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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【第零章】 宝石(星)の伝説/ある天才少女の記録 Episode of Luminous−①

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★選ばれた名前

◆選出式典会場

 リトス銀河宇宙局の大ホールは、異様な静けさに包まれていた。

 広大な会場の正面には壇上が設けられ、その中央に七人の候補者が並んでいる。


 その中には、わずか一六歳のダイヤ・デスモンドの姿もあった。


 数えきれないほどの視線が、壇上の七人へと注がれていた。

 期待と緊張が、空気そのものを張り詰めさせている。


 壇上の前に立つ司会者が、ゆっくりとマイクを口元へ運んだ。

「初の異銀河宇宙有人探査に参加する三名を、発表します」


 その声が響いた瞬間、会場のざわめきがすっと消えた。


 ダイヤは息を止める。

 自分が選ばれる可能性は、もちろん考えていた。

 だが、それでも、この瞬間だけは胸の鼓動を抑えられなかった。

「――ダイヤ・デズモンド」


 一瞬の静寂。


 そして――

 会場が爆発した。

 拍手と歓声が渦を巻く。

 ダイヤは目を見開いた。

「……私が、選ばれたの……?」

 自分の声が、どこか遠くに聞こえる。


 その直後、会場正面の大型ホログラムディスプレイに、ダイヤの顔が大きく映し出された。


 リトス銀河中に張り巡らされた中継回線を通じ、彼女の表情がリアルタイムで各地へと届けられていく。


 一六歳。

 宇宙局所属者として史上最年少、ダイヤ・デズモンドの名が銀河中へと広がっていく。

 選ばれた理由を瞬時に分析しようとする彼女の頭脳も、このときばかりはうまく働かなかった。


 やがて、その名が現実として彼女にのしかかってくる。

「レオ・ミラノ」

 続いて、司会者が二人目の名前を告げる。

「サイモン・マクレーン」

 どちらも二九歳。

 経験豊富な人材として知られる男たちだった。


 三名――。

 初の異銀河探査チームが、正式に決定した瞬間だった。


「……流石だな、ダイヤ。一六歳で選ばれるなんてな」

 隣に立つレオの声は、式典のざわめきを一瞬で静めるような低さだった。


 その反対側で、サイモンも小さく呟く。

「こりゃ、本当に時代が早まったかもな!」

 大柄な体に似合わず、その声は優しく、どこか子どものように弾んでいた。


 ダイヤは二人を見て、わずかに笑みを浮かべる。

「ゴリにぃ、心配しないで」

 そして、満面の笑みを浮かべた。

「私が、二人を引っ張るから」


 サイモンは一瞬きょとんとしたあと、苦笑を漏らした。

「おう……頼もしいが、大丈夫なのか……?」

 だが、その声にはどこか期待も混じっていた。

 ――そのやり取りを、無数のカメラが捉えていた。


 翌日。

 リトス銀河中のニュースとホログラムが、一斉に彼女の名を報じる。

〈宇宙局最年少、一六歳。天才少女、ダイヤ・デズモンド〉

 その扱いは、もはや宇宙飛行士でも、研究者でもなかった。


 才能も、若さも、美貌も――すべてを兼ね備えた“完璧な存在”として。


 ダイヤ・デズモンドは、メディアによってアイドルのように祭り上げられていく。


 だが、当の本人は、自分がどれほど大きな渦に巻き込まれ始めているのか、まだ分かっていなかった。


 そして――

 本人の知らぬところで、ダイヤ・デズモンドは“時代に選ばれた存在”として語られ始めていた。

 それが何を意味するのかも知らずに。

 伝説は、まだ始まってすらいない。


◆式典後・控室

 式典が終わり、三人は控室へ戻った。

 扉が閉まった瞬間、張り詰めていた空気がふっと緩む。

 最初に崩れたのはサイモンだった。

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 大柄な体をソファに沈め、肩を落とす。


 レオが低い声で指摘する。

「お前、最後の宣誓で“銀河”を“ぎんがが”って噛んだぞ」


「う、うるさいな……緊張してたんだよ……」

 サイモンは耳まで赤くしながら、両手で顔を覆った。

 その手がソファの肘掛けをミシッと鳴らした。


「サイモン、壊れる」

 レオが淡々と注意する


「ご、ごめん……!」


 そんな二人のやり取りを、ダイヤはきょとんと見つめていた。

 そして――ぱっと笑う。

「でもね、ゴリにぃが噛んだの、可愛かったよ!」


「か、可愛いって……俺、二九だぞ……?」


「年齢関係ないよ。可愛いものは可愛いの!」

 ダイヤは胸を張って言い切る。


 その無邪気さに、サイモンはさらに顔を赤くした。

 そして、サイモンが優しく笑う。

「遂に、史上最年少の探索船の船長になったな」


 ダイヤは首を振った。

「そんな大したものじゃないよ」


 レオが即座に言う。

「いや、大したものだ」

 一拍。


「お前は一三歳で恒星理論を完成させた」

「一四歳で惑星間航法を作った」

「普通じゃない」


 ダイヤは困ったように笑う。

「でも私、料理できないよ?」


 沈黙。


 サイモンが吹き出した。

「話が飛んだな」


「だって本当だもん」

 ダイヤは頬を膨らませる。

「この前も目玉焼き作ろうとしてフライパン溶かしたし」


「それは料理じゃなくて事故だ」

 レオが真顔で返した。

「それでも、お前は凄い!」


 ダイヤは苦笑した。

「そうかな」


 レオがため息をつく。

「そうだ」

「士官学校でもそうだったしな」


 ダイヤが首を傾げる。

「そうだっけ?」


 レオが呆れたように言う。

「お前の模擬戦の成績は上位だった、なのに回避してばかりだった」


「だって毎回必死だったし」

 ダイヤは苦笑した。

「力じゃ全然勝てないからね」

 ダイヤは自分の腕を見た。

「ほら」


「細いな」

 レオが頷く。


「初めて会った時、風で飛びそうだと思った」

 サイモンも頷いた。


 ダイヤは胸を張った。

「だから当たらなければいいの!」

 数秒の沈黙。


 レオが呟く。

「発想が軽い」


「結果は出してたけどな」

 サイモンが笑った。

「その代わり、ダイヤは見えてる世界がおかしいんだよ」


 ダイヤが目を見開く。

「え?」


 サイモンが少し呆れ顔で言う。

「お前、飛んできた訓練弾を見て避けてただろ」


 ダイヤは不思議そうな顔をする。

「見えてるんだから避けるでしょ?」


 レオとサイモンが同時にため息をついた。

「「普通は見えない」」


 レオが呆れたように言う。

「……式典でも堂々としてたしな、お前は緊張ってものを知らないのか」


 ダイヤは首を傾げる。

「え?してたよ?」


「どこがだ」


「だって……ほら……」

 ダイヤは自分の胸に手を当てた。その指先が、ほんの少し震えていた。

「……ちょっとだけ、ドキドキした」


 その一言に、レオとサイモンは一瞬だけ黙った。

 天才少女の“揺れ”は、誰よりも重い。


「……まぁ、当たり前だよな」

 サイモンが優しく笑う。

「銀河の未来を背負うって、そういうことだし」


 ダイヤは天井を見上げた。

「背負うっていうより……」

「……なんか、呼ばれた気がしたんだよね」


「呼ばれた?誰に?」

 レオが眉をひそめる。


 ダイヤは無邪気に笑う。

「うん。星に、かな?」


 その言葉に、レオとサイモンは顔を見合わせた。

 冗談かと思ったが、ダイヤの表情は真剣だった。


 レオはため息をつきながらも、どこか納得したように呟く。

「……まぁ、お前なら言いそうだな」


 サイモンは苦笑いをする。

「ダイヤが言うと、本当に聞こえてそうで怖いよ……」


 控室の空気は、式典の緊張とはまるで違う。

 三人だけの、静かで温かい空気。


 だが――

 この選出が、後に三人の運命を大きく変えることになる。

 そして――

 ダイヤ・デスモンドの名が、銀河の歴史に刻まれる最初の日となった。


零章の3話は、プロローグ章になります。

後に伝説となるルミナス号のお話になります。


まだ、プロローグ章です。読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 普段はSFものはあまり読まないんですが、 本作は非常にスラスラと読めました。 普通のSFだと情景描写や設定の説明がどうしても 長くなるけど、本作は良いタイミングで会話文を挟んで…
ステキ
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