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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章参】宝石(星)の系譜/別々の空の下で

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192/221

✮地下に潜む者たち

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

 ――A班。

◆崩壊都市・昼区域

「……我々の戦力確認だ」

 レオの言葉が、静かに崩壊都市へ落ちた。

 逃走したレヴロスト・レイス。  おそらく、こちらの情報を持ち帰る。


 サイモンが肩を回しながら笑う。

「まぁ、逃げたならまた来るだろ」


 サンチェスは苦い顔をした。 「嬉しくねぇ再会予告だな」


 そのときだった。

 ――――ヴゥゥゥゥゥゥン……。

 都市全域へ、重いサイレンが鳴り響く。


 全員の表情が変わる。

 そして次の瞬間。

 空が、急速に暗くなっていく。


「夜間移行……!」

 アシュリーが息を呑んだ。


 昼の光が消える。

 崩壊都市が、一瞬で夜へ変わっていく。


 サンチェスが舌打ちした。

「最悪のタイミングだな」


 レオが周囲を警戒しながら聞く。

「夜は、そこまで危険なのか?」


 アシュリーが即座に頷く。

「ネメシス製は夜に活性化します」

「昼より数も増えるんです」


 サンチェスも続ける。

「地上で動き続けりゃ、戦闘回数が増える」

「弾も体力も削られる」

 一拍。


「この星の夜は、“消耗戦”なんだよ」


 テストが短く言った。

「地下へ入る」


 アシュリーがすぐ前方を指差す。

「この先に旧避難施設があります!」


「案内しろ」

 全員が即座にセグダへ跨った。

 ――ブォォォォォン!!

 重低音。


 暗くなった崩壊都市を、A班は一気に駆け抜ける。

 遠くのビル群。

 窓の奥。赤い眼光が、いくつも浮かんでいた。


「……見られてるな」

 レオが低く呟く。

 だが、襲っては来ない。

 まるで夜の都市そのものが、獲物を観察しているようだった。


◆旧地下避難施設・入口

 崩れた商業施設の奥。

 地下へ続く重厚な隔壁が半開きになっていた。


 テストが先頭で中へ入る。

 暗い。湿った空気。古びた配線。

 そして――。

 ギチ……ギチギチ……。

 天井から、奇妙な音が響いた。


 サンチェスが顔をしかめる。 「チッ、ウェーバーか」


 次の瞬間。

 ――バシュッ!!

 白い糸が高速で射出された。


 テストが即座に回避。


 糸は後方の壁へ突き刺さる。

 ――ズガァン!!

 コンクリートが大きく抉れた。


 レオが目を細める。

「糸で、あの威力か」


 暗闇の奥。

 三つの巨大な影が現れる。

 黒い金属脚。赤い単眼。巨大な蜘蛛型サイボーグ――ウェーバー。


 テストが淡々と言った。

「糸にさえ当たらなければ、どうという事はない」


 その瞬間。

 サイモンが笑った。

「なら簡単だな」

 ――ドゴォォォッ!!

 地面を蹴る。

 一瞬で接近。

 ウェーバーの一体へ拳を叩き込んだ。

 ――バギャァァァン!!

 蜘蛛型の巨体が、壁ごと吹き飛ぶ。


 同時に。

 テストがもう一体へ接近。

 糸射出の瞬間を潜り抜け――。

 ――ズドォッ!!

 鋭い回し蹴り。

 ウェーバーの頭部が捻じ曲がる。


 最後の一体が天井へ逃げる。

 だが。

 ――バンッ!!

 サンチェスの狙撃。

 赤い単眼が砕け散った。


 ウェーバーは、そのまま天井から落下する。


 静寂。


 サイモンが首を鳴らした。 「弱ぇな」


 アシュリーが苦笑する。

「普通はもっと苦戦します……」

(この人たち、強すぎ……)


◆旧地下避難施設・休憩区画

 敵影の無い個室。

 古びたソファ。

 崩れたロッカー。

 非常灯だけが、薄暗く部屋を照らしていた。


 A班は、そこで夜をやり過ごす事になった。

 遠くから、時折何かの咆哮が聞こえる。


 サンチェスが煙草に火をつけながら言った。

 「しかしまぁ……」

 「アンタら、本当に人間か?」


 アシュリーが真顔で頷く。

「さっきのサイモンさんの力……」

「アリスベルさんみたいでした」


 レオは少し呆れ顔で言う。

「サイモンは生まれつき、力のリミッターが外れてる、特殊体質だ」

「もはや、生物兵器だ」


 サイモンが笑う。

「失礼だな」


 サンチェスも思い出したように言う。

「昨夜の婆さまの動きもな」

「あのスピード、アリスベルさん級だったぞ」


 レオが小さく息を吐く。

「婆さま?」

「ああ、ダイヤの事か」

 一拍。


「アイツもサイモンと同じだ」 「反応速度、動体視力」

「生まれつきリミッターが外れている」


 サンチェスが引き気味に呟く。 「やっぱ普通じゃねぇじゃねぇか……」


 レオは淡々と続ける。

「清水……結依もだ」

「感情の起伏で身体能力が跳ね上がる」


「アストラはアンドロイド」

 一拍。


「うちの船は化け物揃いだ」


 サイモンが笑った。

「お前も大概だろ」


 レオが手を横に振りながら言う。

「まともなのは、俺とルビィくらいだ」


 すると、テストが静かに口を開いた。

「ルビィって、港で俺とやった船長だろ?」

 一拍。


「言っとくが、レオ」

「アンタもルビィも、全然普通じゃねえよ」


 テストは呆れたように二人を見る。

「レヴロストのヘルメットは、蹴りや腕力程度で壊せるもんじゃない」

 一拍。


「……アリスベル以外はな」


 そしてテストは眉をひそめ続ける。

「なのに、お前らは武器なしでやった」


 サンチェスが「普通はこれを使うんだ」と言いながら、腰の装備を取り出した。

 小型のハンマーのような武器。

「ここのスイッチを押すと、柄の部分が柔らかくなる」

 実際に押すと、金属だった柄がしなる。


 アリシューが補足する。

「先端のハンマー部分は特殊素材で超硬いんです」

 

 サンチェスがハンマーを振りながら言う。

「柔らかくなった柄をムチみたいに使って、遠心力でヘルメットを叩き割る」


 テストが腕を組む。

「それでも、一撃で割れることは滅多にない」


 サンチェスが苦笑した。

「しかも、この武器を持てるのは隊長クラスだけだ」

「レヴロスト相手に接近戦できる奴しか使えねぇからな」


 すると、アシュリーも頷く。

「そうですね。普通の兵士は、レヴロストと近接戦なんて無理ですし……」

「私は支援担当なので、持ってません」


 レオとサイモンは、改めて互いの顔を見合わせた。

 ――自分たちがやったことが、どれだけ異常だったのか。


 サンチェスが吹き出す。

「そんな人造人間並みの異星人が仲間になってくれて助かったぜ」


 アシュリーも静かに頷いた。 「本当に……そう思います」


 少しだけ。地下施設の空気が和らぐ。


 そのとき、サイモンがアシュリーへ視線を向けた。

「そういやアシュリーちゃん」 「援護射撃、上手かったな」

 一拍。


「得意なのか?」


 アシュリーは少し驚いた顔をした後、小さく笑った。

「元々、整備班志望だったんです」

「でも」

「格闘と射撃は、アレックス部隊長に教わりました」


 テストの視線が、わずかに動く。

「……アイツか」


 アシュリーは静かに頷いた。

「アレックス部隊長」

「整備兵でも戦えないと死ぬぞって」

 一拍。


「彼は、私の師匠です」


 サンチェスが懐かしそうに笑う。

「昔から面倒見良かったからなぁ、アイツ」


 テストも小さく呟いた。

「……教え方上手かっただろ。アイツは軍の教官志望だったし」


 アシュリーは少しだけ目を伏せる。

「昨夜、生き残れたのも」

「アレックスさんの訓練のおかげです」

 静かな沈黙。


 遠くで、何か巨大な咆哮が響いた。

 誰も、それ以上は言わなかった。


 そして――。

 数時間後。


 ――ヴゥゥゥゥゥゥン……。

 再び、都市全域へサイレンが鳴り響く。


 次第に、地下施設の隙間から光が差し始めた。


 テストが立ち上がる。

「……行くぞ」


 全員が静かに武器を手に取る。

 だが。

 彼らはまだ知らない。

 夜を越えた崩壊都市のさらに奥で、 “人類を殲滅する者たち”が、すでに彼らを観測し始めている事を――。



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