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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章肆】宝石(星)の系譜/停戦の誘いと銀の牙

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206/218

✮蒼き指揮官

更新日を変更のお知らせ。

【毎週平日の月曜と金曜の朝6時】


今後ともよろしくお願いします。

 ――A班。

◆崩壊都市外縁部・夜

 ――オォォォォォォン!!

 蒼き銀狼の遠吠えが夜空へ響く。

 直後。

 黒いハウンド。

 赤いハウンド。

 青いハウンド。


 三五体の群れが一斉に動いた。


 その進路上にいたレオは身構える。

 だが。


 違和感。

 群れは速度を落とさない。

 真っ直ぐ走る。


 そして――。

 レオの横を通り過ぎた。


「なっ……?」

 レオの目が見開かれる。

 次の瞬間。

 全てを理解した。

「また、この作戦か……」

 一拍。


「俺じゃない」


 群れの狙いは。

 さらに奥。

 二体の赤いレヴロストと戦うサイモンだった。


 後方からアシュリーが叫ぶ。

「このパターン!」

 一拍。


「〇八部隊が壊滅した時と同じです!!」


 サンチェスも顔色を変える。

「囮だ!」

「レオを囮に使いやがった!」


 すでにハウンドの群れはサイモンへ向かっていた。

 赤。

 黒。

 青。

 三五体。

 まるで濁流だった。

 ――ダダダダダダッ!!

 サンチェスがライフルを連射する。

 数体が倒れる。

 アシュリーも続く。

 ――パンッ!!

 ――パンッ!!

 黒いハウンドと赤いハウンドの頭部が吹き飛ぶ。


 だが。

 足りない。

 数が多すぎる。


「くそっ!」

 サンチェスが叫ぶ。

「止まらねぇ!」


 テストも状況に気付いた。

「レオが銀狼とハウンドの群れに挟まれたんじゃない!」

 一拍。


「最初からサイモン狙いだ!」


 ケイトが舌打ちする。

「くそっ!」

「間に合わない!」


 その頃。

 アリスベルも全力で駆けていた。

 だが。

 群れから三体の青いハウンドが飛び出す。


 進路を塞ぐ。

 完全な足止めだった。


 アリスベルの目が細くなる。

 ――バンッ!!

 一体。

 さらに。

 ――バンッ!!

 二体目。

 だが。

 三体目が飛び掛かる。


 わずかに時間を奪われる。

 その一瞬が致命的だった。


◆崩壊都市外縁部・中央

 サイモンは二体の赤いレヴロストを相手に戦っていた。

 拳を受け流す。

 蹴りを避ける。

 反撃する。

 だが余裕はない。

 そのとき。

 レオの叫びが聞こえた。

「サイモン!!」


 サイモンが反射的に振り返る。

「あ?」


 そして。

 見た。

 押し寄せる三〇体のハウンド。

「えー!?」

 一拍。


「なんだよアレ!?」

「俺狙いかよ!!」

 顔が引きつる。


 二体の赤いレヴロスト。

 三〇体のハウンド。

 完全な包囲。


 絶体絶命だった。


 だが――。

 その瞬間。

 サイモンとハウンドの間へ。


 三つの黒い影が降り立つ。

 ――ドゴォォォン!!

 重い着地音。


 土煙が舞う。

 黒い装甲。

 黒い光学眼。

 レヴロスト。


「なに……?」

 サイモンが目を見開く。


 そして。

 離れた場所でアリスベルが呟いた。

「アイオーン……」


 三体の黒いレヴロストがハウンドの群れへ突撃する。

 拳。

 蹴り。

 銃撃。

 先頭のハウンドたちが次々と吹き飛んだ。

 さらに。

 別方向から二体の黒いレヴロストが現れる。

 そして。

 二体の赤いレヴロストへ攻撃を開始した。

 ――ガァァァン!!

 鋼鉄同士の激突。

 火花が散る。

 戦場の構図が一変した。


 テストが思わず呟く。

「五体のレヴロスト……」


 ケイトが目を細める。

「助けてくれてるのか?」


 だが。

 誰にも答えは分からなかった。

 そのとき。


 ――ウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 再びサイレンが鳴る。

 全員が空を見上げた。


 夜空が変わる。

 闇が消える。

 光が戻る。

 朝ではない。

 だが。

 夜の終わりだった。


 同時に。

 銀狼が天を仰ぐ。

 そして。

 もう一度だけ遠吠えを上げた。

 ――オォォォォォォォォン!!

 命令だった。


 その瞬間。

 ハウンドたちが反転する。

 撤退。

 一切の迷いがない。


 赤いハウンド。

 黒いハウンド。

 青いハウンド。

 全てが瓦礫の向こうへ消えていく。


 さらに。

 二体の赤いレヴロストも後退を始めた。

 追撃する黒いレヴロスト。

 だが追いつかない。

 驚異的な速度で距離を離されていく。


 最後に残ったのは。

 蒼き銀狼だった。

 銀狼は振り返る。

 蒼い瞳がレオを捉える。


 数秒。

 互いに動かない。

 静かな睨み合い。


 やがて。

 銀狼はゆっくりと背を向けた。

 そして。

 赤いレヴロストたちの後を追うように去っていく。


 レオは黙ってその背中を見送った。

 一拍。


「……覚えられたな」

 小さく呟く。

 その言葉を聞いた者はいなかった。

 戦場には静寂が戻る。


 残されたのは。

 A班。

 そして。

 五体の黒いレヴロストだけだった――。

 誰も動かない。

 奇妙な緊張が漂っていた。


 そんな空気を破ったのは――。

 サイモンだった。

「おーい!」

 大きく手を振る。

「助かったぞ!」

「ありがとな!」


 テストが顔をしかめた。

「あいつ……」


 ケイトも呆れたように額を押さえる。

「相変わらず警戒心がゼロだな」

 それでも二人はセグダを降りる。

 拳銃を構えたまま。

 警戒しながら黒いレヴロストへ近付いていく。


 サンチェスとアシュリーも射線を維持したまま様子を見守る。


 そのときだった。

 レオの横を黒い影が駆け抜ける。

 一瞬だった。


「――ッ!」

 レオが目を見開く。


 アリスベルだった。

 凄まじい速度。

 一直線。

 黒いレヴロストへ向かっていく。


 レオが慌てて叫んだ。

「ま、待っ――」


 言い終わるより早い。

 アリスベルが跳んだ。

 身体を捻る。

 そして。

 鋼鉄すら砕く蹴りを放った。

 狙いはレヴロストの頭部。


 ――バゴォッ!!

 凄まじい衝撃音が響く。

 地面が震える。


 だが。

 黒いレヴロストは吹き飛ばなかった。

 アリスベルの蹴りは止められていた。


 全員の目が見開かれる。

「なっ……!?」

 サンチェスが絶句する。

 アシュリーも言葉を失った。

 テストとケイトも驚愕する。


 ブロックしていたのは。

 黒いレヴロストではなかった。

 サイモンだった。

 両腕を交差させ。

 アリスベルの蹴りを受け止めている。


「ほぉぉぉぉぉっ……」

 サイモンの顔が歪む。

「いてぇぇぇぇ……」

 一拍。


「めちゃくちゃ痛ぇ……」

 腕をぶらぶら振る。


 サンチェスが思わず呟いた。

「おいおい……アリスベルの蹴りを止めたぞ、アイツ……」


 アシュリーも唖然とする。

「普通なら腕ごと持っていかれてますよ……」


 アリスベルの蒼い瞳が細くなる。

「どけ」

「異星人」

 低い声だった。


 だが。

 サイモンは引かない。

「いやいや」

 痛そうに腕をさすりながら言う。

「助けてくれたんだぞ?」


 一拍。

「敵なのは分かってる」

「アリスベルちゃんがアイオーンを憎んでるのも分かる」

 真っ直ぐアリスベルを見る。

「でもさ」

 一拍。


「少しくらい話してからでもいいだろ?」


 沈黙。


 風が吹く。

 瓦礫の隙間を抜けていく。


 アリスベルの眉がわずかに動く。

 アイオーン。その名だけで怒りが込み上げる。

 だが。

 目の前の黒いレヴロストは攻撃してこない。


 ただ。

 蒼い瞳は黒いレヴロストを睨み続ける。

 そして。

 ゆっくりと視線をサイモンへ移した。


 数秒。

 沈黙が続く。

 やがて。

 アリスベルが口を開いた。

「……分かった」

「少しだけだぞ」


 サイモンの顔に笑みが浮かぶ。

「よし」

「交渉成立だな」


 その言葉に。

 ケイトが呆れたようにため息を吐いた。

「誰も交渉なんて言ってねぇだろ……」


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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