✮ラストライトの選択
更新
月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話
※日曜・祝日はお休みです。
◆ラストライト前線基地・会議室
室内には大型モニターと無数の戦術マップが並び、数名の兵士たちがまだ緊張感を残した表情で立っていた。
その中央。
黒い軍服を纏った女性――クレア・ストラウスが、ゆっくりとこちらを見る。
「……その者たちが、“外”から来た人間か」
鋭い視線。それだけで、この場を仕切っている人物だと分かる。
クレアは静かに口を開いた。 「タイミングがいいわね」
一拍。
「ちょうど、ここの〇七部隊との作戦会議が終わったところよ」
◆ラストライト前線基地・会議室
室内には大型モニターと無数の戦術マップが並び、五名の兵士たちがまだ緊張感を残した表情で立っていた。
会議室の一角には、武装した五人の兵士たちがいた。
先頭には、三〇代半ばほどの男。左頬に古い傷跡を持つ、小隊長らしき人物だった。
その横には、軽装備の若い兵士。後方には女性兵士と、大柄な重装兵。さらに端末を抱えた整備兵らしき男もいる。
小隊長がルミナス号の六人を見る。
「……こいつらが例の連中ですか」
一拍置き。
「私は〇七部隊の小隊長アレックスだ」
若い兵士が、少し驚いたように目を丸くした。
「え、マジで?」
「異星人って聞いてたけど……普通に人間じゃん」
女性兵士が、ルビィとダイヤを見る。
「っていうか、若っ……」
整備兵が小声で呟く。
「テスト隊長とアイダさんが連れてきたって話、本当だったんですね」
大柄な兵士が腕を組み、ダイヤたちを見据える。
「前に港でレヴロストとやり合った連中だろ?」
一拍。
「……よく生きてたな」
サイモンが苦く笑う。
「この星で生き抜くだけでも、一苦労だな」
若い兵士が吹き出す。
「ははっ、そりゃ違ぇねぇ」
だが、その視線は再びルビィたちへ向いた。
「にしても……」
若い兵士は、少し困惑したように結依を見る。
「そっちの黒髪の子、可愛いな」
口元を緩め、軽い調子で続けた。
「今度、俺とデートしてくれよ」
突然の言葉に、結依はきょとんと目を瞬かせる。
サンチェスが呆れたように笑った。
「おいおい、ニッキー、こんな場所でナンパしてんのかよ」
アイダは鼻で笑う。
「その“黒髪の子”さ、かなりヤバい腕してんだよ。下手したら、私と同格だからね」
「マジかよ……」
ニッキーが、結依を見直すように目を細めた。
そのとき。
クレアが静かに言った。
「〇七部隊」
「もう行きなさい」
五人は即座に表情を引き締めた。
小隊長が敬礼する。
「了解しました」
それに続き、全員が一斉に敬礼。
「ストラウス隊長、失礼します!」
すれ違いざま。
若い兵士が結依に軽く笑いかけた。
「――ま、死ぬなよ。外から来た可愛いお嬢ちゃん」
隣の女性兵士も、わずかに口元を緩める。
「ここ、本当に危険だから。気をつけてね」
そのとき、アレックスが振り返った。
「アシュリー。いつまで話してる、行くぞ」
アシュリーは苦笑混じりに頷く。
「はい、小隊長」
そして〇七部隊の五人は、そのまま足早に会議室を後にした。
扉が閉まり――。
会議室には、クレアたちとルミナス号の六人だけが残った。
クレアは静かに名乗る。
「私は、ラストライトのリーダー」
「クレア・ストラウスよ」
そして視線をレオ、ダイヤ、サイモンへ向けた。
「前回、三人でこの星へ来て、レヴロストと互角以上に戦っていたという情報は入っているわ」
一拍。
「今回は六人で来たのね」
レオが静かに頷く。
クレアは続けた。
「目的は?」
「この惑星の再調査?」
「それとも、レヴロストとの決着をつけに?」
その問いに。
ルビィが一歩前へ出る。
「私たちは、別の銀河から来ています」
「主な目的は、この銀河の探索です」
その途中で、レオが静かに言葉を引き継いだ。
「我々は前回、三人でこの惑星へ来た」
「しかし、調査は未達成のままだった」
一拍。
「そのため、再上陸した」
クレアは黙って聞いている。
今度はダイヤが口を開いた。 「この星、不思議なものが多すぎるんだよね」
指を折りながら数えていく。
「サイボーグの犬」
「巨大なサイボーグ虫」
「海の怪物」
「無口な黒い兵士」
一拍。
「はっきり言うけど」
「謎のままじゃ、引き下がれない」
クレアの目が少し細くなる。
その横で、アイダが口を挟んだ。
「ちなみに、この六人」
「中型のアビスモウの目を撃ち抜いて撃退した」
サンチェスが盛大に反応する。 「えぇぇっ!?マジで!?」
「中型でも一八メートルはあるし」
結依がちょっと照れた顔になる。
「いやまぁ、結構ギリギリでしたけど」
更に、アイダは続けた。
「しかも、黒いハウンドの群れも簡単に倒してる」
サンチェスが感心したように口笛を吹く。
「すげぇな、お嬢ちゃんたち」
さらにアイダが、結依を指差した。
「そこの黒髪の少女の射撃」
「サンチェス――アンタ以上よ」
「はぁ!?」
サンチェスが大袈裟にショックを受ける。
「俺、この基地で結構有名スナイパーなんだけど!?」
結依が慌てる。
「いやいやいや、そんなつもりじゃ……」
サイモンが横で笑う。
「結依ちゃん、また変なライバル増やしたな」
「勝負だ!」
サンチェスが即座に言う。
「後で射撃対決しようぜ!」
結依が苦笑した。
「なんでそうなるんですか……」
そんな空気の中。
テストが低い声で続ける。
「それだけじゃない」
「別銀河から来ているだけあって、科学力も高い」
一拍。
「船にも乗せてもらった」
「技術レベルは、俺たちより遥かに上だ」
レオが無言のまま聞いている。
テストはさらに言う。
「それに」
「俺とアイダは実際に戦った」
アイダがニヤッと笑う。
「しかも素手でね」
「格闘能力も、俺たちに引けを取らない」
クレアは少しだけ考え込むように沈黙した。
そして、ゆっくりと口を開く。
「ある程度、今の状況は聞いているのでしょうけど」
一拍。
「それを聞いた上で」
「あなたたちは、どうするつもり?」
静かな声だった。
「帰還する?」
「それとも、私たちに協力する?」
一瞬の間。
「あるいは――AI側へつく?」
室内の空気が、わずかに張り詰める。
クレアは続けた。
「あなたたちのリーダーは誰?」
その問いに。
ルビィとダイヤが顔を見合わせた。
そして、アストラが淡々と言う。
『私たちは、二隻の船でこの銀河へ来ています』
『この惑星へは一隻で降下しましたが』
『船長は二人存在します』
クレアが少し意外そうな顔をした。
その横で。サンチェスが小声で呟く。
「なんか、もうその時点で大冒険感すげぇな……」
クレアは腕を組む。
「私たちは、戦える人材を必要としている」
「当然、命を懸けることになる」 「無理にとは言わないわ」
一拍。
「でも、テストとアイダの報告通りなら」
「あなたたちの力と知識を借りたい」
静かな視線が向けられる。
そのとき。
ルビィが前へ出た。
「私は、ルミナール号船長のルビィです」
アイダが少し驚く。
「船長なんだ」
ルビィは続けた。
「ただ」
「今後のことについては――」
一拍。
「もう一隻、ルミナス号の船長へ決定権を譲ります」
クレアが眉を動かした。
「もう一人の船長?」
ルビィはダイヤの方を向き、普通に答える。
「私のおばあちゃんです」
その瞬間。
「……は?」
クレアが固まった。
サンチェスはサングラスを外した。
「おばあちゃん!?」
アイダもさすがに驚いている。 「いや待って」
「どこにいるんだ?」
テストは静かにダイヤを見る。
会議室の視線が、一斉にダイヤへ集まった。
ダイヤはいつもの調子で手を上げた。
「はいはい」
サンチェスは混乱している。 「え、お前が!?」
「どう見ても一番若いだろ!?」
ダイヤはニヤッと笑う。
「若作り成功ってことで」
サンチェスがダイヤをまじまじと見る。
「この見た目で婆さまとはなぁ」
サイモンは苦笑した。
「もう慣れた」
レオは静かに目を閉じる。
「驚くと疲れるぞ」
結依は小さく頷いた。
「ほんとそれ」
クレアは数秒黙った後、小さく笑った。
「……面白い人たちね」
ダイヤは急に真面目な顔になる。
「じゃ、決めます」
室内の空気が変わった。
ダイヤは真っ直ぐクレアを見る。
「ラストライトに協力するよ」
レオは薄く笑う。
「やっぱりな」
サイモンもニヤリとする。
「そう言うと思った」
結依も笑う。
「まぁ、ダイヤさんだし」
テストとアイダも、わずかに口元を緩めていた。
だが。
ダイヤは指を一本立てる。
「但し、条件あり」
クレアは即座に返す。
「条件?」
「何かしら?」
ダイヤは静かに言った。
「敵のAIを調べる権利をもらう」
「倒すか止めるかした後でね」
一瞬、室内が静まる。
そしてクレアは――笑った。
「倒した後に?」
「頼もしいわね」
レオは少し苦い顔をした。
「先に倒す前提なのか……」
サイモンは楽しそうに笑う。 「ダイヤらしいな」
サンチェスがケラケラ笑う。
「いいなぁ、婆さま!好きだぜ、お前みたいなヤツ」
ダイヤはニヤッと笑う。
クレアはゆっくり頷いた。
「協力を感謝する」
「この戦争を、早く終わらせたい」
――黒い惑星の全貌が、少しずつその姿を現し始めていた。
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