✮体当たり
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月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話
※日曜・祝日はお休みです。
――B班。
◆荒野地帯・夜
――カサカサカサカサカサッ!!
無数の虫型サイボーグが荒野を埋め尽くしていた。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
ダイヤが半泣きで叫ぶ。
「こっち来ないでぇぇぇ!!」
ルビィと結依も虫から距離を取り、少し離れた位置から銃撃を始める。
――パンッ! パンッ! パンッ!
弾丸が虫型サイボーグを撃ち抜く。
「右から!」
結依が叫ぶ。
「分かってる!」
ルビィも撃ち続けた。
だが。
二人とも虫へ対応するので精一杯だった。
そして――。
少し離れた場所では、もう一つの戦いが始まっていた。
アイダはハンマーを構え、赤いレヴロストを鋭く睨みつける。
「赤いの……」
一拍。
「さっきみたいにはいかないぞ」
次の瞬間。
赤いレヴロストが地面を砕きながら突進した。
アイダも真正面から駆け出す。
互いに一歩も引かない。
そして――。
――ガァァァン!!
ハンマーと鋼鉄の拳が正面から激突した。
凄まじい衝撃が周囲へ広がる。
火花が弾け、足元のアスファルトに亀裂が走った。
力と力。
純粋な破壊力同士のぶつかり合いが始まった。
アイダと赤いレヴロストの激しい攻防は続いていた。
だが、スピードでは赤いレヴロストが一枚上手だった。
アイダのハンマーが唸りを上げる。
――ブォンッ!!
だが命中しない。
赤いレヴロストは紙一重で身をかわし、距離を取り直す。
「ちっ……!」
アイダは舌打ちした。
ならば、と戦い方を変える。
再びハンマーを振り上げる。
赤いレヴロストが回避行動に入った瞬間――。
フェイント。
アイダはハンマーを止め、そのまま踏み込んだ。
――ドゴッ!!
鋭い前蹴りが腹部へ突き刺さる。
さらに回し蹴り。
そして膝蹴り。
連続攻撃。
赤いレヴロストがわずかによろめいた。
「まだだ!」
アイダはさらに追撃する。
今度は蹴りの構え。
赤いレヴロストが防御に意識を向けた。
その瞬間。
蹴りもフェイント。
アイダは身体を捻り、ハンマーを全力で振り抜いた。
――ゴォォォン!!
重い衝撃音。
ハンマーが赤いレヴロストの頭部へ直撃する。
ヘルメットに亀裂が走った。
だが――。
砕けない。
赤いレヴロストは数歩よろめきながらも踏みとどまった。
ヘルメットには確かに傷が刻まれている。
しかし致命傷には程遠い。
アイダはハンマーを構え直した。
「……やっぱり硬ぇな」
そして。
次は、赤いレヴロストが動いた。
――ドンッ!!
「ぐっ!?」
腹部へ膝蹴り。
アイダの動きが止まる。
さらに。
――バゴォォォン!!
蹴り。
アイダの身体が吹き飛んだ。
地面を何度も転がる。
「がっ……!」
同時に。
ハンマーが手から離れた。
――ガランッ。
武器は遠くの瓦礫の向こうへ消える。
アイダの顔が歪んだ。
「しまった……!」
赤いレヴロストがゆっくり近付いてくる。
その赤い光学眼は冷たい。
勝利を確信しているようだった。
アイダは銃を抜く。
だが分かっていた。
頭部装甲を破壊できなければ意味がない。
一方。
虫型サイボーグに囲まれたダイヤは。
「虫ぃぃぃぃ!!」
「絶対無理ぃぃぃぃ!!」
完全に戦闘不能だった。
アストラが一歩前へ出た。
『ダイヤさんの防衛を継続します』
直後。
迫ってきた虫型サイボーグを右腕で的確に迎撃した。
――ガンッ!
――バキィッ!
金属音が響き、数体の虫型サイボーグがまとめて吹き飛ばされた。
その前方では、フェザーも必死に戦っていた。
「きゅっ!」
小さな身体で虫型サイボーグへ体当たりし、ダイヤへ近づかせない。
まるで自分が護衛だと言わんばかりだった。
その光景を見たルビィが目を丸くする。
「アストラが戦ってるの、私初めて見たかも」
結依がくすりと笑った。
「確かにレアかも」
一拍。
「今日は色々と珍しいものが見られるね」
そして、懸命に戦うフェザーへ視線を向ける。
「フェザーも凄いなぁ」
思わず頬が緩む。
「すごく頼もしいじゃん」
フェザーは再び虫型サイボーグへ突撃していった。
「きゅーっ!」
それでも数は減らない。
――そのころ。
アイダは舌打ちした。
「くそっ!」
一拍。
「ダイヤ!!」
アイダは大声で叫ぶ。
「五秒でいい!」
「こっち来い!!」
遠くから即答。
「無理ぃぃぃぃぃ!!」
「虫ぃぃぃぃぃぃ!!」
アイダが叫ぶ。
「あの婆さま!!」
当然のように返事が返ってくる。
「無理ぃぃぃぃ!!」
「虫ぃぃぃぃぃ!!」
「くそっ!」
赤いレヴロストの腕部から、赤く輝くレーザーナイフがせり出した。
次の瞬間。
――消えた。
一気に距離を詰める。
アイダは咄嗟に身を捻り、斬撃を回避した。
だが。
――バゴッ!
続けざまの膝蹴りが腹部へめり込む。
衝撃にアイダの身体がくの字に折れた。
「ぐっ……!」
一瞬、動きが止まる。
そのときだった。
小さな影が、アイダの横を駆け抜ける。
「きゅっ!」
フェザーだった。
体長三〇センチほどのモコモコした小動物。
普段なら、誰も戦力として数えない。
だが今のフェザーには、迷いがなかった。
一直線。
赤いレヴロストへ向かって突撃する。
そして――。
――ドゴォン!!
鈍い衝撃音が響いた。
レヴロストの身体がわずかに揺れる。
一歩。
たった一歩だけ。
しかし確かによろめいた。
赤いレヴロストが初めて視線を落とす。
そこには、小さな身体を踏ん張りながら睨み返すフェザーの姿があった。
「きゅぅっ!」
その小さな背中は、不思議なほど頼もしく見えた。
アイダが目を丸くした。
「……は?」
赤いレヴロストも困惑していた。
理解できない。
小動物の体当たり。
なのに重い。
フェザーは着地する。
そして。
「きゅっ!」
再び突撃。
――ガン!!
頭部へ命中。
レヴロストの首がわずかに揺れる。
アイダが笑った。
「なるほどな」
一拍。
「お前、戦えるのか」
フェザーが振り返る。
「きゅっ!」
その瞳には迷いがなかった。
アイダは銃を構える。
「フェザー!」
一拍。
「頭を狙え!!」
「きゅっ!!」
返事は一瞬だった。
フェザーが走る。
レヴロストも迎撃する。
拳。
だが。
フェザーは小さい。
拳が空を切る。
そのまま。
飛んだ。
――ドゴォォォォン!!
体当たり。
ヘルメットへ直撃。
亀裂。
レヴロストがよろめく。
だがまだ足りない。
アイダが叫ぶ。
「もう一発だ!!」
「きゅぅぅぅぅっ!!」
フェザーが全力加速。
荒野を一直線に駆ける。
そして。
最後の体当たり。
――バキィィィィィン!!
ヘルメットが砕け散った。
赤いレヴロストの頭部が露出する。
アイダは待っていた。
照準。
呼吸。
引き金。
――パンッ!!
銃声。
弾丸が頭部を貫いた。
一瞬の静寂。
そして。
赤いレヴロストの身体が停止する。
巨体はそのまま崩れ落ちた。
――ズシン。
アイダは大きく息を吐く。
「助かったぞ」
フェザーが胸を張る。
「きゅっ!」
アイダが頭を撫でる。
「お前、思ったより頼りになるな」
フェザーは嬉しそうに耳を動かした。
だが。
その直後。
――カサカサカサカサカサッ!!
無数の音。
アイダが振り返る。
「まだ終わってねぇか」
そこには大量の虫型サイボーグ。
ルビィと結依が後退しながら射撃を続けていた。
――パンッ! ――パンッ! ――パンッ!
何匹かは倒れる。
だが数が多い。
「多すぎっ!」
結依が叫ぶ。
「次から次へ出てくる!」
ルビィも銃を撃ちながら頷く。
「気持ち悪い!」
すると。
少し離れた場所。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
虫型サイボーグに囲まれたダイヤが叫んでいた。
「フェザー帰ってきてぇぇぇぇ!!」
「私を置いていかないでぇぇぇぇ!!」
アイダが思わず振り返った。
「お前なぁ……」
アストラの後ろに隠れている。
『ご安心ください』
アストラは冷静だった。
『現在、虫型サイボーグは半径三メートル以内へ侵入できていません』
ダイヤが叫ぶ。
「そういう問題じゃない!」
「見た目が無理なの!」
アイダが呆れた顔になる。
「……お前ら異星人は虫が苦手なのか?」
ルビィが苦笑した。
「実は、この星へ来る前に寄った地下都市で……」
一拍。
「ちょっと虫で嫌な経験がありまして」
結依も苦笑する。
「しかも見た目が結構似てるんです」
「トラウマってやつか」
アイダが納得したように言う。
「そんな感じです……」
ルビィが遠い目になる。
その間にも。
虫型サイボーグは迫ってくる。
アイダは拳銃を構えた。
「フェザー」
「きゅっ!」
「手伝え」
「きゅう!」
一人と一匹が同時に突撃する。
フェザーが跳ぶ。
――ドゴン!
体当たり。
虫型サイボーグが吹き飛ぶ。
さらに。
アイダが射撃。
――パンッ!!
――パンッ!!
頭部を正確に撃ち抜く。
フェザーが左。
アイダが右。
即席とは思えない連携だった。
ルビィが思わず呟く。
「なんか息合ってません?」
結依も頷く。
「合ってるね」
「そりゃそうだ」
アイダが撃ちながら答える。
「こいつ賢い」
フェザーが得意げに鳴く。
「きゅっ!」
そして。
数分後。
最後の一匹が倒れた。
夜の荒野に静寂が戻る。
虫型サイボーグの残骸が転がっていた。
ようやく戦闘終了だった。
すると。
ダイヤが全力で駆け寄る。
「フェザーーーーっ!!」
抱き上げた。
ぎゅううううっ。
「偉い!」
「偉いよフェザー!」
「ありがとう!」
「助かったぁぁぁぁ!!」
半泣きである。
フェザーも嬉しそうだった。
「きゅう♫」
その様子を見たアイダが呆れた顔になる。
「お前も戦え」
ダイヤが即答した。
「無理」
「即答かよ」
「虫だから」
「理由になってねぇ」
ルビィが苦笑する。
「いや、ダイヤさん本当にダメなんですよ」
結依も頷いた。
「さっき完全にパニックでしたし」
アイダは深いため息を吐く。
「赤いレヴロスト相手に無双してた奴と同一人物とは思えねぇな……」
ダイヤはフェザーを抱いたまま胸を張った。
「適材適所だよ」
「違うだろ」
アイダのツッコミが夜の荒野へ響いた。
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