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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章壱】宝石(星)の系譜/黒き兵士と夜の獣

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171/221

✮黒兵

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

◆港湾跡地

 ――ウォォォォォン……

 不気味なサイレンの余韻が、まだ街全体へ響いていた。

 完全な夜へ沈んだ港湾跡地。  海だけが、青白く揺らめいている。

 ――ガコン。

 重い音と共に、ルミナス号のハッチがゆっくりと開いていく。  冷たい夜風が船内へ流れ込んだ。

 外は、完全な闇だった。

 港跡地。崩れたコンテナ群。  沈みかけた貨物船。そして、青白く光る海。


 その静寂の中。

 コツ、コツ、と。硬い足音が近づいてくる。

 全員の視線が、ハッチの外へ向く。


 現れた。

 黒い外套のような装甲。長い尾。闇に溶け込むような黒い身体。

 黒い人造人間兵士――二体。


 結依が息を呑む。

「……うわ、ほんとに来た……近くで見ると怖っ……」


 ルビィの表情が強張る。

「近いね……」


 二体は、まっすぐルミナス号へ歩いてくる。武器は持っている。  だが、構えてはいない。


 サイモンが低く呟く。

「前と同じだな……」

 一歩前へ出る。

「警戒はしてるが、撃つ気配はねぇ」


 ダイヤは目を細めた。

「でも、発信機のやつじゃない」


 レオが視線を向ける。

「わかるのか?」


「うん」

ダイヤは頷く。

「体格が違う」


 黒い外殻。細長い尾。人間に似た輪郭を持ちながら、人間とは決定的に違う存在。


ハッチのすぐ前まで来ると停止した。

 距離、数メートル。

 近い。近すぎる。


 ルビィが小さく息を飲む。

「降りられないんですけど……」


 黒い兵士たちは、何もしてこない。ただ、こちらを見ている。

 そのとき。

「――……ザ……ル……」 「……ヴァル、エク……ラ……」

 低い。ノイズ混じりのような声。

 聞いたことのない言語だった。


 アストラの瞳が淡く光る。

『音声データ収集中』

 だが、すぐに続ける。

『解析不能』

『サンプル数が不足しています』


 結依が小さく顔をしかめる。 「全然わかんないんだけど……」


 ルビィは緊張したまま、一歩だけ前へ出る。

「あなたたちは――」

 その瞬間。

「待て」

サイモンがルビィの腕を軽く掴んだ。視線は黒いやつから外さない。

「まだ近づくな」

 低い声。

「何するかわからねぇ」


 ルビィは小さく唇を噛む。

「……でも」


 結依がハッチ近くから身を乗り出した。

「ねぇ!」

かなり軽い感じで声をかける。

「私たちと話せる!?」

「敵じゃないなら武器下げてよ!」


 返事はない。

 二体は微動だにしなかった。

 

 サイモンが眉を寄せる。

「何言ってるかは分からねぇのかな」


 そのときだった。

『追加生命反応』

 アストラの声。

 ホログラムが展開される。

 港の奥。崩れた倉庫群のさらに先。

 大量の赤点。


 ルビィの顔色が変わる。

「……何これ」


『四足型サイボーグ群』

 一拍。


『推定二〇以上』


 結依が引いた顔をする。 「多っ!?」


 サイモンが舌打ちした。

「野犬型か……!」


 モニターに映る。黒い金属骨格。赤く光る眼。犬のようなシルエットの群れ。

 だが。  まだ距離はあった。


 ダイヤが小さく呟く。

「……こっち見てるね」


 野犬型サイボーグたちは、瓦礫の隙間からこちらを観察していた。


 その瞬間。

 目の前の黒い兵士二体が、ピクリと反応した。

 同時に振り向く。

 尾が低く揺れる。


 サイモンが気づく。

「……あいつら、犬ども見てる」


 レオが静かに言う。

「敵対関係か」


 すると。遠くの野犬型サイボーグたちが、少しずつ前進を始めた。

 ゆっくり。包囲するように。

 金属の爪が地面を擦る音が、静かな夜に響く。


 結依が顔をしかめる。

「うわ……来てる来てる来てる」

 黒い兵士の一体が、腰の武器へ手を伸ばす。

 空気が、一気に張り詰めた。


 そのとき。

ルビィが意を決したように、一歩前へ出た。

「ま、待ってください!」


サイモンが即座に止める。

「おい、ルビィちゃん!」


 だがルビィは、黒い兵士へ向けて言葉を続けた。

「私たちは敵じゃありません!」

 当然、返事はない。


遠くで。野犬型サイボーグの一体が、低く唸った。

 ギギギギ――……

 群れがさらに近づいてくる。


 結依は銃へ手をかけようとする。

「……これ、撃ったらダメなやつ?」

「犬も来てるし!」


「まだ」

 ダイヤが即座に止めた。

 その視線は、黒い兵士たちへ向いていた。

「状況が見えてない」

 一拍。


「この二体、まだ私たちを攻撃していない」


 レオがアストラを見る

「七八!」

「先ほどの高速移動反応は、こいつらか?」


『否定します』

アストラが即答する。


『高速移動反応は現在、約一五〇メートル先の地点で停止』

 ホログラムに、別の二つの反応が映る。

『こちらを観察していると推測します』


 サイモンが目を細める。

「……別にいるのか」


 ――そのとき。

 港湾地区のさらに奥。崩れた倉庫群の影。

◆港湾倉庫跡

 暗闇の中。二つのライトが静かに消える。バイクだった。

 崩れた倉庫の陰から、二人の人影が港を見ていた。


 アイダが小さく息を吐く。

「……なんか、とんでもない状況になってない?」


 隣のテストは、スコープ越しに静かに様子を見ていた。

「黒兵が先に接触したか」


 アイダが顔をしかめる。

「よりによって夜になるとか最悪なんだけど」


 そのときだった。

 海の方を見ていたテストの表情が変わる。

「……おい」

 低い声。


 アイダも気づく。

 青白く光る海面。その下。

 巨大な“何か”が動いた。

 一瞬。海中に、ビルのような巨大影が見えた。


 アイダの顔から血の気が引く。 「はぁ!?」

 一拍。


「ちょ、待って……!」


 テストが舌打ちする。

「最悪だ」


 海面が、大きく盛り上がる。

「よりによって、“アイツ”が出てきてる……!」


◆港湾跡地

 重い沈黙。

 風だけが吹き抜ける。

 黒いやつ二体は、まだ動かない。

 そして。

 そのうちの一体が、突然。

 海の方を見た。


 反応したのは、アストラだった。

『高出力反応を確認』


 瞬間。

 海面が、大きく揺れる。

 ――ゴボォッ……

 青白く発光する海。その下。

 “何か巨大な影”が動いた。


 結依の顔が引きつる。

「……ねぇ」

 ゆっくりと。巨大すぎる影が、海中を横切っていく。


 ルビィが息を呑む。

「……何、あれ」


 その瞬間。

 二体の黒いやつが、一斉に武器を構えた。


 海へ向けて。

 そして。

 闇の海から、巨大な“何か”が浮上し始めた――。



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