✮言葉が届く夜
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月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話
※日曜・祝日はお休みです。
◆黒き惑星・港湾跡地
そこでは、なおも激しい打撃音が響いていた。
――ドッ!!
ルビィの蹴りを、テストが腕で受け流し、そのまま懐へ入り込み、鋭い拳を放つ。
だが。
ルビィは身体を沈め、紙一重で回避。
逆に低姿勢からの足払いを繰り出した。
それに気づき、テストが後方へ跳ぶ。
互いに距離を取る。
一方。
結依とアイダは、さらに激しかった。
「うわっ!?」
結依が思わず声に出た。
アイダの回し蹴りがコンテナを叩き割る。
結依はそれを飛び越えながら反撃。
「速すぎっ!威力もあるし!」
拳。
膝。
蹴り。
まるで踊るような高速戦闘。
その様子を見ながら、ダイヤが口元を緩めた。
「もし結依、キレたら結依が勝つけど」
一拍。
「このままだと互角になりそうだね」
サイモンが苦笑する。
「あー、分かる」
腕を組みながら続けた。
「結依ちゃんのキレたモード、俺も経験あるけどさ」
一拍。
「あれはヤバい。強さ三倍くらいになる」
結依が遠くから叫ぶ。
「聞こえてるんだけど!?」
だが、その直後。
アイダの蹴りで再び吹き飛ばされた。
「うわぁっ!?」
結依がコンテナへ激突。
サイモンが笑う。
「ほらな」
レオも静かに口を開いた。
「三倍になったら反則だよな」
一拍。
「サイモン、お前は常に反則だが」
「おい」
サイモンが即座にツッコむ。
だがレオは視線をルビィたちへ戻した。
「しかし」
一拍。
「ルビィの相手は、かなり戦い慣れている」
テストとルビィ。
二人の戦いは、徐々に変化していた。
最初は押されていたルビィが、少しずつ速度で上回り始めている。
だが。
テストは対応していた。
動きを読む。
先読みする。
経験で埋めている。
レオが静かに分析する。
「スピードでは徐々にルビィが勝ってきている」
一拍。
「だが、経験による予測が早い」
ダイヤも頷く。
「完全に実戦経験では、あの男のほうが上だね」
ルビィの拳を、テストが最小動作で受け流す。
そこへ反撃。
ルビィが後退。
ダイヤが目を細めた。
「ルビィのスピードに慣れてきちゃうと、不利になるかも」
一拍。
「慣れられる前に、一気に行かないと」
そのとき。
レオが後ろを見る。
「七八。言語解析は?」
アストラの瞳が淡く光った。
『解析率、二四パーセントです』
一拍。
『戦闘中のため、会話情報が不足しています』
結依がアイダの蹴りを避けながら叫ぶ。
「そりゃそうでしょ!」
アストラは続ける。
『現在、ルビィさんの怒りモードが、戦闘により冷静化しつつあります』
サイモンが吹き出しかける。
「怒りモードって言うなよ」
『客観的事実です』
アストラは淡々と返した。
そして。
『推測』
一拍。
『相手は、戦う必要のない相手である可能性が高いです』
静かな声。
『戦闘停止を推奨します』
レオが低く言う。
「ダイヤ、止めるぞ!」
ダイヤはニヤッと笑い頷く。
ダイヤとレオが、同時に動いた。
瞬間。
レオがルビィとテストの間へ滑り込む。
――バシィッ!!
両者の拳を同時に受け止めた。
重い衝撃。
その横では。
「はい、そこまで!」
ダイヤがアイダと結依の間へ飛び込み、二人の攻撃を止める。
結依が不満そうに声を上げる。
「えぇー!?」
アイダも少し不服そうに距離を取った。
静寂。
港に、再び波音だけが戻る。
ルビィとテストは、互いを睨み合ったまま動かない。
言葉は、まだ通じない。
だが。
少なくとも。
互いが“ただの敵”ではないことだけは、少しずつ理解し始めていた。
先ほどまで激しくぶつかり合っていた四人も、今は互いに距離を取っている。
冷たい海風。砕けたコンテナ。 青白く光る海面。
その中央で、アストラがゆっくりと前へ出た。
『言語解析率――二四パーセント』
『簡易会話を試行します』
ダイヤがアイダを警戒しつつ言う。
「お、やっと通訳タイム?」
アストラは、テストとアイダへ向き直った。そして。
『……ラク、トルカニス』
(……敵意、ありません)
たどたどしい発音。ノイズ混じり。それでも。
テストとアイダの表情が変わった。
「……!?」
アイダが思わずテストを見る。
テストも驚いたように目を細めた。
アストラはたどたどしく続ける。
『ワラス、タガリスタ』
「レミヴァルニ」
(私たち、外部から来た)
(敵では、ない)
数秒の沈黙。
そしてテストが慎重に口を開いた。
「……ルクア、ミレヴァ?」
(……本当に敵じゃないのか?)
アストラの瞳が高速点滅する。
『完全翻訳、まだ不可能』
『ですが――推測可能です』
結依が小声で言う。
「なんか会話になってる……!」
サイモンも感心する。
「すげぇな、アストラ」
そこから。三分ほど。
アストラとテスト、アイダの間で短い会話が続いた。
単語。 ジェスチャー。 地面への図形。
お互い、警戒を解ききってはいない。それでも。
少しずつ。 確実に。
“意思疎通”が始まっていた。
ルビィは、その様子をじっと見つめている。先ほどまでの怒りは、もうかなり消えていた。
やがて。
アストラの瞳が、強く発光する。
『言語解析率――八〇パーセント到達』
全員がアストラを見る。
『皆さんの翻訳デバイスへ接続開始します』
次の瞬間。
ルミナス号メンバーの耳元で、ノイズが走った。
『――接続完了』
そして。
テストがゆっくり口を開く。
「……聞こえるか?」
今度は。全員に、その言葉が理解できた。
結依が目を丸くする。
「うわ、本当に通じた!?」
次の瞬間。
結依の言葉が、翻訳デバイスを通して結依の声に似た機械音声へ変換され、テストたちへ発信される。
アイダも半信半疑の表情で呟く。
「こんな技術……見たことない」
テストは、まだ警戒を残しながらも言った。
「お前たちは……何者だ?」
黒き惑星の港湾跡地。
言葉なき邂逅は。ようやく、“会話”へ変わろうとしていた。
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