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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章壱】宝石(星)の系譜/黒き兵士と夜の獣

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173/221

✮海魔迎撃

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

◆黒き惑星・港湾跡地

 轟音と共に、巨大触手が港を薙ぎ払う。崩れたコンテナが宙を舞い、海水が豪雨のように降り注いだ。


 黒兵の一体は、なおも粘液に拘束されたまま地面へ縫い付けられている。

 もう一体が援護射撃を続けるが――

 その瞬間。

 巨大触手が横薙ぎに振るわれた。


 ――ドォォン!!

 黒兵の身体が、まるで人形のように吹き飛ぶ。


 結依が息を呑む。

「うそ……!」


 黒い身体は回転しながら宙を舞い、巨大コンテナへ激突した。

 

 ――バゴッン

 轟音。


 鋼鉄製コンテナが、衝突だけで大きく潰れる。


 その破壊力に。

 ルビィたちの足が、一瞬止まった。


 静寂。


 海面から、巨大触手がゆっくりと伸びる。

 そして。

 粘液で動けなくなっねる黒兵の身体を、触手で掴んだ。


「……っ!」

 ルビィの顔が強張る。


 怪物の頭部が、さらに海面上へ現れる。白緑色のぬめる外殻。  片側だけ赤く発光する巨大な眼。

 その口元が――モゾリ、と開いた。

 粘ついた牙の並ぶ巨大な口腔。

 次の瞬間。

 黒兵の身体が、そのまま口の中へ呑み込まれていく。


 全員が、言葉を失った。


 ダイヤが、険しい顔で呟く。

「……あの二人」

 一拍。


「前回、私たちとほぼ互角だったんだけどね」

 簡単に。

 あまりにも簡単に、喰われた。


 レオが低く言う。

「気を引き締めろ」

 その目は、すでに怪物を見据えていた。

「行くぞ!」


◆港湾跡地・後方

 サイモンとアストラは、野犬群へ銃口を向けていた。


 だが。

 野犬型サイボーグたちは、距離を取ったまま近づいてこない。

 赤い眼だけが、戦場を見ている。


 サイモンが叫ぶ。

「おい!」

「こっち来る様子ねぇぞ!」 「そっち加勢行くか!?」


 レオが即座に返す。

「来なくていい!」

 一拍。


「野犬群の動きが読めない!」


 ダイヤも叫ぶ。

「数でどうこうなる怪物じゃない!」

「戦術で崩すしかない!」


 その瞬間。

 結依が叫ぶ。

「あの化け物には目があった」

 一拍。


「私が目を撃ち抜く!」

 全員が結依を見る。

 結依はライフルを構えたまま続けた。

「だから、さっきみたいに、もっと顔を出させて!」


 ダイヤが即座に頷く。

「了解」

 そして、ルビィへ視線を向けた。

「ルビィ!」

「私とスピードで撹乱する!」

「触手に捕まらないようにね!」


 ルビィは強く頷く。

「はい!」


 ダイヤが続ける。

「レオ!」

「正面で気を引いて!」

「できるだけ大袈裟に!」


 レオは短く返す。

「了解」


 次の瞬間。

 三人が同時に動いた。


◆港湾跡地・戦闘区域

 ダイヤとルビィが左右へ高速移動する。


 触手が、即座に反応。

 ――ブォン!!ブォン!!

 巨大触手が地面を叩き潰す。

 コンクリートが爆散した。


 だが。

 ルビィはギリギリで回避する。

 転がるように避け、瓦礫の陰へ飛び込む。


 一方。

 ダイヤは違った。

「おっと」

 軽い動き。

 巨大触手を、まるで遊ぶように躱していく。

 跳ぶ。

 回る。

 壁を蹴る。

 黒い残像のような速度。


 結依が思わず呟く。

「……速っ」


 触手が完全に、二人へ意識を向ける。

 その瞬間。

 正面が、空いた。


「今だ」

 レオが地面を蹴る。

 一直線。

 怪物へ向かって駆ける。

 怪物の巨大な顔が、ゆっくりと持ち上がる。


 赤い眼が、レオを捉えた。

 その瞬間。

 レオは急加速。


 そして。

 怪物の直前で――滑り込んだ。

 姿勢を極限まで低くする。


 巨大触手が、その頭上を通過した。

 

 ――パンッ!!

 銃声。


 結依だった。

 ライフルの照準は、一切ブレていない。

 放たれた弾丸が。

 怪物の片目を、正確に撃ち抜いた。


 次の瞬間。

 怪物が、絶叫する。

 ――ギィィィィィィィッ!!

 港全体が震えた。

 巨大触手が暴れ狂う。

 海水が吹き上がる。


 そして。

 怪物は、そのまま海中へ沈んでいく。白緑色の巨体が、青白く光る海の奥へ消えた。


 静寂。


 誰も、すぐには動かなかった。

 だが――

『高速接近反応!!』

 アストラの警告。


 次の瞬間。

 瓦礫の陰から。

 野犬型サイボーグ群が、一斉に飛び出した。


 赤い眼光。

 金属の牙。

 その群れが、サイモンとアストラへ襲いかかる――。


 一直線に狙われたのは――アストラだった。

 だが。

 その前へ、サイモンが踏み出す。

「アストラの前は通さねぇよ」

 次の瞬間。

 飛び込んできた野犬型サイボーグの頭部を、サイモンは素手で掴んだ。

「っらぁ!!」

 そのまま。

 片腕だけで、巨大な金属の獣を振り回す。

 ――ドガァッ!!

 別の一体へ叩きつけた。

 二体まとめて瓦礫へ激突する。


 さらに。

 別方向から飛びかかった一体へ、サイモンが回し蹴りを放つ。

 重い衝撃音。

 野犬型サイボーグが横回転しながら吹き飛び、コンテナへ突っ込んだ。


 結依が引いた顔をする。

「いや、何その戦い方!?」


 だが、その間にも群れは止まらない。

 左右から同時に飛びかかる。


 その瞬間。

 ――パンッ!!

 銃声。

 一体の頭部が正確に撃ち抜かれた。


 さらに。

 ――パンッ!!

 ――パンッ!!

 ほぼ間を置かない連射。


 飛びかかった二体の赤い眼が砕け、そのまま地面へ転がる。


 結依だった。

 ライフルを構えたまま、冷静に次弾を装填している。

「サイモンさん!」

「左!」


「おう!」

 サイモンが振り向きざまに拳を叩き込む。


 野犬型サイボーグの頭部が、鈍い音と共に横へ曲がった。

 さらにサイモンは、その身体を掴み上げる。

「邪魔だ!!」

 まるで鉄球のように振り回し、突っ込んできた別個体へ投げつけた。


 金属同士の激突音。

 火花。

 瓦礫が吹き飛ぶ。


 そこへ、ダイヤたち三人が駆けつける。

 だが。

 三人の動きが、一瞬止まった。


「……あれ?」

 ダイヤが目を瞬かせる。


 さっきまで二〇以上いたはずの群れ。

 だが、既に地面には大量の残骸が転がっていた。


 立っているのは、五匹ほど。

 ルビィが呆然と呟く。

「減ってる……」


 レオが静かに周囲を確認する。

「サイモンと結依だけで削ったのか」


 結依がライフルを構えたまま言う。

「私は六匹くらい、あとはサイモンさんが!」


 一方。

 残った野犬型サイボーグたちは、明らかに動きが変わっていた。

 低く唸りながらも、前へ来ない。

 赤い眼が、サイモンを見る。


 そして。

 じりじりと後退を始めた。


 サイモンが眉をひそめる。

「……引くのか?」


 野犬たちは一定距離を取ると、そのまま瓦礫群の奥へ消えていく。


 逃げた。

 港に、静寂が戻る。


◆港湾倉庫跡

 テストとアイダは、その戦闘を見ていた。

 アイダが呆れたように口を開く。

「……なに、あれ」

 一拍。


「異星人、強すぎない?」


 テストも、珍しく少し目を細めていた。

「戦闘練度が高い」


 特に。

 海の怪物相手に即座に連携を組み。

 さらに野犬群まで短時間で制圧した。

 普通ではない。


 アイダが苦笑する。

「前回、黒兵と互角にやり合ってた時点でヤバいと思ったけどさ……」


 テストは静かに、ルミナス号の方を見据える。

「……接触する価値はある」

 その視線は、鋭かった。


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