✮蒼き銀狼①
更新
月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話
※日曜・祝日はお休みです。
◆崩壊都市外縁部・夜
――ウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
サイレンが鳴り響く。
闇に染まった街。
そして。
瓦礫の向こうから、無数の赤い光が灯った。
ハウンド。
ハウンド。
ハウンド。
群れだった。
さらに後方。
二体の赤いレヴロスト。
そして銀色の毛並みが混じる異形のハウンド。
サンチェスが顔を引きつらせる。
「おいおいおい……」
一拍。
「数、多くねぇか?」
アシュリーも思わず息を呑んだ。
「こんなの初めて見ました……」
テストは周囲を見渡す。
「かなりの数だな」
サイモンが肩を回した。
「アストラがいないと正確な数が分からねぇな」
数秒後。
アリスベルが静かに口を開く。
「黒いハウンド、三三」
「赤いハウンド、二八」
「青いハウンド、二六」
「銀混じりのハウンド、一」
「赤いレヴロスト、三」
沈黙。
サイモンが感心したように笑う。
「すげぇな、アストラみてぇだ」
「さすが人造人間」
サンチェスが絶望した顔になる。
「待て待て待て」
「青が二六もいるのかよ」
その瞬間。
ケイトが叫んだ。
「青には気を付けろ!」
一拍。
「噛まれたらウイルス感染だ!」
「絶対に噛まれるな!」
アシュリーの表情が強張る。
テストがケイトを見る。
「ハウンドは連携してくる」
一拍。
「二台のセグダで群れをかき乱す」
「連携を崩すぞ」
そして。
「ケイトもセグダに乗れ」
ケイトの眉が跳ね上がった。
「私に命令するな!」
即座に言い返す。
だが。
ケイトはそのままセグダへ跨った。
「勘違いするな」
「命令されたからじゃない」
一拍。
「たまたま、お前と私の考えが一致しただけだ」
テストは苦笑いをする。
「はいはい」
「分かりましたよ、刑事さん」
――バゴッ。
「痛っ!?」
ケイトの蹴りがテストに容赦なく入った。
「また転んだりして迷惑かけるなよ、オジサン」
テストが顔をしかめる。
「相変わらずだな……」
だが。
その空気を断ち切るように。
アリスベルが前へ出た。
「配置を伝える」
全員の視線が集まる。
「サンチェスとアシュリーは後方援護」
「ハウンドを優先的に排除しろ」
二人が頷く。
「了解!」
「分かりました!」
「セグダ二台は群れへ突入」
「連携を崩せ」
ケイトとテストが同時に頷く。
「異星人の二人」
レオとサイモンを見る。
「後方の赤いレヴロスト二体と銀狼の担当を」
一拍。
「蒼い銀狼には特に注意しろ」
レオが静かに頷く。
「分かった」
サイモンも頷く。
そして。
アリスベルは前方を見据える。
「私は前の赤いレヴロストを瞬殺する」
一拍。
「その後、青いハウンドを優先的に処理する」
サイモンが苦笑した。
「瞬殺って簡単に言うな」
レオが低く呟く。
「それだけ自信があるんだろう」
アリスベルは何も答えなかった。
ただ。
静かに歩き出す。
赤いレヴロストへ向かって。
そして――。
「行くぞ!」
戦闘が始まった。
アリスベルが加速する。
――ドンッ!!
地面が砕けた。
一瞬で距離を消す。
赤いレヴロストが反応する。
だが遅い。
拳。
肘。
掌底。
二発。
三発。
凄まじい打撃がヘルメットへ叩き込まれる。
――バキィィッ!!
ヘルメットが砕けた。
次の瞬間。
アリスベルの拳銃が火を吹く。
――バンッ!!
銃弾が頭部を撃ち抜いた。
赤いレヴロストはその場へ崩れ落ちる。
完全停止。
文字通りの瞬殺だった。
「うわぁ……」
アシュリーが思わず呟く。
「相変わらず無茶苦茶ですね……」
サンチェスも苦笑する。
「瞬殺するって言ってたが」
一拍。
「本当に瞬殺しやがった」
その間にも。
――バシュッ!!
――ダダダダダッ!!
二人の銃弾がハウンドを撃ち抜いていく。
黒いハウンドが倒れる。
青いハウンドが吹き飛ぶ。
だが。
数が多い。
「右です!」
アシュリーが叫ぶ。
「分かってる!」
サンチェスが即座に射撃。
飛び掛かってきた赤いハウンドが倒れる。
そして。
別方向。
一方。
テストとケイトのセグダは、ハウンドの群れの中を縦横無尽に駆け抜けていた。
――ブォォォォォン!!
二台のセグダが高速で走り回る。
群れを横切り、隊列を切り裂き、連携を取ろうとしていたハウンドたちを次々と分断していく。
「左へ寄せろ!」
テストが怒鳴った。
「命令するな!」
ケイトも即座に怒鳴り返す。
だが。
文句を言いながらも、きっちり左へ進路を変えた。
その様子を見て、テストが口元を吊り上げる。
「なんだ、意外と素直じゃねぇか」
ケイトが鋭く睨みつけた。
「聞こえてるぞ!」
そんなやり取りの直後だった。
一体のハウンドが、横合いからケイトへ飛び掛かる。
だが――。
――ドゴッ!!
ケイトの蹴りが炸裂。
ハウンドは悲鳴を上げる間もなく吹き飛び、地面を転がった。
ケイトは振り返りもせず叫ぶ。
「テスト! お前、もっと働け!」
「十分働いてるだろ!」
即座に返ってくる怒鳴り声。
その間にも二台のセグダは走り続ける。
ハウンドの群れをかき乱し、戦場を縦横に切り裂いていく。
夜の戦場には、エンジン音と怒鳴り声が絶え間なく響いていた。
二台のセグダが動く。
――ブォォォォォォン!!
テストとケイトがハウンドの群れへ突入する。。
そして。
反対側。
レオとサイモンも動き出した。
レオが低く言う。
「銀狼もウイルスを保有している可能性がある」
一拍。
「噛まれるなよ」
サイモンは笑う。
「ああ」
サイモンは視線を前方へ向けたまま続ける。
「さっきのアリスベル、見ただろ?」
一拍。
「あれがレヴロスト攻略の基本だ」
低く続ける。
「まずヘルメットを破壊する」
レオも頷いた。
「ああ」
そしてサイモンへ視線を向ける。
「サイモン、バトルスーツを起動しろ」
「今回は数が多い。気を抜くなよ」
サイモンが口元を吊り上げる。
「ああ、わかってる」
二人は同時にバトルスーツのスイッチを入れた。
――バチッ。
青白い電流が全身を駆け巡る。
サイモンは拳を握り締めた。
「行くぞ!」
大声で叫ぶ。
「まずはレヴロストを一体減らす!」
次の瞬間。
サイモンは地面を強く蹴った。
――ドンッ!!
アスファルトを砕きながら、一気にレヴロストとの距離を詰める。
その後ろを、レオも迷いなく続いた。
そのときだった。
もう一体の赤いレヴロストが腕を持ち上げる。
嫌な予感。
レオの目が細まった。
「サイモン!止まれ!」
――バシュゥゥゥゥゥッ!!
赤い光線。
腕部レーザー。
一直線にサイモンへ向かう。
「ッ!!」
サイモンが反射的に横へ飛んだ。
レーザーが頬を掠めた。
熱風。
衝撃。
背後の瓦礫が爆散する。
――ドゴォォォォォン!!
サイモンは地面を転がりながら立ち上がった。
「危ねぇ!!」
一拍。
「マジでヤバかったぞ今の!!」
レオが低く言う。
「あっちは俺が引き付ける」
「サイモン」
「あ?」
「お前はもう一体の頭を攻撃しろ」
サイモンが笑う。
「了解」
拳を握る。
そして。
二人が同時に動こうとした――そのときだった。
不意に。
何かが降り立つ。
――ドスン。
重い着地音。
レオの進路を塞ぐように。
蒼い瞳が闇に浮かんだ。
青に銀色の毛並みが混じる巨大な体。
異様な威圧感。
普通のハウンドとは明らかに違う。
蒼き銀狼だった。
レオは足を止める。
銀毛のハウンドも動かない。
互いに見据える。
数秒。
静寂が流れた。
やがて。
銀狼がゆっくりと牙を見せる。
――グルルルルル……。
レオは静かに銃を構えた。
「なるほど」
一拍。
「お前が相手か」
夜の闇の中。
蒼き銀狼の瞳が妖しく輝いていた――。
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