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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章肆】宝石(星)の系譜/停戦の誘いと銀の牙

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204/218

✮体当たり

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

 ――B班。

◆荒野地帯・夜

 ――カサカサカサカサカサッ!!

 無数の虫型サイボーグが荒野を埋め尽くしていた。


「いやぁぁぁぁぁ!!」

 ダイヤが半泣きで叫ぶ。

「こっち来ないでぇぇぇ!!」


 ルビィと結依も虫から距離を取り、少し離れた位置から銃撃を始める。

 ――パンッ! パンッ! パンッ!

 弾丸が虫型サイボーグを撃ち抜く。


「右から!」

 結依が叫ぶ。


「分かってる!」

 ルビィも撃ち続けた。


 だが。

 二人とも虫へ対応するので精一杯だった。


 そして――。

 少し離れた場所では、もう一つの戦いが始まっていた。


 アイダはハンマーを構え、赤いレヴロストを鋭く睨みつける。

「赤いの……」

 一拍。


「さっきみたいにはいかないぞ」


 次の瞬間。

 赤いレヴロストが地面を砕きながら突進した。


 アイダも真正面から駆け出す。

 互いに一歩も引かない。


 そして――。

 ――ガァァァン!!

 ハンマーと鋼鉄の拳が正面から激突した。


 凄まじい衝撃が周囲へ広がる。

 火花が弾け、足元のアスファルトに亀裂が走った。

 力と力。

 純粋な破壊力同士のぶつかり合いが始まった。


 アイダと赤いレヴロストの激しい攻防は続いていた。

 だが、スピードでは赤いレヴロストが一枚上手だった。


 アイダのハンマーが唸りを上げる。

 ――ブォンッ!!

 だが命中しない。


 赤いレヴロストは紙一重で身をかわし、距離を取り直す。


「ちっ……!」

 アイダは舌打ちした。

 ならば、と戦い方を変える。

 再びハンマーを振り上げる。

 赤いレヴロストが回避行動に入った瞬間――。


 フェイント。

 アイダはハンマーを止め、そのまま踏み込んだ。


 ――ドゴッ!!

 鋭い前蹴りが腹部へ突き刺さる。

 さらに回し蹴り。

 そして膝蹴り。

 連続攻撃。


 赤いレヴロストがわずかによろめいた。


「まだだ!」

 アイダはさらに追撃する。

 今度は蹴りの構え。

 赤いレヴロストが防御に意識を向けた。


 その瞬間。

 蹴りもフェイント。

 アイダは身体を捻り、ハンマーを全力で振り抜いた。


 ――ゴォォォン!!

 重い衝撃音。

 ハンマーが赤いレヴロストの頭部へ直撃する。

 ヘルメットに亀裂が走った。


 だが――。

 砕けない。

 赤いレヴロストは数歩よろめきながらも踏みとどまった。


 ヘルメットには確かに傷が刻まれている。

 しかし致命傷には程遠い。


 アイダはハンマーを構え直した。

「……やっぱり硬ぇな」


 そして。

 次は、赤いレヴロストが動いた。

 ――ドンッ!!

「ぐっ!?」

 腹部へ膝蹴り。


 アイダの動きが止まる。

 さらに。

 ――バゴォォォン!!

 蹴り。


 アイダの身体が吹き飛んだ。

 地面を何度も転がる。

「がっ……!」


 同時に。

 ハンマーが手から離れた。

 ――ガランッ。

 武器は遠くの瓦礫の向こうへ消える。


 アイダの顔が歪んだ。

「しまった……!」


 赤いレヴロストがゆっくり近付いてくる。

 その赤い光学眼は冷たい。

 勝利を確信しているようだった。


 アイダは銃を抜く。

 だが分かっていた。

 頭部装甲を破壊できなければ意味がない。


 一方。

 虫型サイボーグに囲まれたダイヤは。

「虫ぃぃぃぃ!!」

「絶対無理ぃぃぃぃ!!」

 完全に戦闘不能だった。


 アストラが一歩前へ出た。

『ダイヤさんの防衛を継続します』

 直後。

 迫ってきた虫型サイボーグを右腕で的確に迎撃した。

 ――ガンッ!

 ――バキィッ!

 金属音が響き、数体の虫型サイボーグがまとめて吹き飛ばされた。


 その前方では、フェザーも必死に戦っていた。

「きゅっ!」

 小さな身体で虫型サイボーグへ体当たりし、ダイヤへ近づかせない。

 まるで自分が護衛だと言わんばかりだった。


 その光景を見たルビィが目を丸くする。

「アストラが戦ってるの、私初めて見たかも」


 結依がくすりと笑った。

「確かにレアかも」

 一拍。


「今日は色々と珍しいものが見られるね」


 そして、懸命に戦うフェザーへ視線を向ける。

「フェザーも凄いなぁ」

 思わず頬が緩む。

「すごく頼もしいじゃん」


 フェザーは再び虫型サイボーグへ突撃していった。

「きゅーっ!」

 それでも数は減らない。


 ――そのころ。

 アイダは舌打ちした。

「くそっ!」

 一拍。


「ダイヤ!!」


 アイダは大声で叫ぶ。

「五秒でいい!」

「こっち来い!!」


 遠くから即答。

「無理ぃぃぃぃぃ!!」

「虫ぃぃぃぃぃぃ!!」


 アイダが叫ぶ。

「あの婆さま!!」


当然のように返事が返ってくる。

「無理ぃぃぃぃ!!」

「虫ぃぃぃぃぃ!!」


「くそっ!」


 赤いレヴロストの腕部から、赤く輝くレーザーナイフがせり出した。


 次の瞬間。

 ――消えた。

 一気に距離を詰める。


 アイダは咄嗟に身を捻り、斬撃を回避した。

 だが。

 ――バゴッ!

 続けざまの膝蹴りが腹部へめり込む。

 衝撃にアイダの身体がくの字に折れた。

「ぐっ……!」

 一瞬、動きが止まる。


 そのときだった。

 小さな影が、アイダの横を駆け抜ける。


「きゅっ!」

 フェザーだった。

 体長三〇センチほどのモコモコした小動物。

 普段なら、誰も戦力として数えない。

 だが今のフェザーには、迷いがなかった。


 一直線。

 赤いレヴロストへ向かって突撃する。

 そして――。

 ――ドゴォン!!

 鈍い衝撃音が響いた。


 レヴロストの身体がわずかに揺れる。

 一歩。

 たった一歩だけ。

 しかし確かによろめいた。

 赤いレヴロストが初めて視線を落とす。


 そこには、小さな身体を踏ん張りながら睨み返すフェザーの姿があった。

「きゅぅっ!」


 その小さな背中は、不思議なほど頼もしく見えた。


 アイダが目を丸くした。

「……は?」


 赤いレヴロストも困惑していた。

 理解できない。

 小動物の体当たり。

 なのに重い。


 フェザーは着地する。

 そして。

「きゅっ!」

 再び突撃。


 ――ガン!!

 頭部へ命中。

 レヴロストの首がわずかに揺れる。


 アイダが笑った。

「なるほどな」

 一拍。


「お前、戦えるのか」


 フェザーが振り返る。

「きゅっ!」

 その瞳には迷いがなかった。


 アイダは銃を構える。

「フェザー!」

 一拍。


「頭を狙え!!」


「きゅっ!!」

 返事は一瞬だった。

 フェザーが走る。


 レヴロストも迎撃する。

 拳。

 だが。

 フェザーは小さい。

 拳が空を切る。


 そのまま。

 飛んだ。

 ――ドゴォォォォン!!

 体当たり。


 ヘルメットへ直撃。

 亀裂。

 レヴロストがよろめく。

 だがまだ足りない。


 アイダが叫ぶ。

「もう一発だ!!」


「きゅぅぅぅぅっ!!」

 フェザーが全力加速。

 荒野を一直線に駆ける。


 そして。

 最後の体当たり。

 ――バキィィィィィン!!

 ヘルメットが砕け散った。


 赤いレヴロストの頭部が露出する。

 アイダは待っていた。

 照準。

 呼吸。

 引き金。

 ――パンッ!!

 銃声。


 弾丸が頭部を貫いた。


 一瞬の静寂。

 そして。

 赤いレヴロストの身体が停止する。

 巨体はそのまま崩れ落ちた。

 ――ズシン。


 アイダは大きく息を吐く。

「助かったぞ」


 フェザーが胸を張る。

「きゅっ!」


 アイダが頭を撫でる。

「お前、思ったより頼りになるな」


 フェザーは嬉しそうに耳を動かした。


 だが。

 その直後。

 ――カサカサカサカサカサッ!!

 無数の音。


 アイダが振り返る。

「まだ終わってねぇか」

 そこには大量の虫型サイボーグ。


 ルビィと結依が後退しながら射撃を続けていた。

 ――パンッ!  ――パンッ!  ――パンッ!

 何匹かは倒れる。

 だが数が多い。


「多すぎっ!」

 結依が叫ぶ。

「次から次へ出てくる!」


 ルビィも銃を撃ちながら頷く。

「気持ち悪い!」


 すると。

 少し離れた場所。


「いやぁぁぁぁぁ!!」

 虫型サイボーグに囲まれたダイヤが叫んでいた。

「フェザー帰ってきてぇぇぇぇ!!」

「私を置いていかないでぇぇぇぇ!!」


 アイダが思わず振り返った。

「お前なぁ……」


 アストラの後ろに隠れている。

『ご安心ください』

 アストラは冷静だった。

『現在、虫型サイボーグは半径三メートル以内へ侵入できていません』


 ダイヤが叫ぶ。

「そういう問題じゃない!」

「見た目が無理なの!」


 アイダが呆れた顔になる。

「……お前ら異星人は虫が苦手なのか?」


 ルビィが苦笑した。

「実は、この星へ来る前に寄った地下都市で……」

 一拍。


「ちょっと虫で嫌な経験がありまして」


 結依も苦笑する。

「しかも見た目が結構似てるんです」


「トラウマってやつか」

 アイダが納得したように言う。


「そんな感じです……」

 ルビィが遠い目になる。


 その間にも。

 虫型サイボーグは迫ってくる。


 アイダは拳銃を構えた。

「フェザー」


「きゅっ!」


「手伝え」


「きゅう!」


 一人と一匹が同時に突撃する。

 フェザーが跳ぶ。

 ――ドゴン!

 体当たり。

 虫型サイボーグが吹き飛ぶ。


 さらに。

 アイダが射撃。

 ――パンッ!!  

 ――パンッ!!

 頭部を正確に撃ち抜く。


 フェザーが左。

 アイダが右。

 即席とは思えない連携だった。


 ルビィが思わず呟く。

「なんか息合ってません?」


 結依も頷く。

「合ってるね」


「そりゃそうだ」

 アイダが撃ちながら答える。

「こいつ賢い」


 フェザーが得意げに鳴く。

「きゅっ!」


 そして。

 数分後。

 最後の一匹が倒れた。


 夜の荒野に静寂が戻る。

 虫型サイボーグの残骸が転がっていた。

 ようやく戦闘終了だった。


 すると。

 ダイヤが全力で駆け寄る。

「フェザーーーーっ!!」

 抱き上げた。

 ぎゅううううっ。

「偉い!」

「偉いよフェザー!」

「ありがとう!」

「助かったぁぁぁぁ!!」

 半泣きである。


 フェザーも嬉しそうだった。

「きゅう♫」


 その様子を見たアイダが呆れた顔になる。

「お前も戦え」


 ダイヤが即答した。

「無理」


「即答かよ」


「虫だから」


「理由になってねぇ」


 ルビィが苦笑する。

「いや、ダイヤさん本当にダメなんですよ」


 結依も頷いた。

「さっき完全にパニックでしたし」


 アイダは深いため息を吐く。

「赤いレヴロスト相手に無双してた奴と同一人物とは思えねぇな……」


 ダイヤはフェザーを抱いたまま胸を張った。

「適材適所だよ」


「違うだろ」

 アイダのツッコミが夜の荒野へ響いた。


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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