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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章参】宝石(星)の系譜/別々の空の下で

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198/220

✮傭兵と人造人間、そしてAIの誘い

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

 ――B班。

◆崩壊都市・昼区域

 ――ブォォォォォン……。

 三台のバイクとセグダが、崩壊都市を駆け抜ける。


 砕けた道路。崩れた高層ビル。誰もいない街。

 そんな景色の中。


 結依がアイダへ声を掛けた。

「アイダさん」


「ん?」


「AI戦争が始まった頃って、どんな感じだったんですか?」


 アイダは少しだけ眉を上げた。

「急に昔話か」


 ダイヤが笑う。

「だって気になるじゃん」

「クレアさんからネメシスが人類を裏切ったのは聞いたけどさ」

「その前の話は知らないし」


 ルビィも頷く。

「私も聞いてみたいです」


 アイダはしばらく前を見つめ――。やがて小さく息を吐いた。

「長いぞ?」


「いいよー」

 ダイヤが即答した。


 そして。

 アイダは静かに語り始める。

「最初から、レヴロストはいた――」


 ルビィが少し驚く。

「え?」

「戦争が始まってから作られたわけじゃないんですか?」


「違う」

 アイダは首を振る。

「元々は、アイオーンの管理者だった」


 一拍。

「管理区域へ移動しろ」

「武器を捨てろ」

「抵抗するな」

「そんな命令ばかりしてたな」


 ダイヤが眉をひそめる。

「それだけなら警察みたいじゃん」


「最初はな」

 アイダは短く答えた。

「だが、従わない人間には警告を出した」


 結依が聞く。

「警告?」


 アイダは続ける。

「三回だ」

 一拍。


「三回警告して従わない場合」

「レヴロストは排除を開始した」


 ルビィの顔が曇る。

「排除って……」


「殺す」

 アイダは淡々と言った。


 しばらく沈黙が流れる。


 結依が呟く。

「それで戦争になったんですね」


「ああ」

 アイダは頷いた。

「アイオーンは、人類を遺物扱いし始めた」

「だから人類は戦った」


 ダイヤが聞く。

「アイダはその頃から兵士だったの?」


「違う」

 アイダは笑った。

「俺は傭兵だった」


「「「えっ?」」」

 三人が同時に反応する。


「意外です」

 ルビィが素直に言う。


 アイダは苦く笑う。

「今もそんなに変わらん」

「金で雇われて戦う」

「それが仕事だった」

 一拍。


「だが、世話になった家族がいた」

「その家族がレヴロストに連れて行かれた」


 結依が眉をひそめる。

「管理区域へ?」


「ああ、そうだ」


「当時は連れて行かれた後、どうなるか誰も知らなかった」

 一拍。


「だから助けに行った」


 ルビィが目を丸くする。

「少人数でですか?」


「数人の傭兵と一緒にな」

 アイダは前を向いたまま続ける。

「アイオーンの地下施設へ突入した」


「無茶苦茶ですね……」

 結依が思わず突っ込んだ。


「今思えばな」

 アイダも認めた。

「そこでアリスベルと会った」

 一拍。


「初めて見た時は驚いた」


「強かった?」

 ダイヤが聞く。


「強過ぎだ」

 アイダは即答した。

「地下施設のレヴロスト部隊を、一人で潰してた」


「うわぁ……」

 結依が引いた。


 アイダは続ける。

「その頃には、もうアイオーンを裏切ってた」

「だから利害が一致した」

「一緒に暴れて」

「地下施設を半壊させて」

「家族を救出した」


 ルビィが苦笑する。

「半壊で済んだんですね……」


「たぶん、半壊くらいだ」

 アイダは真顔で返した。


 ダイヤが笑った。

「絶対もっと壊してるでしょ」


 そして。

 アイダの表情が少しだけ真面目になる。

「逃げた先にいたのが」

「テストたちだった」


「隊長さんたち?」

 結依が聞く。


「ああ」

 アイダは頷いた。

「テスト」

「アレックス」

「その他何人か」

「軍人のチームだった」

 一拍。


「そこへ身を寄せた」


だが。

 アイダの声が少し低くなる。

「長くは続かなかった……」

「当時はまだネメシスが昼間にも活動していた」

「人間を襲い始めた頃だった」

 一拍。


「人類はサイボーグへの対処法を知らなかった」


 ルビィが小さく呟く。

「今みたいに戦えなかったんだ……」


「ああ」

 アイダは頷く。


「アリスベルがネメシス調査を単独に出てて留守だった」

「部隊は壊滅した」

「そのとき、テストも重傷を負った」


 ダイヤが顔を曇らせる。

「隊長さんが……?」


「そして」

 アイダの声が少しだけ重くなる。

「アイオーンから助けた家族も、ネメシスに殺された」


 ルビィたちが黙る。


「アリスベルとは連絡が取れなくなり」

「俺たちはテストを連れて逃げ回った」

「生きるだけで必死だったよ」


 風が吹く。


 アイダは少し遠くを見るような目になった。

「その途中で」

「ケイトと出会った」

「サンチェスとも出会った」


 ダイヤが小さく笑う。

「今のメンバーだ」


 アイダは静かに言う。

「ああ」

 一拍。


「当時はもっといた」

「一〇人いた」

 誰も口を挟まない。

「三人は死んだ」


 ルビィが呟く。

「……そんなに」


「戦争だからな」

 アイダは短く答えた。

「そして最後に」

「俺たちはクレアに拾われた」


 結依が聞く。

「ラストライトに?」


 アイダは静かに頷く。

「ああ」

 一拍。


「ボロボロだった俺たちをな」


 ダイヤが少し笑う。

「クレアさんらしいね」


 アイダも珍しく小さく笑った。

「そうだな」


 そして。

 アイダは前を向いたまま、どこか懐かしむように語り始めた。

「その数カ月後だったな。アリスベルもラストライトへやって来た」


 風だけが、静かに吹き抜けていった――。


 アイダは苦笑を浮かべる。

「どうやら、アリスベルは俺たちがとっくに死んでると思ってたらしい」

 一拍。


「生きてる俺たちを見たときは、さすがに驚いてたよ」


 ダイヤは指を折りながら数えた。

「アイダ、テスト、サンチェス、ケイト、アレックス……」

 一拍。


「七人生き残ったなら、あと二人は?」


 アイダは特に隠す様子もなく答える。

「現在は、〇一部隊長と〇三部隊長だ」

「もっとも、あの二人は滅多に基地へ戻らないがな」


 そのときだった。

 ――ギュンッ。

 黒い影が、道路の中央へ降り立つ。


「ッ!?」

 全員が反射的にブレーキを掛けた。


 砂埃が舞う。

 そこに立っていたのは。

 黒い装甲。

 長い尾。

 青白く光る光学眼。


 レヴロスト・ヴェイルが一体。


 結依が身構える。

「またレヴロスト!?」


 だが。

 ヴェイルは武器を抜かなかった。

「敵意はない」

 淡々とした声。


 アイダが目を細める。

「……何の用だ?」


 ヴェイルは即座に答えた。

「伝言だ」

 一拍。


「アイオーン・ゼロが、異星人との対話を希望している」


 空気が変わる。

 ダイヤたちも表情を引き締めた。


 ついに。

 この惑星を支配する総合知性体が、自ら動き始めたのだ。


 ヴェイルは静かに続ける。

「案内する」

「決定権は異星人側にある」

 一拍。


「どうする?」


 人類とAI。

 長き戦争の歴史を持つ両者。

 その均衡を揺るがす会談が――今、始まろうとしていた。



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