤリと笑った。
「本人が話さねぇからな」
一拍。
「まぁ、面白い男だよ」
ルビィが首を傾げる。
「どんな人なんですか?」
アイダは少し考えてから答えた。
「射撃以外なら、だいたい何でもできる」
「……でも強い」
ルビィが瞬きをする。
「射撃以外?」
「ああ」
アイダは指を折りながら数えた。
「格闘は強い」
「乗り物も大抵乗りこなす」
「爆発物の扱いも上手い」
「サバイバル技術も一流だ」
ダイヤが呆れたように言う。
「便利すぎない?」
「だろ?」
アイダは笑った。
「でも射撃だけは下手なんだよ」
「本人も認めてる」
ダイヤが半眼になる。
「それ、褒めてるの?」
アイダは即答した。
「褒めてねぇ」
一拍。
「口は悪いし」
「不真面目だし」
「問題児だ」
結依が苦笑する。
「散々ですね……」
アイダは少し笑みを浮かべて言う。
「だが腕は確かだ」
そして、他の隊員たちの話へ移る。
「テリオスは小柄だが、元格闘家」
「ディックは二メートル超えの怪力馬鹿」
「メリーは射撃の名手だ」
結依が反応する。
「射撃の名手?」
アイダは頷いた。
「ああ」
一拍。
「ラストライトには射撃の三大名手がいる」
「サンチェス」
「ケイト」
「そしてメリーだ」
そう言ったアイダの表情には、珍しく素直な評価が浮かんでいた。
ルビィが感心する。
「すごいメンバーですね」
「だから第一部隊なんだ」
アイダは前を見る。
「急ぐぞ」
◆戦闘地点
数分後。
B班は戦闘現場へ到着した。
そして。
結依が思わず息を呑む。
「すご……」
赤いレヴロスト四体。
その四体を相手に。
たった五人で戦っていた。
ロックが巨大な戦斧を振るう。
――ガァン!!
赤いレヴロストの拳を弾き返した。
横では。
ディックがレヴロストの腕を掴み、無理やり動きを止めている。
――ギギギギギッ!!
怪力同士のぶつかり合いだった。
「おおおおおっ!!」
ディックが吠える。
レヴロストも負けじと押し返す。
その間。
テリオスが背後へ回り込んだ。
軽い身のこなし。
まるで踊るようだった。
ヘルムズは別のレヴロストの攻撃を回避している。
「遅ぇ遅ぇ!」
蹴り。
肘打ち。
回避。
反撃。
流れるような動きだった。
さらに後方。
メリーがライフルを構えていた。
冷静に戦場全体を見ている。
ルビィが呟く。
「強い……」
結依も頷いた。
「赤いレヴロストと互角……」
アイダが笑う。
「だから精鋭なんだよ」
そして叫んだ。
「ロック!!」
ロックが振り向く。
「アイダか」
ヘルムズも気付いた。
「おっ」
「生きてたか」
「死ぬか馬鹿」
アイダが返す。
ヘルムズは笑う。
「残念」
「うるせぇ」
アイダは呆れた。
「加勢するぞ!」
ロックが短く答える。
「助かる」
アイダ。
ルビィ。
結依。
三人が戦闘へ加わる。
戦況が一気に傾いた。
ロックが叫ぶ。
「ディック!」
「押さえろ!」
「おう!」
ディックがレヴロストへ体当たりする。
巨体が揺れた。
その瞬間。
ロックが腰から特殊なハンマーを抜く。
トンカチほどの大きさ。
だが。
柄のボタンを押した。
ガシャッ。
柄の一部がしなる。
ロックはハンマーを回転させた。
ブンッ!!
遠心力。
そして。
――ドゴォン!!
ヘルメットへ直撃。
装甲が砕ける。
「頭部露出!」
メリーが即座に引き金を引いた。
――パンッ!!
一体目撃破。
ヘルムズも動く。
「おらァ!!」
ハンマーを振り抜く。
――ガァン!!
二体目のヘルメットが砕けた。
「おらァ!頭開いたぞ!」
「はい!」
――パンッ!!
ルビィが頭部を撃ち抜く。
二体目撃破。
テリオスは赤いレヴロストの肩へ飛び乗った。
「はい失礼しまーす」
ハンマーを振るう。
――ドゴン!!
ヘルメット破壊。
「ここも頼む!」
「了解!」
――パンッ!!
結依が三体目撃破。
残る一体。
アイダが正面から突撃する。
拳。
蹴り。
連撃。
レヴロストの注意を引き付ける。
その隙に。
ヘルムズが背後へ回った。
「終わりだ」
――ドゴォン!!
最後のヘルメットが砕け散る。
メリーと結依が同時に射撃した。
――パンッ!!
――パンッ!!
赤いレヴロストは崩れ落ちた。
戦闘終了。
静寂。
荒野に風が吹く。
ヘルムズが倒れたレヴロストを見下ろした。
「赤いな」
一拍。
「趣味悪ぃ」
テリオスが笑う。
「黒で十分怖かっただろ」
ディックも頷いた。
「赤いレヴロスト強かったぞ」
メリーが腕を組む。
「普通の個体じゃないわね」
ロックがアイダを見る。
「知っているのか」
「ああ」
アイダは頷いた。
「ネメシス製だ」
沈黙。
ヘルムズが顔をしかめた。
「最悪じゃねぇか」
テリオスも呟く。
「ネメシスはレヴロストまで改造してんのかよ」
ヘルムズが頬を描きながら言う。
「あいつら暇なのか?」
すると。
アストラが前へ出た。
『解析結果を報告します』
『この個体は全身の約四三パーセントが機械化されています』
第一部隊の視線が集まる。
『虫型サイボーグおよびハウンド型サイボーグと同一技術を確認』
『ネメシスによる改造個体である可能性が極めて高いです』
メリーが息を吐く。
「面倒な話ね」
ロックも頷いた。
「ああ」
ヘルムズは頭を掻いた。
「ネメシスの連中よ」
「色変えたら強そうに見えるとか思ったのか?」
一拍。
「赤く塗る予算あるなら弱くしとけって話だ」
テリオスが吹き出した。
ディックも笑う。
アイダは呆れた顔をする。
だが。
誰も油断はしていなかった。
ネメシス。
赤いレヴロスト。
新たな脅威は、確実に近づいていた――。
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