☆月影の救難信号(前編)
◆ルミナール号船内
第三惑星へ接近した、その瞬間だった。
アストラの静かなアラート音が、船内に響く。
『第三惑星の自然衛星より、微弱な救難信号を確認しました』
ルビィが視線を上げる。
モニターには、巨大な惑星の周囲を回る自然衛星――地球でいう“月”に似た天体が映し出されていた。
だが、その表面は異様だった。
無数のクレーター。荒れた地形。そして――
『補足情報。この自然衛星には、大気および重力が確認されています』
一瞬、沈黙が落ちる。
結依が小さく呟いた。
「……月、だよね?」
『はい。自然衛星に大気と重力が存在する例は確認されていません。――異常です』
ルビィは、短く息を吐く。
「……行く」
迷いはなかった。
「救難信号は無視できない。先に確認する」
結依は即座に頷く。
「当然でしょ」
ルミナール号は進路を変え、自然衛星へと向かった。
やがて視界に現れたのは、半壊した宇宙船だった。
クレーターの影に隠れるように横たわり、船体の半分がえぐれている。
だが――
『生命反応、三。船内に残存』
同時に、ハッチ付近から人影が現れた。
宇宙服姿の女性。
必死に何かを叫んでいる。
『翻訳開始。「近づくな。ここから離れて」と言っています』
結依が眉をひそめる。
「救難信号出しといて、それ?」
だが、ルビィは反応しなかった。
その視線は、船体に刻まれた識別番号に釘付けになっていた。
欠損している。
だが――最初の七桁。
「……同じだ」
思わず、声が漏れる。
ルミナス号。
五〇年前、祖母ダイヤが乗っていた船と同型――同じ識別体系。
胸の奥が、強く鳴る。
ルビィは目を閉じ、思考を整える。
「アストラ。罠の可能性は?」
『搭乗員は全員、地球人です』
その一言で、決断は下された。
「単独接近します。私が行く」
宇宙スーツに、背部推進ユニット――オービタル・ムーバーを装着。
ハッチが開く。
無音の宇宙へ、一歩踏み出す。
微かな噴射音とともに、ルビィの身体が月面へと降りていく。
(……間違いない)
近づくほど、この船は“あの時代
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