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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章肆】宝石(星)の系譜/停戦の誘いと銀の牙

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208/218

✮停戦の使者

更新日を変更のお知らせ。

【毎週平日の月曜と金曜の朝6時】


今後ともよろしくお願いします。

 ――A班。

◆崩壊都市外縁部・中央

 誰も動かない。

 瓦礫の街に静寂が広がる。

 残されたのはA班。

そして五体の黒いレヴロストだった。


 アリスベルは拳銃を下ろさない。

 サンチェスとアシュリーも射線を維持している。

 テストとケイトも警戒を解いていなかった。


 そんな中。

 黒いレヴロストの一体が前へ出た。

「まず誤解を訂正する」

 機械的な声が響く。

「我々は諸君らを攻撃するために現れたのではない」


 サンチェスが鼻で笑う。

「信用できると思うか?」


「理解している」

 レヴロストは即答した。

「だが事実だ」

 一拍。


「我々は現在、ラストライトとの停戦に向けて動いている」


 その言葉に全員の表情が変わる。


 アシュリーが眉をひそめた。

「停戦……?」


 レヴロストは続ける。

「総合知性体アイオーン・ゼロの命令だ」

「今回の行動も、その一環である」


 サイモンが首を傾げた。

「だから助けてくれたのか?」


 レヴロストは頷く。

「そうだ」

「諸君らが壊滅することは、休戦交渉において望ましくない」


 ケイトが腕を組む。

「それで夜が急に終わったのか?」


 レヴロストは空を見上げた。

「その通りだ」

「アイオーン・ゼロへ連絡し、ナノマシン制御によって夜の終了時刻を前倒しした」


 テストが小さく呟く。

「やっぱりお前たちか」

「夜が終わるのが早かった」


 黒いレヴロストは頷く。


 全員が違和感を覚えていた。

 今回の夜は短かった。


 レヴロストは続ける。

「ハウンドの群れは明るい時間を嫌う」

「そのため撤退した」


 レオが静かに聞く。

「つまり俺たちを助けるためにやったと?」


 レヴロストは答える。

「その認識で問題ない」


 その瞬間だった。

「ふざけるな」

 低い声。

 アリスベルだった。

 全員の視線が集まる。

 蒼い瞳に怒りが宿っている。

「助けた?」

 アリスベルが一歩前へ出る。

「誰のせいで人類がこんな状況になったと思っている」


 レヴロストは答えない。


 アリスベルの声がさらに低くなる。

「街を壊し」

「人を殺し」

「人を保管し」

「今さら助けただと?」

 空気が張り詰めた。


 レオですら口を挟まない。

 普段のアリスベルなら感情を表に出さない。

 だが今は違った。

 怒っている。

 本気で。


 ケイトが肩を掴む。

「アリスベル」

「落ち着け」

「今ここで壊したら話は終わりだ」


 アリスベルはレヴロストから目を離さない。

「離せ、ケイト」


 ケイトの肩を掴む力がつよまる。

「嫌だね」

「今は話を聞け」


 アリスベルがケイトを見る。

「……」


 ケイトは低い声で言う。

「殴るのは後でもできる」


 数秒の沈黙。


 やがてアリスベルは舌打ちした。

「……続けろ」


 レヴロストが再び話し始める。

「個体名アイダを仲介により」

「現在、個体名クレアとの接触を試みている」


 レオが反応した。

「クレアと?」


 レヴロストは軽く頷く。

「そうだ」

「ラストライトとの休戦交渉を希望している」


 サイモンが感心したように言う。

「へぇ、本気なんだな」


 するとアリスベルが聞いた。

「アイダは認めたのか?」


 レヴロストは首を横に振る。

「私は個体名アイダとは直接会っていない」

 一拍。


「だが個体名アイダは、この件を個体名クレアへ一任したと聞いている」


 アリスベルの眉がわずかに動いた。

 完全には納得していない。

 だが意外だった。

 アイダが反対しなかったことが。


 そのときだった。

 サイモンがレヴロストを見ながら言う。

「それにしても」

「お前、めちゃくちゃ喋るんだな」


 レヴロストは沈黙する。


 代わりにサンチェスが答えた。

「昔はこんなもんだった」

 全員が見る。

 サンチェスは懐かしそうに言った。

「戦争初期のレヴロストは結構喋ってた」

「最近の奴らが無口なだけだ」


 ケイトが吹き出す。

「サンチェス」


「なんだ?」


「お前もアイオーンでレヴロストにしてもらえば静かになるかもな」


 サンチェスがニヤリと笑った。

「お前もな」


 次の瞬間。

 ――バゴッ!!

 鈍い音。

 ケイトの蹴りがサンチェスの脇腹に突き刺さった。


「ぐはっ!?」

 サンチェスが痛がる。


 アシュリーが額を押さえる。

「始まった……」


 ケイトが続ける。

「誰が改造なんてされるか」

「冗談だろ!?」


 サイモンが笑う。

 テストが呆れる。

 アシュリーはため息を吐く。

 

 だが。

 アリスベルだけは笑わない。

 蒼い瞳は黒いレヴロストを睨み続けていた。


 そんな騒がしい光景を前に。

 五体の黒いレヴロストは黙って立っていた。

 まるで。

 人類という生き物を観察するかのように――。


 アリスベルは腕を組んだままレヴロストを睨む。

「仮の休戦状態だと言うなら」

 一拍。


「情報共有くらいしろ」

 冷たい声だった。

「聞きたいことがある」


 レヴロストが頷く。

「何だ」


 アリスベルの蒼い瞳が細くなる。

「あの蒼い銀狼は何だ」


 空気が変わった。

 レオも視線を向ける。

 サンチェスも。

 アシュリーも。

 全員が答えを待った。


 レヴロストは数秒沈黙する。

 そして答えた。

「ネメシスが新たな兵器開発を進めている」

 一拍。


「恒星の光の下でも活動可能なサイボーグだ」


 サイモンが眉を上げる。

「つまり」

「あの銀狼もそうなのか?」


「そうだ」

 レヴロストは即答した。

「蒼き銀狼」

「そして赤いレヴロスト」

「どちらも恒星エネルギー対応型だ」


 テストが顔をしかめる。

「面倒な話だな……」


 今までアイオーンも人類は明るい時間を利用して戦ってきた。

 その優位性が崩れる。


 レヴロストは続ける。

「特にお前たちのいう蒼き銀狼は危険だ」


 その言葉にレオが反応した。

「強いからか?」


「それもある」

 レヴロストは頷く。

「速度」

「出力」

「戦闘能力」

「全て高水準だ」

 一拍。


「だが最も危険なのは知性だ」

 その場の全員が黙る。


「知性?」

 アシュリーが聞き返す。


 レヴロストが説明する。

「蒼き銀狼は言語による会話を行わない」

「しかし報告がある」

 一拍。


「直接、意識へ語りかけてくる」


 ケイトが眉をひそめた。

「なんだそれ」


 サンチェスも嫌そうな顔になる。

「気味が悪ぃな」


 レオは黙る。

(だからか……)

 あのとき。一瞬だけ。何かを感じた気がした。


 レヴロストは淡々と説明を続けた。

「現在確認されている個体は、一体のみだ」

 一拍。


「おそらくプロトタイプだろう」


 アシュリーが不安そうな表情を浮かべる。

「プロトタイプってことは……」

「今後はもっと強い個体が出てくるんですか?」


 レヴロストは少し考えるような間を置いた。

「単純な性能なら強くなるが、戦略には知能は欠かせない」

 全員の視線が集まる。

「知能を与えられた個体は、自ら成長を始める」

「個性が生まれ、感情が芽生える」

「そして、命令に従わなくなる個体も現れる」

 そう言って、前にいるのアリスベルへ視線を向けた。

「そこのアリスベルのようにな」


 アリスベルの蒼い瞳が細くなる。

「……余計な説明だ」

 低い声だった。


 テストが苦笑する。

「否定しねぇのかよ」


「事実だからな」

 アリスベルはそれだけ答えた。


 サンチェスが腕を組む。

「つまり、頭が良くなりすぎると勝手なことを始めるって話か?」


「そうだ」

 レヴロストは頷いた。

「制御を重視した完成型より、自由度の高いプロトタイプの方が予測不能な行動を取る」


 ケイトが眉をひそめる。

「それ、兵器として失敗作じゃないのか?」


「兵器としては失敗だ」

 レヴロストは即答した。

「だが、敵としては厄介だ」

 一拍。


「命令よりも、自らの判断を優先するからな」


 その言葉に、その場の空気が少し重くなる。


 テストが低く呟いた。

「なるほどな……」

「だから、あの銀毛のハウンドは嫌な動きをしてたのか」


 サンチェスも顔をしかめる。

「あいつ、ただ強いだけじゃなかったからな」


 レヴロストは静かに頷いた。

「完成型は制御されている」

「だが、プロトタイプは違う」

「だからこそ、厄介な個体が多い」


 その言葉に、誰も反論しなかった。

 レオは黙っていた。

 あの蒼い瞳を思い出していた。

 獣というより。

 何か別の存在。

 そんな感覚があった。


 レヴロストはさらに続ける。

「そして赤いレヴロストも危険だ」

「現時点で我々アイオーン製レヴロストを上回る性能を有している」


 テストが思わず舌打ちする。

「あれより強い奴が出てくるってことか」


「その可能性は高い」

 レヴロストは空を見上げた。

「ネメシスは進化を続けている」

 一拍。


「おそらく今後」

「さらに性能向上型のレヴロストが投入されるだろう」


 誰も軽口を叩かなかった。

 冗談では済まない話だった。

 戦場の空気が重くなる。


 そのとき。

 レヴロストが再び空を見上げた。

「今回の明るい時間は短い」

 一拍。


「またすぐに暗くなる」


 レヴロストは四体の仲間を見る。

「我々は撤収する」

 そして最後に言った。

「個体名クレアとの交渉が成功した場合」

「再び接触する」


 そう言い残し。

 五体の黒いレヴロストは背を向ける。

 ゆっくりと。

 だが迷いなく。

 瓦礫の街の奥へ消えていった。


 誰も追わない。

 ただ見送る。

 やがて。

 最後の黒い機影も見えなくなった。


 静寂。


 残されたA班の誰もが考えていた。

 蒼き銀狼。

 赤いレヴロスト。


 そして――休戦。

 戦いは終わっていない。

 むしろ。

 これから新たな局面へ進もうとしていた――。



 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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