✮夜間移行
更新
月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話
※日曜・祝日はお休みです。
――B班。
◆旧管理区域・崩壊ビル内部
崩れたビル内部。
割れた窓から差し込む昼の光の中、四体のレヴロスト・ヴェイルが静かにルビィたちを見据えていた。
青白いレーザー短剣。
黒い装甲。
尾のように伸びた機械肢。
無機質な赤い光学眼だけが、不気味に光っている。
緊張。
アイダが静かに前へ出る。
ダイヤも腰のレーザーガンへ手を添えた。
だが。
ヴェイルたちは、すぐには動かなかった。
一体が低い声で言う。
「武装解除を要求する」
その瞬間。
ルビィと結依の表情が変わった。
「……え?」
「喋った!?」
普通に意味が分かる。
人類の言葉だった。
ダイヤが、あっさり言う。
「レヴロストとアイダたち、言語同じだよ」
結依が驚く。
「そういうの先に言って!?」
ヴェイルは続ける。
「投降を要求する」
「安全と食料は保証する」
感情のない声。
だが、その言葉に嘘は感じられなかった。
ルビィが目を細める。
「……保護するつもりなの?」
「人類は管理対象」
ヴェイルは即答した。
「抵抗しなければ、生存率は上昇する」
アイダが鼻で笑う。
「管理される趣味はない」
ヴェイルの赤い眼が、静かに細く光った。
「非合理的回答を確認――」
ヴェイルの一体が、一歩前へ出た。
「武装確認」
低い声。
結依が目を丸くする。
「また普通に喋った……」
ダイヤも小さく眉を上げる。 「思ったより会話できそうたね」
しかし。アイダだけは警戒を解かなかった。
「騙されんな」
「コイツら、“必要なら話す”だけだ」
一拍。
「敵認定された瞬間、躊躇なく殺しに来る」
ヴェイルたちの尾がゆっくり揺れる。
まるで威嚇するかのように。
直後だった。
――ギュンッ!!
一体のヴェイルが、突然高速接近した。
「来るよッ!」
ルビィが叫ぶ。
青白い斬撃。
ルビィは咄嗟に回避。
レーザー短剣が壁を切り裂く。
――ズバァッ!!
コンクリートが溶けるように崩れ落ちた。
「うわっ!?」
結依が後退する。
だが次の瞬間。
――ドゴォッ!!
アイダの蹴りが、ヴェイルの横腹へ炸裂した。
黒い装甲が歪む。
しかし。ヴェイルは空中で体勢を立て直し、軽やかに着地した。
「……硬っ」
アイダが舌打ちする。
さらに二体。左右へ展開。
完全に包囲する動きだった。
ダイヤが小さく笑う。
「連携してくるの、犬だけじゃないのね」
その瞬間。一体が真上から飛び込んできた。
だが。
「遅いっ」
ダイヤは身体を半歩だけずらす。
ヴェイルの斬撃が空を切った。
その勢いのまま腕を掴み――。
――ゴォン!!
床へ叩き付けた。
ルビィが驚く。
「うわっ!?」
しかし、倒れたヴェイルは即座に尾を動かした。
尾の先端が槍のように伸びる。
「ダイヤさん後ろ!」
結依が叫ぶ。
ダイヤが身体を捻る。
――ギィンッ!!
尾の刃が髪を掠めた。
「危なっ」
その横から。ルビィのフォトン・ランサー――レーザーガンが火を吹く。
――バシュゥッ!!
光弾がヴェイルの肩装甲へ命中。
ヴェイルが少し後退した。
「……避けた?」
ルビィが眉をひそめる。
致命傷を避けるように、ギリギリで軌道を変えていた。
アイダが低く言う。
「コイツら、かなり学習してる」
そのとき。
――ギュィィィン。
ヴェイルたちの光学眼が、一斉に発光した。
直後。
全個体が、突然後退した。
「……え?」
結依が困惑する。
ヴェイルたちは攻撃を止め。
まるで何かを警戒するように、崩れた外壁方向へ視線を向けていた。
その瞬間だった。
――――ヴゥゥゥゥゥゥン……!!
都市全域へ、巨大なサイレンが鳴り響いた。
次の瞬間。
空が、暗転する。
まるで電源を落としたように、昼の光が一気に消えた。
結依が息を呑む。
「うわっ……!」
昼と夜が、一瞬で反転する星。
そして同時に。
『アストラです』
『夜間移行を確認しました』
通信。
『周辺ネメシス反応、急速増加中です』
その瞬間。
ヴェイルの一体が周囲を警戒した。
「……人類の相手をしている時間はない」
一拍。
「この区域は、ネメシス個体が多い」
直後。
――ガガガガガガッ!!
崩れた壁。
天井。
床下。
暗闇の中から、赤黒い巨体が次々と現れる。
巨大な鋏。
毒針付きの尾。
複数の脚。
「スティング……!」
アイダが低く呟いた。
一体。
二体。
三体。
さらに。
次々と現れる。
「……多っ!?」
ルビィが顔をしかめる。
合計、一五体。
スティングの群れが、ルビィたちとヴェイルを包囲していた。
そして。
夜になった事で、その動きが昼とは別物になっていた。
速い。
明らかに、昼間より速い。
アイダが叫ぶ。
「尾に気をつけろ!」
「致死量の毒が入ってる!」
次の瞬間。
――ギィィィィッ!!
一体のスティングが高速突進。
ルビィが咄嗟に回避。
尾の毒針が、壁へ突き刺さる。
――ドガァン!!
コンクリートが砕け散った。
「威力まで高いっ!?」
ルビィが目を丸くした。
結依がライフルを撃つ。
――ババババッ!!
火花。
だが、夜のスティングは止まらない。
一方。
ヴェイルたちも即座に戦闘開始。
青白いレーザー短剣が闇を裂く。
高速移動。
尾による拘束。
レーザー射撃。
人間離れした連携。
ヴェイル二体がスティングの動きを止めた瞬間、別個体が急所を切断する。
完全な対ネメシス戦闘だった。
ルビィが息を呑む。
「……連携、凄い」
だが。
数が多い。
スティングは次々押し寄せてくる。
そのとき。
ルビィが叫んだ。
「結依! バトルスーツ使おう!」
「うん!」
二人は同時に、スーツの起動スイッチを押す。
――ギュィィィン!!
スーツ内部へ電流が走る。
次の瞬間。
結依の拳が、飛びかかってきたスティングへ叩き込まれた。
――バチィィィィッ!!
凄まじい電撃。
スティングの身体が痙攣する。
「効いた!?」
ルビィも蹴りを叩き込む。
電流。
火花。
スティングが吹き飛んだ。
さっきまで押されていた流れが、一気に変わる。
その横で。
ダイヤだけは相変わらずだった。
スティングの尾を、紙一重で回避。
横薙ぎ。
しゃがみ。
後退。
まるで見えているかのように、全てを避け続ける。
そして。
――パンッ!!
レーザーガン。
スティングの頭部が貫かれる。
ダイヤが少し驚いた顔をする。
「へぇー、バトルスーツ凄いんだね、使ってるの初めて見たよ」
ルビィが即座に突っ込む。
「おばあちゃんが余裕ありすぎだよ!」
さらに。
アイダまで呆れたように言う。
「本当に、婆さまは人造人間じゃないのか?」
「失礼だな」
ダイヤは苦笑しながら、再び尾を回避した。
その間にも。
ヴェイルたちの連携によって、スティングの数は確実に減っていく。
だが。
『アストラです』
通信。
『外部より緊急報告』
一拍。
『現在、二二体の赤いハウンドに包囲されています』
その瞬間。
結依の目が変わった。
ギラリ、と。
「……ハウンド」
低い声。
そして次の瞬間。
「私が行く」
――ガシャァァン!!
結依は二階の窓を蹴破り、そのまま外へ飛び降りていった。
「結依!?」
ルビィが叫ぶ。
ダイヤが苦笑混じりに呟いた。
「キレた結依、強いけど……」 「さすがにハウンドの数が多いよ」
アイダは即座に判断する。
「船長」
「結依の援護へ行って」
ルビィは頷き、窓の方へ駆け出した。
その頃、外では。
赤いハウンドの牙が、すでに夜の街へ溢れ始めていた――。
――さらにその向こうで、 青い個体の“眼”だけ光ってる。




